2016年10月01日

税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

(税理士会員相談室)
<<消費税>>
● 販売用の住宅を一時的に賃貸した場合の個別対応方式による仕入税額控除
質 問
不動産業を営むA社は、販売目的で分譲マンションを取得したが、資金繰りその他の事情を考慮し、一時的に居住用として賃貸することとなった。この場合において、建物の取得費は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して仕入税額控除を計算することができるか。
回 答
課税仕入れを行った日(建物取得時)の目的が「販売用」であり、建物取得時点で非課税となる家賃収入が発生する予定がなかったことから、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して問題ないものと思われる。
検 討
質問の事例では、建物取得時の用途が販売用であるから、これを一時的に賃貸したとしても、その賃貸により発生する家賃収入(非課税)は、課税仕入の用途区分に影響しないものと考えるべきである。
なお、一時的な目的変更とはいえ、販売目的から賃貸用に変化しているため、後日説明を求められることも考えられる。そのため、法人内部の稟議書等で、取得後の一時的な賃貸その他の経緯を整理しておくと有効である。

● 賃貸中の中古マンションを取得した場合の個別対応方式による仕入税額控除
質 問
不動産業を営むB社は、住宅として賃貸中の中古マンションを、買手を先
に確保した上、転売目的で賃借人付きで丸ごと取得したが、買手の資金の都
合により、実際の売却は決算をまたいで10ヶ月後となった。この場合にお
いて、建物の取得費は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して仕
入税額控除を計算することができるか。
なお、当該土地建物の保有期間中の家賃収入は、当社の収益として計上し
ているが、建物部分についての減価償却費は計上せず、決算書には取得した
土地建物を「商品」として表示する予定である。
回 答
本件中古マンションの取得の目的は転売にあることから、最終的に課税売上げが発生することは明らかである。ただし、建物の取得時点で入居者がいることから、最終目的が中古マンションの転売ということであっても、転売までの間、非課税となる家賃収入が発生していることも事実である。したがって、本件建物の取得は、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入に区分せざるを得ないものと思われる。
検 討
賃借人と買手を含めた三者間の協議により、1か月未満の短期家賃については買手に帰属するなどの取り決めをした場合には、消費税における課税仕入れの用途区分は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分することが認められ、法人税においても寄付金認定などはなく、家賃収入は買手に帰属させることができるものと思われる。
上述のように非課税収入の収受権を転売先に帰属させることで、「課税資産
の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」から「課税資産の譲
渡等にのみ要するもの」に用途区分を転換させるなどの工夫も必要になるも
のと思われる。

● 用途を変更した場合の修正申告の是非
質 問
不動産業を営むC社は、前事業年度末に貸ビルを建築するための敷地を購
入し、仲介手数料を支払っている。当該前事業年度に係る消費税の確定申告
では、個別対応方式を採用し、仲介手数料は、ビルの家賃収入(課税)に対応
するものとして、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分している。
当初計画をしていた建物の建築がかなわず、不採算となることが判明した。そのため、やむなく当該土地を更地のまま転売することとなった。
この場合において、前期の消費税の確定申告で、全額を仕入税額控除の対象とした仲介手数料について、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」に用途区分を変更した上で、修正申告をする必要があるか。
回 答
質問の事例では、仲介手数料支払時の用途が貸ビルを建築するための敷地の取得に係るものであるから、その後に土地の用途が変更になったとしても、当初の用途区分を変更し、修正申告をする必要はない。
検 討
本件の場合、賃貸ビル建設の計画から販売へと方向転換に至った理由から、用途区分の変更が後発的な事象に基因するため、修正申告の必要性は存しない。そこで、後日その状況の客観性を主張する場面を想定し、販売への用途区分の変更経緯を整理しておくと有効である。
なお、土地を購入した場合に支払う仲介手数料や土地造成費は、その土地の用途に応じて次のように区分することになる。

【仲介手数料等の課税仕入れの用途区分の判定】
利用方法 課税仕入れの用途区分
課税資産の その他の資産 共通して
譲渡等にのみ の譲渡等にのみ 要するもの
要するもの 要するもの
@販売用の 土地の売上高に直接
土地の場合 対応するもの
A購入した 建物の売上げに 土地の売上げと
土地の上に 直結する建物の 建物の売上げに
建物を建て、建築費 対するもの
分譲住宅と
して販売
する場合
B購入した ・住宅家賃収入に
土地の上に 直接対応するもの
建物を建て、 ・建物の建築費
賃貸住宅と
して貸付け
る場合
C購入した ・住宅以外の
土地の上に 家賃収入に直接
建物を建て、対応するもの
店舗として ・建物の建築費
貸付ける場合
D用途未確定 売上げと明確な
の場合 対応関係のない
もの

● 建物の建替えに伴う立退料の取扱い
質 問
当社は画材関連品の小売業を営んでいるが、従来(20年以上前)から賃借し
ていた店舗用建物の建替えに伴い、立退きの要求を受けた。
当社としては、立地条件や同業者の減少等により、安定した売り上げが得
られていたこともあり、その補てん分としての立退料を要求したところ、600
万円の支払いを受けることになった。
この場合、受け取った立退料について、消費税の課税対象となるのか。
回 答
原則として、課税対象外取引となるため、消費税の課税対象とはなら
ない。
検 討
現実問題として、立退料が支払われる場合に、それらが明確に区分されて
支払われることはほとんどなく、その判断が困難であることから、次の通達
が設けられている。

(建物賃貸借契約の解除に伴う立退料の取扱い)
消基通5-2-7
建物等の賃借人が賃貸借の目的とされている建物等の契約の解除に伴い賃
借人から収受する立退料(不動産業者等の仲介を行うものを経由して収受する
場合を含む。)は、賃貸借の権利が消滅することに対する補償、営業上の損失
又は移転等に要する実費補償などに伴い収受されるものであり、資産の譲渡
等の対価に該当しない。
(注) 建物等の賃借人たる地位を賃借人以外の第三者に譲渡し、その対価を
立退き料等として収受したとしても、これらは建物等の賃借権の譲渡に
係る対価として受領されるものであり、資産の譲渡等の対価に該当する
ことになるのであるから留意する。
ここで留意したいのは、通達の注書きの意味である。
具体例としては、銀座で飲食店(クラブ)を営む法人が、オーナーの了
解のもとに、「建物賃借権」として第三者に譲渡するケースは、資産の
譲渡であることから、課税対象取引として取り扱われることになる。

【総 評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやすい論点を再確認していただきたい意図からです。
共通して「用途区分を変更」した場合における質問・回答が目に付きました。消費税申告における個別対応方式を採用した場合の3種類の課税仕入れの用途区分も表にしてみました。これは課税売上割合が95%未満の場合、採用されるもので、他に一括比例配分方式があります。
また、余談ですが、平成27年4月1日以後に開始する課税期間から消費税の簡易課税制度におけるみなし仕入率がそれまでの90〜50%の刻みだったのが、90〜40%の刻みになりました。特に、第四種事業の金融業及び保険業が60%から50%に、第五種事業の不動産業が50%から40%に変更になりましたので、御留意下さいませ。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
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税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

(税理士会員相談室)
<<資産税>>
● 交換の特例の「交換のために取得したものでないこと」の要件
質 問
Aは、長期保有のP宅地をBが2年前に取得したQ宅地と交換する。両宅地は等価であり、Aは、交換後のQ宅地を宅地の用に供する。Aは、固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例(以下「交換の特例」という。)の適用を受ける考えである。
交換の特例には、対象資産の要件として、相手方が「交換のために取得したと認められるものを除く」との要件があるが、Aは、Bが2年前にQ宅地を取得したことは、取引の際の資料等により確認しているものの、Bがそれを交換のために取得したかどうかについては判定することができない。
Aの交換は、Q宅地をBが交換のために取得したと認定されて、Aの交換の特例の適用が否認されることにはならないだろうか。
回 答
2年前にBがQ宅地を取得した目的がその後に行う交換のためであったことが客観的に明らかでない場合には、「交換のために取得したと認められるものを除く」という特例適用除外事由をクリアーしたものとして、交換の特例を適用することができる。
検 討
交換の特例の適用要件には、@各当事者が1年以上所有していた固定資産であること、A交換取得資産につき相手方が交換のために取得したと認められるものでないことが含まれている。
上記要件のうち、@の要件は譲渡資産及び取得資産の両方に適用される。取得資産についての「1年以上所有」の要件は、昭和40年度の税制改正により追加されたものであり、その改正前は譲渡資産のみの要件であった。他方、取得資産に係るAの要件は、@の改正前から存在している。
昭和40年度改正当時の大蔵省主税局の担当官の説明によれば、相手方所有であった取得資産についても「1年以上の所有要件」を追加し、これを外形基準として上記Aの要件の判定を容易にしたのがその改正の趣旨であった
ことが認められる(昭和40年版「改正税法のすべて」大蔵財務協会35頁)。

● 譲渡資産が自己の事業用の試算でない場合の買換え等の特例の適用
質 問
甲は、10年ほど前に、営んでいた大都市郊外での農業経営は、農業経営移
譲年金を受給するために甲と同居し生計を一にしている長男乙に移譲した。
甲は、この度、公共事業のために自己が所有し乙が営む農業の用に供して
きた農地1,800uを買い取られ、対価補償金7000万円を受け取った。補償金
収入で代替資産としての土地の買換えを行う意向はなく、自己が所有する土
地上に7000万円の建築費用を投じて貸家建物数棟を新築したいと思ってい
る。
甲が行う予定の貸家の新築について、租税特別措置法33条1項に規定する
収用等により資産を買い取られた場合の代替資産の取得の特例(以下「代替資
産取得の特例」という。)の適用を受けることができるか。
回 答
甲は、新築して貸家の用に供する建物を代替資産として、代替資産取得の特例を適用することができる。
検 討
代替資産取得の特例の代替資産となるのは、
@個別法としての譲渡資産の種類区分ごとの「同種の資産」(措令22C)、
A一組法としての譲渡資産の用途区分に応ずる「一組の資産」(措令22D)、
B事業継続法としての譲渡資産がその譲渡人の事業用であった場合に、その
者が事業用に供するために取得する上記@Aに該当する資産以外の資産で
ある(措令22E)。
甲が新築する貸家建物は、上記Bの事業継続法の「事業用資産」に該当す
る。
なお、この場合における甲の譲渡資産は、甲の事業用に供されていたもので
はなく、長男乙の事業用に供されていたものであって、甲の取得資産は、甲
自身の事業用に供するものである。
しかし、事業用資産の所有者と事業経営者が異なることになった場合にお
いても、双方が生計を一にしているときは、その譲渡資産及び買換資産のい
ずれもがその譲渡・買換えをした者の事業用資産であるとみて、この特例を
適用する取扱いが定められている(措通33-43)。
この取扱いは、特定の事業用資産の買換えの特例(措法37@)にも、準用さ
れる(措通37-22)。

● 低額譲受益課税を受けないで配偶者控除の適用をする贈与税対策
質 問
丁は、このほど丙との婚姻期間が20年以上となったので、丙から通常の
売買価額が4600万円と認められる自宅の土地家屋(以下「自宅不動産」とい
う。)
全部の贈与をしてもらい、贈与税の配偶者控除2000万円(以下「本件控除」と
いう。)の適用を受けたいと考えた。
丁は、税務署の担当部門に出向いて相談したところ、自宅不動産の相続税
評価額が3,500万円であり、丁が自宅不動産の贈与を受けて本件控除の適用
をしても贈与税が450万円余もかかることが判明したことから、その計画は
断念した。
その後に丁の父が死亡し、丁が遺産中の預金を相続して、相続税納付後の
預金額3000万円が残存している。丁は、その残存預金額を原資に丙から自
宅不動産を買い受けることで、当初本件控除の適用対象財産として受贈予定
であった自宅不動産を改めて取得するつもりである。
この場合には、丁に対する贈与税の課税関係は、どのようになるのか。
回 答
丁が丙から自宅不動産を買い受ける場合は、丁に対して、自宅不動産の相続税評価額とその買受価額との差額でなく、通常の取引価額4600万円と買受価額3000万円との差額に相当する低額譲受益1600万円を対象に贈与税が課税される(平成元年3月29日付け個別通達)。
しかし、丁がこの受贈益1600万円につき、丙から自宅不動産に係る居住用不動産に係る居住用不動産の一部の贈与を受けたとして贈与税の申告をすればこれが認められる。
検 討
丁の本件控除の適用関係について検討してみると、相続税法21条の6第1
項に規定する「居住用不動産」でも「居住用不動産を取得するための金銭」でも
なく、自宅不動産を低額で譲り受けたことによる「経済的利益の享受」である
から、これが本件控除の対象財産とはならないと考えられる。
しかしながら、この売買では、居住用不動産に該当する自宅不動産のうち
一部が売買され残余が贈与されたと見ることができ、本件控除では居住用不
動産の一部の贈与も適用することが可能であるから、この自宅不動産に係る
低額譲受益額1600万円につき居住用不動産の一部贈与があったとして贈与
税の申告書を提出すれば、本件控除を適用することができることになる。

● 短期前払費用通達の運用上の留意点
質 問
同族会社であるA社は、代表取締役B氏の所有する不動産を借用して、事
業を営んでいる(3月決算法人)。A社は資金的な余裕があり、かつ、B氏から
の要望もあったため、家賃等の支払方法を1年分のまとめ支払いに変更する
ことを考えている。
法人税の短期前払費用の取扱いは、実務上浸透しているようであるが、運
用上注意しなければならない点をご教示いただきたい。
回 答
短期前払費用の取扱いは、@契約に基づくものであること、A継続的に役務の提供を受けるものであること、B1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払ったこと、C継続して支払った日の属する事業年度の損金の額に算入していること、D収益と対応させるべき費用でないこと、という要件が付されている(法基通2-2-14)。
そのため、通達の運用上は、これらの要件を逸脱しないよう配慮する必要がある。
検 討
(1)通達運用上の留意点
A 「継続的に役務の提供を受けるもの」については、等質等量のサービス
が契約期間中に継続的に提供される必要がある。本件は、不動産の提供に基づく家賃等であるため、その解釈の範疇にある。なお、税理士の顧問契約等については、役務の提供度合いが等質等量とは言えないケースが多いため、通達の適用にあたって否定的な考えが支配的である。
B 「1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払っていること」は、当
年4月から翌年3月分の家賃等であるならば、当年3月末に支払ったもの
であれば許容範囲であると思うが、当年2月に支払ったものについては、
短期前払費用の取扱いは適用されない。つまり、役務の受入れの開始前に
対価の支払が行われ、その支払時から1年を超える期間を支払対象期間と
するようなものは、通達の適用から除外されていることを読み取らなけれ
ばならない。
なお、家賃等が未払の場合には、本通達の対象とならない。
C 本件のような同族関係者間取引であれば、一旦変更された契約内容につ
いては、むやみに変えるべきではない。
(2)想定しておかなければいけない留意事項
短期前払費用の取扱いの適用により、支払者側は損金の一時計上を行う
ことになるが、反射的に受取側は収益として認識されるため、変更年度の
課税所得の増幅効果が生じる。
そこで、月額から年額への変更は、単に12倍した金額の家賃等の取り
決めではなく金利調整分のディスカウントを配慮する、又は事実上の値
上げの意味合いを整備する等の必要性について、併せて検討するべきであ
る。
最後に、所有権移転外ファイナンスリース等の要件を満たすような賃貸
借契約であった場合(定期借家契約等)には、短期前払費用の取扱いが適用
できなくなる。

【総 評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやすい論点を再確認していただきたい意図からです。
特に婚姻関係20年以上の夫婦間における「低額譲受益課税を受けないで配偶者控除の適用をする贈与税」に関しては、夫婦間で行う売買価額が自宅不動産の通常の売買価額4600万円なのか相続税評価額3500万円なのかを注意して行い、居住用不動産の一部贈与があったとして贈与税の申告書を提出しなければなりません。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
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税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

(税理士会員相談室)
<<法人税>>
● 完全親法人に対する不動産譲渡損益の計上繰延べ
質 問
S社は、平成26年5月に株式交換によって100%支配関係に当たるP社のグループに入った。平成27年1月1日から5月末日までの間に遊休資産である土地及びその上に存する建物(以下「不動産」という。)をP社に売却する予定である。この不動産は減損会計の対象となっており、平成26年5月期に評価損87,392千円を計上した結果、帳簿価額は45000千円となっている。
帳簿価額の45000千円で売却した場合の税務処理がどうなるか。また、資本関係のない他社から40,000千円で購入の申し出がある。仮に時価と異なる価額でP社に売却した場合のS社とP社の税務処理はどうなるか。
なお、不動産を譲り受けたP社がその後その不動産を100%グループ内の他の会社に譲渡した場合にS社の税務処理はどうなるか。
回 答
本事例のS社とP社間は完全支配関係にあるので、いわゆるグループ法人単体課税制度の適用対象となる。本事例の譲渡の対象となる土地及び建物のそれぞれの譲渡直前の帳簿価額が10,000千円以上であれば、いずれも譲渡損益調整資産に該当し、譲渡損益の繰延べの対象となる。時価と異なる価額で譲渡があった場合は、その差額が受贈益または寄附金となる。たとえ100%グループ内であっても譲受法人であるP社が他の関係会社に譲渡した
場合は、S社において繰延べた譲渡損益を計上し、戻し入れる処理が必要となる。
検 討
1 譲渡損益の繰延べと戻入計上
本事例であるが、帳簿価額の45,000千円が適正な売買価額であるとすれば、会計上の譲渡損失は生じないが、税務上は次の仕訳が想定される。
(借 方)               (貸 方)
現 金 預 金   45,000千円     土地・建物 132,392千円
固定資産譲渡損失 87,392千円
(注) 土地と建物はどちらも譲渡損が生じているものとする。
減損会計の適用による評価損の金額87,392千円は、税務上評価損の計上
が認められる事実には該当しないとして、S社では平成26年5月期の申告
調整で加算(留保)されているので、その対象となった不動産が平成26年5
月期で譲渡される結果、同期の申告調整で減算(留保)される。
一方、減算の対象となった不動産がいずれも譲渡損益調整資産に該当す
れば、グループ法人単体課税制度のうち資産の譲渡損益の繰延べの規定
(法法61の13@)の適用を受けるので、上記の仕訳で示している固定資産
譲渡損失の金額87,392千円が「譲渡損益調整勘定」として申告調整で加算
(留保)される。
もっとも、P社が譲り受けた不動産のうち適正に計上した建物の減価償
却費に見合う一定の金額はS社で減算(留保)調整して戻し入れる。また、
P社が譲り受けた不動産を他に譲渡した場合も戻入未済の残額をS社で減
算(留保)調整して戻入処理をすることになる(法法61の13A、法令122の
14C一、三)。
2 時価と異なる価額で譲渡された場合
資本関係のない他社が40,000千円の買取価額を示している事実があ
り、これが実勢価額とされれば売買価額との差5,000千円が生じ、これが
S社側では受贈益(完全支配関係のあるグループ法人間なので法人税法第
25条の2第1項の規定により全額益金不算入)となり、P社側では寄附金
(完全支配関係のあるグループ法人間なので法人税法第37条第2項の規定
により全額損金不算入)となる。
譲渡損益調整資産に該当する資産の譲渡であっても、資産の譲渡である
ことに変わりはないので、実際に収受した金銭等の額ではなく、原則どお
り時価で譲渡があったものとして税務処理をすることになる。

● 損害賠償金の損金計上時期
質 問
Y社の社員が起こした不祥事により、Bが損害を受けたとして雇用者責任を追及された。Y社は事故の過失を認め損害賠償に応ずることになった。Y社は銀行融資が2500万円しか受けられないとして当期末までに2500万円を支払った。その後、翌期に入って賠償金額4000万円の合意がなされ、追加の1500万円は3年の分割払いにすることが決まった。しかし、当期の法人税の申告期限までに「合意書」等のような正式な文書作成には至っていない。期中に支払った2500万円は当期の損金の額に算入できるか。
回 答
損害賠償金の額が確定していない場合であっても、期末までに支払われた賠償金が当事者間(Y社とBとの間)で争いがない金額と認められれば、当期の損金の額に算入される。
検 討
なお、翌期に入って当事者間の合意がなされ損害賠償金の額が4000万円と確定したようであるが、これを明らかにするために「合意書」等の文書の作成が必要となろう。
本事例の残額の1500万円は、たとえ分割払いがされたとしても、損害賠
償金の額が当事者双方で合意され確定したときに債務が確定したとして、そ
の確定した日の属する事業年度で全額を損金の額に算入することが認められ
よう。

【総 評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやすい論点を再確認していただきたい意図からです。
特に100%支配関係に当たるP社のグループに土地建物売却後、資本関係のない他社が低い買取価額を示している事実があり、これが実勢価額とされれば売買価額との差が生じた時は注意が必要です。この場合、100%支配関係に入ったS社の方で法人所得の計算上、減算(全額益金不算入)し、100%支配関係に当たるP社の方で法人所得の計算上、加算(全額損金不算入)としなければなりません。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
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