2017年05月02日

【平成29年度税制改正に関する建議書】

■はじめに■
日本税理士会連合会では、この規定に基づき、税制改正に関する建議書を毎年取りまとめている。

■税制に対する基本的な視点■
(1)公平な税負担
納税者が負担能力に応じて分かち合うという意味で公平には、水平的公平、
垂直的公平とともに世代間の公平の問題があり、それらが相互に補完し合うバ
ランスのとれた税制を構築していく必要がある。
(2)理解と納得のできる税制
租税制度は納税者が理解できるものであり、また、その目的や内容についても納得できるものである必要がある。
(3)必要最小限の事務負担
過度の負担を納税者に強いることは避けなければならない。
(4)時代に適合する税制
税制を常に時代に適合するものとすべく、その見直しを継続しなければなら
ない。
(5)透明な税務行政
公平な税負担の確保と申告納税制度を維持発展させるためには必要不可欠で
あり、納税者からさらなる信頼を得るための施策を行っていく努力が求められ
る。
本建議書では、冒頭において「今後の税制改正についての基本的な考え方」を
示し、中長期的に取り組むべき課題を明らかにした後、続いて各税目の「税制改正建議項目」を示している。
なお、東日本大震災に関する税制及び取扱いについては、これまでも本建議
書で提言してきたが、大規模災害等が起きた場合に備え、特例法ではなく恒久法として「災害税制に関する基本法」を立法化するよう提言している。

■本建議書における重要県議項目■
(1)「災害税制に関する基本法」の立法化について
税制において甚大な被害が発生した場合、いかに迅速に国家規模の災害危機
管理体制を整備するかの対応を可能とするためには、恒久法として「災害税制
に関する基本法」を立法化すべきである。
また、この基本法は、震災等の災害に対応すべく各税目を横断的に統合し、
災害発生後は直ちに災害税制として機能させるものとすべきである。
(2)中小法人税制について
①外形標準課税は中小法人に適用すべきではない
外形標準課税の課税標準である付加価値割の大半は給与であり、中小法人は大法人と比較すると労働分配率が高いことから、中小法人に外形標準課税が導入された場合には、中小法人の雇用の維持と創出に影響を及ぼすこととなる。
②繰越欠損金の控除限度額の縮減は中小法人に適用すべきではない
中小法人は、大法人と比較して事業基盤の弱い法人が多く、控除制限によ
り資金繰りを圧迫することとなる。
(3)消費税制について
事業者の事務負担が増加すること等の理由から、日本税理士会連合会は、単
一税率制度の維持を強く主張してきている。
平成33年4月に予定されている区分経理等のための適格請求書等保存方式
(いわゆるインボイス方式)への移行については、例えば、請求書等に一定の記
載事項を追加することにより、区分経理等は十分可能であるとも考えられる。
事業者の事務負担と徴税コスト等を考慮し、仕入税額控除方式(インボイス
方式を含む。)、免税点制度等の見直しを含めた消費税制のあり方について検
討すべきである。
(4)取引相場のない株式等の評価の適正化について
取引相場のない株式等の評価は、原則として純資産価額方式と類似業種比準
方式に基づいて行われるが、いずれも問題がある。
すなわち、純資産価額方式においては、退職給付債務は蓋然性の高いもので
あっても負債としての計上が認められていない。
また、類似業種比準方式は、上場会社(類似業種)の株価等の変動が評価額に
影響を及ぼすこととなっている。
したがって、取引相場のない株式等の評価方法のあり方について、適正化を
図る観点から早急に見直すべきである。

■Ⅰ 今後の税制改正についての基本的な考え方■
【中小法人税制】
具体的な税制改正に際しては、個人と法人の課税制度の相違を前提にした上で、総合的に検討し、公平・中立・簡素な制度とすべきである。
また、資本金基準と他の指標(従業員数など)を組み合わせることが適切である。
【所得税】
就労促進と所得再分配機能の回復の観点から、税収中立を原則としつつも、
所得税制を抜本的に改正すべきである。その際には、所得控除と税額控除の役
割を整理し、所得水準にかかわらず一定の税負担の軽減がなされるゼロ税率制
度の導入を含めて検討すべきである。
また、家族構成などの人的な事情に応じて負担調整を行う「人的控除」の方
が有効であると考えられる点に留意する必要がある。
【法人税】
法人税制の改正に当たっては、財源確保の視点だけではなく、適正な課税ベ
ースの構築も引き続き検討すべきである。
また、法人税における所得金額の計算の基礎となる確定決算主義を維持し、特に役員給与、引当金などの規定について見直しを検討すべきである。
【消費税】
これからのわが国の社会保障4経費(年金、医療、介護、子育て)を支えるの
は、消費税である。
日本税理士会連合会は、概ね次のような姿をあるべき消費税制と考えてい
る。
①単一税率制度が望ましい。
②仕入税額控除方式としては、請求書・領収書等に事業者番号(法人は法人番号、個人は新たに定める個人事業者番号)を記載することを仕入税額控除の要件の一つとする。
③基準期間制度を廃止して全ての事業者を課税事業者とし、その課税期間の課税売上が僅少である一定の事業者には、その旨の届出書の提出を要件として、申告を不要により、いわゆる「免税事業者の排除問題」は解決する。
④簡易課税制度については、みなし仕入れ率を引き下げたうえで設備投資に係る仕入税額控除を認め、一定の要件を付した上でその課税期間に係る諸届の提出時期を申告期限までとする。
⑤課税ベースを狭めることとなる非課税の範囲を縮小する。
【相続税・贈与税】
平成27年から施行されている相続税の基礎控除の引下げ等による課税ベー
スの拡大は、資産格差を是正し、財源調達機能を回復させるための施策ではあ
るが、相続税の申告件数が大幅に増加し、これに伴い延納及び物納の申請も増
加することが見込まれていることから、延納及び物納の手続きを一層周知する
ことが必要であるとともに、各種書類の提出期限や不足資料等の補完期限の延
長についても検討すべきである。
贈与税は、高齢者世代から若年世代への資産移転を通じて経済の活性化を図
るという社会的要請を受けて相続税の補完税としての性格を維持しつつ、その
負担軽減を図ることを検討する必要がある。そのためには、より広く世代間の
資産移転を促進するために基礎控除の拡大や税率構造の見直しを行うべきであ
る。
【地方税】
地方行政の役割が一層高まっている。税源の偏在性が少ない地方税制を構築
する必要がある。
平成28年度税制改正において、法人事業税については、大法人を対象とする外形標準課税の拡大が行われた。外形標準課税の適用対象法人のあり方については、引き続き慎重に検討を行うこととされている。しかし、大法人向けの外形標準課税の拡大は必要であるが、中小法人については適用すべきでない。
土地に対する固定資産税については、次回の評価替えまでに、負担調整措置等の廃止を視野に入れた検討をすべきである。
【納税環境整備・その他】
1 国税通則法等
今後の運用等を踏まえて、税務調査手続きをはじめ各種手続きに係る国
税通則法の改正が行われ、法令解釈通達、事務運営指針及びFAQが公表の
趣旨を包摂した納税者憲章の制定及び国税通則法第1条(目的)への「納税
者の権利利益の保護に資する」旨の文言の追加を検討すべきである。
2 公会計制度
国及び地方公共団体は、説明・運用の責任を明確にし、かつ、行政コス
ト等を容易に把握するためには、複式簿記・発生主義会計を基礎とした財
務に係る資料も作成し、公表する必要がある。平成15年度決算分より企
業会計の考え方及び手法を基礎として財務省が作成し、公表している「国
の財務書類」がより一層活用されるように取り組むことが必要である。
3 成年後見制度等への対応
関連する税制及び税務上の取扱い等について、継続して見直すととも
に、一層の配慮をすることも必要である。
4 社会保障・税一体改革に伴う見直し
社会保障・税一体改革に際しては、社会保険料と所得税・住民税の負担のバランス等を考慮し、負担割合及び連続性等について見直す必要がある。
5 固定資産課税台帳における法人・個人番号の付番の促進
固定資産税評価の見直しの時期に告知書を送付する等の方法により付番を促進し、統一的な管理を行うことを検討すべきである。
【国際税制】
中小法人の国外取引活動を支援する措置の検討や未決済デリバティブ取引に
係る税務の取扱い等の見直しをするとともに、個人の資産税分野における課税
の公平を確保するための執行体制の一層の整備が必要である。
二重非課税については国際的に対処し、不正な資産隠しに対しては国際的な課税ルールを構築することが必要である。
移転価格税制については、事前確認と相互協議(日本の税務行政庁と海外子会社所在国の税務行政庁の間で国家間協議)の一層の迅速化と予見可能性を高めることが必要である。
【震災対応税制】
国家規模の災害危機管理体制整備の一環として、税制においても恒久法
として「災害税制に関する基本法」を立法化すべきである。また、この基
本法は、震災等の災害に対応すべく各税目を横断的に統合し、災害発生後
は直ちに災害税制として機能させるものとすべきである。

【総 評】
今回、日本税理士会連合会が取りまとめた平成29年度税制改正に関する建議書について取り上げたのは、今年12月に提出される自民党政権下での平成29年度税制改正にどこまでこの建議書が取り込まれているかの確認の意味での意図からです。
例年からの内容が盛り込まれておりましたが、消費税率の引上げに伴う低所得者層への負担増いわゆる逆進性への対応策として軽減税率の今後の導入の行方が気になりました。日本税理士会連合会がいうように、大部分は低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税率となる恐れがあり、今問題となっている年金以上に支給している生活保護の支給に近い状況が起こるのではないかと思われます。
今まで若いころに一生懸命に働き、掛けてきた年金を、定年を迎えた老後に支給できるようにしたはずです。ところが今は大変不景気で、病気やけがのため、失業したわけではなく、勤め先が倒産したがために、本人は働く気が合っても、再就職先が見つからず、比較的若いころから生活保護を支給されるようになってしまっています。
日本は「皆平等」「弱者救済」「困ったときはお互い様」の精神が昔からあります。ただ、それを行き届かせることにこだわると、税収増が思ったほど見込めず、国及び地方の借金が一向に減らないのではないでしょうか。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
posted by 7に縁がある税理士 at 23:49| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。