2018年05月07日

「平成30年度税制改正大綱」の要約趣旨等

 「平成30年度税制改正大綱」の目次を下記に列挙し、見送られた改正項目、前
年度と同様の改正項目等が再度盛り込まれたのかを検証していきます。

        目 次

第一 平成30年度税制改正の基本的考え方・・・・・・・・・・・・1
 安倍内閣はこの5年間、デフレ脱却と経済再生を最重要課題として取り組んできた。
デフレ脱却と経済再生に向け、生産性向上のための設備投資と持続的な賃上げを強力に後押しする観点から、賃上げ・生産性向上のための税制上の措置及び地域の中小企業の設備投資を促進するための税制上の措置を講ずる。また、中小企業の代替わりを促進するため、事業承継税制を10年間の特例措置として抜本的に拡充する。観光立国実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図る観点から、観光促進のための税として国際観光旅客税(仮称)を創設するとともに、地方創生に向けて、地方拠点強化税制を見直す。
 
 以下、平成30年度税制改正の主要項目及び今後の税制改正に当たっての基本的考え方を述べる。

1 個人所得課税の見直し
(1)平成30年度税制改正における対応
平成30年度税制改正においては、以下のとおり個人所得課税の見直しを進める。
① 給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替
まずは、給与所得控除・公的年金等控除を10万円引き下げるとと
もに、基礎控除を同額引き上げることとする。
② 給与所得控除の見直し
平成30年度税制改正においても、給与収入が850万円を超える場
合の給与所得控除額を195万円(①の見直しによる10万円引下げ分
を含む。)に引き下げる。ただし、子育てや介護に対して配慮する
観点から、22歳以下の扶養親族が同一生計内にいる者や特別障害
者控除の対象となる扶養親族等が同一生計内にいるものについて
は、負担増が生じないよう措置を講ずる。
③ 公的年金等控除の見直し
公的年金等控除について、公的年金等収入が1000万円を超える場
合、控除額に上限(見直し後の上限額:195.5万円(①の見直しによ
る10万円引下げ分を含む。))を設けることとする。また、公的年
金等収入以外の所得金額が1000万円を超える場合には控除額を10
万円引き下げ、2000万円を超える場合には控除額を20万円引き下
げることとする。
④ 基礎控除の見直し
基礎控除は、人的控除の中で最も基本的な控除であり、所得金額
2400万円超から逓減し、2500万円超で消失する仕組みとする。
⑤ 所得情報を活用している社会保障制度等における対応
(2) 今後の見直しに向けた基本的方向性

 
2 デフレ脱却・経済再生
(1)「生産性革命」の実現に向けた税制措置
 ① 賃上げ・生産性向上のための税制
 ② 「生産性革命」の実現に向けた中小企業の設備投資の支援
  2020年までに官民合わせた研究開発投資を対GDP比4%以上とする
政府目標も踏まえ、研究開発税制の見直しを行う。具体的には、総
額型の控除率を試験研究費の増減に応じたものとする。
 (2) 事業承継税制の拡充
    所得拡大促進税制について、高い賃上げを行う企業への支援を強
化する。
 (3)競争力の強化
  ① 事業再編の環境整備
  ② 国立大学法人等に対する評価性資産の寄附の促進
 (4) 観光立国・地方創生の実現
 (5) その他考慮すべき課題
  
3 地域社会を支える地方税財政基盤の構築
(1) 地方消費税の清算基準の抜本的な見直し
 (2) 土地に係る固定資産税の負担調整措置
 (3) 都市・地方の持続可能な発展のための地方税体系の構築
    特に偏在度の高い地方法人課税における税源の偏在を是正する新たな措置について、消費税率10%段階において地方法人特別税・譲与税が廃止され法人事業税に復元されること等も踏まえて検討し、平成31年度税制改正において結論を得る。

4 森林吸収源対策に係る地方財源の確保
(1) 国際課税に関する制度の見直し
 (2) 国外財産に対する相続税等の納税義務の範囲の見直し
 (3) 仮想通貨の消費税非課税化
   
5 経済活動の国際化への対応
  
6 円滑・適正な納税のための環境整備

7 その他
(1) たばこ税の見直し
税率の引上げに当たっては、3回に分けて段階的に実施する。
また、近年急速に市場が拡大している加熱式たばこについて、
その製品特性を踏まえた課税方式への見直しを行う。
(2) 郵政事業のユニバーサルサービスの安定的確保

第二 平成30年度税制改正の具体的内容・・・・・・・・・・・・・17

一 個人所得課税
1 個人所得課税の見直し
(1) 給与所得控除等
(国税・地方税)
(2) 公的年金等控除
(国税・地方税)
(3) 基礎控除
(国 税)
② 上記①の見直しの結果、基礎控除の額は次のとおりとなる。
  イ 合計所得金額が2400万円以下である個人 48万円
   ロ 合計所得金額が2400万円を超え2450万円以下である個人  
32万円
   ハ 合計所得金額が2450万円を超え2500万円以下である個人
                        16万円
 (地方税)
  ② 上記①の見直しの結果、基礎控除の額は次のとおりとなる。
   イ 前年の合計所得金額が2400万円以下である所得割の納税義務者 43万円
   ロ 前年の合計所得金額が2400万円を超え2450万円以下である所得
割の納税義務者  
29万円
   ハ 前年の合計所得金額が2450万円を超え2500万円以下である所得
割の納税義務者  
                         15万円

(4) 所得金額調整控除
(国税・地方税)
①  その年の給与等の収入金額が850万円を超える居住者で、特別障
害者に該当するもの又は年齢23歳未満の扶養親族を有するもの若しくは特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有する者の総所得金額を計算する場合には、給与等の収入金額(その給与等の収入金額が1000万円を超える場合には、1000万円)から850万円を控除した金額の10%に相当する金額を、給与所得の金額から控除する。
(5) 青色申告特別控除
(国税・地方税)
①  取引を正規の簿記の原則に従って記録している者に係る青色申告特別控除の控除額を55万円(現行:65万円)に引き下げる。
②  上記①にかかわらず、上記①の取引を正規の簿記の原則に従って記録している者であって、次に掲げる要件のいずれかを満たすものに係る青色申告特別控除の控除額を65万円とする。
イ その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電
子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等
の特例に関する法律に定めるところにより電磁的記録の備え
付け及び保存を行っていること。
    ロ その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算
書等の提出を、その提出期限までに電子情報処理組織(e-Tax)
を使用して行うこと。
(6) 上記(1)から(5)までの見直しに伴う所要の措置
(国 税)
①  同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件を48万円以下(現行:38万円以下)に引き上げる。 
② 源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件を95万円以下(現行:85万円以下)に引き上げる。
③ 配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額要件を48万円超133万円以下(現行:38万円超123万円以下)とし、その控除額の算定の基礎となる配偶者の合計所得金額の区分を、それぞれ10万円引き上げる。
④  勤労学生の合計所得金額要件を75万円以下(現行:65万円以下)に引き上げる。
⑤  家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費に算入する金額の最低保障額を55万円(現行:65万円)に引き下げる。
⑥  非居住者の公的年金等について、分離課税の対象となる金額等の算定における控除額計算の基礎となる額を、65歳未満の者については5万円(現行:6万円)に、65歳以上の者については9万5千円(現行:10万円)に、それぞれ引き下げる。
⑦  その他所要の措置を講ずる。
 (地方税)
①  同一生計配偶者及び扶養親族の前年の合計所得金額要件を48万円以下(現行:38万円以下)に引き上げる。
②  配偶者特別控除の対象となる配偶者の前年の合計所得金額要件を48万円超133万円以下(現行:38万円超123万円以下)とし、その控除額の算定の基礎となる配偶者の前年の合計所得金額の区分を、それぞれ10万円引き上げる。
③  勤労学生の前年の合計所得金額要件を75万円以下(現行:65万円以下)に引き上げる。
④  障害者、未成年者、寡婦及び寡夫に対する個人住民税の非課税措置の前年の合計所得金額要件を135万円以下(現行:125万円以下)に引き上げる。
⑤  個人住民税均等割の非課税基準を、35万円に本人、同一生計配偶者及び扶養親族の合計数を乗じて得た金額に10万円を加えた金額(同一生計配偶者又は扶養親族を有する場合には、その金額に21万円を加えた金額)とする。
 また、個人住民税所得割について、前年の所得の金額が35万円に本人、同一生計配偶者及び扶養親族の合計数を乗じて得た金額に10万円を加えた金額(同一生計配偶者又は扶養親族を有する場合には、その金額に32万円を加えた金額)以下のものを非課税とする。
⑥  家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費に算入する金額の最低保障額を55万円(現行:65万円)に引き下げる。
⑦  その他の所要の措置を講ずる。
(注1) 上記1の改正は、平成32年分以後の所得税及び平成33年度分
以後の個人住民税について適用する。
 (注2) 平成32年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳の備付けを開
始する日に、これらの帳簿の電磁的記録による備付け及び保存
に係る承認を受けていない場合において、同年中の日であって
その承認を受けてこれらの帳簿の電磁的記録による備付けを開
始する日から同年12月31日までの間におけるこれらの帳簿の電
磁的記録による備付け及び保存を行っているときは、同年分の
65万円の青色申告特別控除の適用における上記(5)②イの要件を
満たすこととする等の所要の措置を講ずる。
2 金融・証券税制
3 土地・住宅税制
4 森林吸収源対策に係る地方財源の確保
5 租税特別措置等
6 その他
    
二 資産課税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
1 事業承継税制の特例の創設等
2 一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し
3 土地に係る固定資産税等の負担調整措置
4 土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置の創設
5 租税特別措置等
6 その他

三 法人課税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70
1 賃上げ・生産性向上のための税制
(国 税)
(4) 中小企業における所得拡大促進税制の改組
   青色申告書を提出する中小企業者等が、平成30年4月1日から平成33
年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対し
て給与等を支給する場合において、平均給与等支給額から比較平均
給与等支給額を控除した金額の比較平均給与等支給額に対する割合
が1.5%以上であるときは、給与等支給増加額の15%の税額控除がで
きることとする。この場合において、次の要件を満たすときは、給
与等支給増加額の25%の税額控除ができることとする。ただし、控
除税額は、当期の法人税額の20%を上限とする(所得税についても同
様とする。)。
①  平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額の比較平均給与等支給額に対する割合が2.5%以上であること。
②  次のいずれかの要件を満たすこと。
イ 教育訓練費の額の前期の教育訓練費の額に対する増加割合
が10%以上であること。
     ロ その中小企業者等がその事業年度終了の日までに中小企業
等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたもので、そ
の経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたも
のとして証明がされたこと。
   (注1) 上記の「中小企業者等」とは、中小企業者又は農業協同組
合等をいう。なお、中小企業者のうち適用除外事業者に該
当するものを除く。
   (注2) 上記(1)の制度との選択適用とする。
   (注3) 上記(1)の(注1)から(注4)までは、上記においても同様と
する。


(地方税)
(1) 所得拡大促進税制の改組
①  付加価値割の所得拡大促進税制を改組し、法人が、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、次の要件を満たすときは、給与等支給増加額を付加価値割の課税標準から控除できることとする。
イ 平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除
した金額の比較平均給与等支給額に対する割合が3%以
上であること。
       ロ 国内設備投資額が減価償却費の総額の90%以上であ
ること。
②  雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度を改組し、法人が、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、一定の要件を満たすときに適用できることとされる法人税の税額控除を、中小企業者等に係る法人住民税に適用する。
2 競争力強化のための税制措置
3 地方創生の実現
4 税務手続の電子化等の推進
 5 その他の租税特別措置
6 その他

 四 消費課税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・92
1 観光立国・地方創生の実現
2 たばこ税の見直し
(国税・地方税)
(1) たばこ税率の引上げ
①  

③  



 3 地方消費税の清算基準の抜本的な見直し
4 税務手続の電子化等の推進
5 租税特別措置等
6 その他

五 国際課税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・108
1 恒久的施設関連規定の見直し
 2 外国子会社合算税制等の見直し
 3 特定目的会社の利益の配当等に係る二重課税調整の改正
 4 その他
 
 六 納税環境整備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・118
 1 申告手続の電子化促進のための環境整備
2 年末調整手続の電子化(再掲)
 3 共通電子納税システム(共同収納)の導入
 4 eLTAXの安全かつ安定的な運営のための措置
 5 その他

七 関税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129
1 暫定税率の適用期限の延長等
2 個別品目の基本税率等の見直し
3 特恵関税制度の見直しに伴う基本税率の無税化等
4 金の密輸入に対する罰則の引上げ
5 その他

第三 検討事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・130

1 年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する
中で、世代間及び世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年
金、公的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバラ
ンス、貯蓄商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に
留意するとともに、今般の公的年金等控除の見直しの考え方や年金制
度改革の方向性も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税のあり
方を総合的に検討する。

6  医療に係る消費税のあり方については、医療保険制度における手当
のあり方の検討等とあわせて、医療関係者、保険者等の意見、特に高
額な設備投資にかかる負担が大きいとの指摘等も踏まえ、医療機関の
仕入れ税額の負担及び患者等の負担に十分に配慮し、関係者の負担の
公平性、透明性を確保しつつ、平成31年度税制改正に際し、税制上の
抜本的な解決に向けて総合的に検討し、結論を得る。


   【総  評】
 今回は平成30年度税制改正大綱に関して、検証していきました。
平成29年度税制改正大綱は表紙1P、目次1P、本文137Pの冊子だったのが、平成30年度税制改正大綱は表紙1P、目次1P、本文132Pの冊子と前年度より若干スリムなボリュームのある内容になった印象です。
 特に目新しく感じたのは、所得課税では給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の見直し、消費課税ではたばこ税の見直しが目に付きました。

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【平成30年度税制改正に関する建議書】

■消費税における単一税率及び請求書等保存方式の維持■
 日税連は、これまでも単一税率制度の維持を強く主張してきたが、税率の引き上げが目前に迫る中、平成30年度税制改正が軽減税率制度を撤回することのできる事実上最後の機会であると考え、建議書においては重要建議項目の最初に据えることとした。

(1)単一税率制度の維持
   軽減税率制度には次のような問題がある。
  ・区分経理等により事業者の事務負担が増加する
  ・逆進性対策として非効率であるうえに、財政が毀損し社会保障給付の抑
制が必要になる
  ・簡易課税制度が複雑な制度となる
  ・軽減税率適用に関する訴訟等が増加する
   特に、事業者の事務負担の増加は軽視できない問題である。
  例えば、国税庁は「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」
(平成29年1月改訂)及び「同(個別事例編)」(同)を公表しているが、事
業者には、こうした項目の一つ一つに適切に対応することが求められてい
るが、その一つ一つに膨大な事務負担を強いられることになる。
 こうした観点から、日税連は低所得者対策の代替案として、あらかじめ
国が一定額を入金したプリペイドカードを配付する方法や、一定額の簡素
な給付措置を提言した。プリペイドカードによる方法は、購入時にカード
をレジにかざすなどし、軽減税率対象品の場合、標準税率と軽減税率の差
に相当する消費税額がカードから引かれる仕組みである。
また、簡素な給付措置は、平成26年4月の消費税率8%への引き上げによ
る影響を緩和するため、低所得者に対する暫定的措置として導入された
「臨時福祉給付金」のような仕組みである。
 いずれの措置も、低所得者へのピンポイントの給付が可能である点にお
いて、軽減税率制度より優れているといえる。
  (2)請求書等保存方式の維持
    適格請求書等保存方式の導入は、平成35年10月からであるが、平成
31年10月からは、区分記載請求書等保存方式が導入される予定であ
る。換言すれば、もし軽減税率制度が導入されない場合であっても、現
状では適格請求書等保存方式は導入されることとなる。
適格請求書等保存方式にも、次のような問題がある。
・事業者及び税務官公署の事務に多大な影響を与える
・名目GDP600兆円に向けた成長戦略、行政手続コスト(事業者の作業時
間)20%の削減目標を掲げる国の方針に反する
   ・税務官公署においては、実調率の低下が顕著である中、さらなる負担
を強いることとなり、適正課税が脅かされる
特に事務負担の増加は、事業者だけにとどまらず、行政コストにもそ
の影響が及ぶため、日本経済への影響が懸念される。
 こうした観点から、日税連は、現行の請求書等保存方式の維持を主張
するとともに、軽減税率制度への対応として、区分経理等に関しては、
現行の請求書等保存方式に一定の記載事項を追加することを提言した。
 (3)消費税制の抜本的見直し
    適格請求書等保存方式のもう一つの問題は、免税事業者が取引から排
除される恐れがあることである。日税連は、その検討に当たっては、特
にこの「免税事業者の排除問題」への措置を講じるよう主張した。
なお、具体的な見直しの方向性として、「基準期間制度を廃止し、す
べての事業者を課税事業者として取り扱い、新たに小規模事業者に対す
る申告不要制度を創設すること」を別途項目で提言している。

■所得控除の抜本的見直し■
 
 (1)人的控除
    人的控除は、所得のうちそこまでは課税されない課税最低限を構成す
るものである。このため、人的控除は租税法における憲法25条の生存権
保障の現れであると解されている。
したがって、給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であること
や、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得者等とのバランス
も踏まえ検討していくことが必要である。
 給与所得控除は、「勤務費用の概算経費」と「他の所得との負担調整」
からなるとされているが、他の所得との負担調整の意義や給与所得と事業
所得を明確に分ける意義は薄れているといえる。
 公的年金等への課税は、拠出時に社会保険料控除として全額控除され、
給付時に課税される仕組みとなっている。その上、給付時には公的年金等
控除が適用され、実質的に非課税に近い課税制度となっている。したがっ
て、公的年金等控除の見直しについても検討すべきである。
 以上のことより、給与所得控除や公的年金等控除の所得計算上の控除を
縮減した上で、人的控除を中心として課税最低限を確保することが適切で
ある。現行の所得の種類ごとの負担調整、すなわち所得計算上の控除を縮
減し、人的な事情による負担調整である人的控除を拡充することにより、
課税最低限を確保する税制の構築を検討すべきである。
 (2)税額控除化の検討
    現行の所得控除方式は、適用税率の高い高所得者に有利な制度であ
り、所得金額により税負担の軽減効果に差異が生じている。そこで、人的
控除などについては、【図2】に示す通り、一定の所得金額に最低税率を
乗じた金額を税額から控除する「税額控除方式」や、一定の所得金額まで
の税率をゼロとする「ゼロ税率方式」への変更を検討すべきである。

■中小法人に対する繰越欠損金控除制限及び外形標準課税の不適用■

(1) 繰越欠損金の100%控除制度の維持
中小法人は、大法人と比べ財務基盤も弱く、繰越欠損金に控除制限
を設けると、中小法人の資金繰りを圧迫することになる。また、中小
法人は、大法人と比べ業績回復には相当な期間を要する場合が多
い。したがって、中小法人に対しては現行の繰越欠損金の100%控除
制度を維持すべきである。
  (2)中小法人への外形標準課税の不適用
中小法人の雇用の確保と資金繰り悪化を防ぐためだけでなく、地方創生の観点からも、中小法人には法人事業税の外形標準課税を適用すべきでない。

■償却資産に係る固定資産税の抜本的見直し■

(1)償却資産に係る固定資産税の位置づけ 
     税収規模は約1兆6000億円であり、地方財政における安定した基
幹税の一つとなっている。
    また、平成28年度与党税制改正大綱では「償却資産に対する固定資
産税の制度は堅持する」とされている。
  (2)税制審議会の答申
平成28年度は、諮問「償却資産に係る固定資産税制度のあり方について」に対して答申があった。
答申では、
① 業種間で税負担が偏在している
② 市町村の執行体制と課税客体の補足が十分でない
③ 事業者の事務負担が煩雑である
等の問題点が指摘されている。
答申は、それらの問題点を踏まえて提言を行っており、その内容を要約したものが建議項目となっている。
(3)建議項目の概要
   ①将来的には廃止
     建議書では、国際競争力の観点からも将来的には廃止を検討すべきで
あるとしている。
②解決案の提示
・償却資産税を固定資産税とは異なる新たな税目とすること 
・賦課期日を法人の決算日とすること
・申告期限を所得税及び法人税の申告期限と一致させること
・将来的にe-TaxとeLTAXを連携又は統一することにより税額確定方式
を申告納税方式に変更すること
   ・設備投資の促進を税制で一層支援し、さらに小規模事業者の事務負担
を軽減するために、免税点を300万円(現行150万円)程度に引き上げ
ること
   ・申告業務の簡素化のため、国税の課税標準の計算方法との整合性を図
ること

■個人事業者番号の導入■

(1)現行制度の問題点
法人番号の利用により、当事者は経済的なメリットを享受することが
できる。これに対して、個人番号はその取り扱いが法令で限定されてい
るため、個人事業者等には取引の際に自由に利用できる「番号」が存在
しない。すなわち、個人事業者は、法人番号が有する経済的なメリット
を享受できない。
(2)個人事業者番号の導入 
個人事業者等について、法人番号と同様に運用上の制限が少ない「個
人事業者番号」を導入し、その付番を選択的に受けられるようにする必
要があるとしている。
この結果、法人の番号は法人番号に統一され、個人番号は個人の税・
社会保障・災害対策のみに利用され、「個人事業者番号」は個人事業者
等が経済活動をする際に広く用いられることとなり、新たな価値の創出
につながることが期待される。
 なお、消費税における適格請求書発行事業者の登録に関連して、建議
書は、法人番号及び「個人事業者番号」の活用を検討すべきであるとし
ている。


【総  評】
前回に引き続き、日本税理士会連合会が取りまとめた平成30年度税制改正に関する建議書について取り上げたのは、今年12月に提出される自民党政権下での平成30年度税制改正にどこまでこの建議書が取り込まれているかの確認の意味での意図からです。

特に同意を示したのが、下記事項です。
(1)単一税率制度の維持
   軽減税率制度には次のような問題がある。
  ・区分経理等により事業者の事務負担が増加する
  ・逆進性対策として非効率であるうえに、財政が毀損し社会保障給付の抑
制が必要になる
  ・簡易課税制度が複雑な制度となる
  ・軽減税率適用に関する訴訟等が増加する
   特に、事業者の事務負担の増加は軽視できない問題である。
  例えば、国税庁は「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」
(平成29年1月改訂)及び「同(個別事例編)」(同)を公表しているが、事
業者には、こうした項目の一つ一つに適切に対応することが求められてい
るが、その一つ一つに膨大な事務負担を強いられることになる。
 こうした観点から、日税連は低所得者対策の代替案として、あらかじめ
国が一定額を入金したプリペイドカードを配付する方法や、一定額の簡素
な給付措置を提言した。プリペイドカードによる方法は、購入時にカード
をレジにかざすなどし、軽減税率対象品の場合、標準税率と軽減税率の差
に相当する消費税額がカードから引かれる仕組みである。
また、簡素な給付措置は、平成26年4月の消費税率8%への引き上げによ
る影響を緩和するため、低所得者に対する暫定的措置として導入された
「臨時福祉給付金」のような仕組みである。
 いずれの措置も、低所得者へのピンポイントの給付が可能である点にお
いて、軽減税率制度より優れているといえる。

このまま消費税における事務負担が増えたことを理由に、弊事務所のような税理士事務所からの税理士報酬を増加させることを顧問先様等へ御理解いただくのは難しく、徒に税務リスクを同時に増加させるか、一旦期限内に申告して、5年内に更正の請求で還付申告を行うかしないと、納税者の税負担のバランスを保てなくなる恐れがあります。
いずれにも得のない改正のように映ります。

しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
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【平成30年度税制改正に関する建議書】

■Ⅰ 税制に対する基本的な視点■

(1)公平な税負担
 納税者が負担能力に応じて分かち合うという意味で公平には、水平的公平、
垂直的公平とともに世代間の公平の問題があり、それらが相互に補完し合うバ
ランスのとれた税制を構築していく必要がある。
(2)理解と納得のできる税制
 租税制度は納税者が理解できるものであり、また、その目的や内容についても納得できるものである必要がある。
(3)適正な事務負担
 納税者に求められる事務負担は過度なものであってはならず、必要かつ最小
限になるように配慮されるべきである。また、適正な事務負担は、税務行政に
おいても考慮する必要がある。
(4)時代に適合する税制
 税制を常に時代に適合するものとすべく、その見直しを継続しなければなら
ない。
(5)透明な税務行政
 公平な税負担の確保と申告納税制度を維持・発展させるためには必要不可欠
であり、納税者からさらなる信頼を得るための施策を行っていく努力が求めら
れる。

■Ⅱ 本建議書における重要県議項目■

1 消費税における単一税率及び請求書等保存方式の維持について
  事業者の事務負担が増加すること等の理由から、日本税理士会連合会は、単一税率制度の維持を強く主張しており、平成35年10月に導入予定の区分経理等のための適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)への移行については、例えば、請求書等に一定の記載事項を追加することにより、区分経理等は十分可能であるとも考えられる。
  事業者の負担と徴税コスト等を考慮し、仕入税額控除方式(インボイス方式を含む。)及び免税点制度等の見直しを含めた消費税制のあり方について抜本的に再検討すべきである。
2 所得控除の抜本的見直しについて
 (1)人的控除
給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であることや、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除を縮減した上で、人的控除を中心として課税最低限を確保することが適切である。
 (2)税額控除化の検討
  所得控除の一部については、すべての納税者が一定額まで同一の軽減効果
が得られる税額控除方式又はゼロ税率方式(一定の課税所得まで税率をゼロ
とする方式)への変更を検討すべきである。
3 中小法人に対する繰越欠損金控除制限及び外形標準課税の不適用につい
 て
(1) 繰越欠損金の100%控除制度の維持
中小法人は、大法人と比較して事業基盤の弱い法人が多く、控除制限に
より資金繰りを圧迫することとなる。業績回復の阻害要因とならないよう
に、中小法人に対しては現行の繰越欠損金の100%控除制度を維持すべき
である。
(2) 中小法人への外形標準課税の不適用
中小法人の雇用確保と資金繰りの悪化を防ぐためだけでなく、地方創生
の観点からも、中小法人には法人事業税の外形標準課税を適用すべきでは
ない。
4 償却資産に係る固定資産税の抜本的見直しについて
  償却資産に係る固定資産税を固定資産税とは異なる新たな税目とすること、賦課期日を法人の決算日とすること、申告期限を所得税及び法人税の申告期限と一致させること、将来的にe-TaxとeLTAXを連携又は統一することにより税額確定方式を申告納税方式に変更することなど、抜本的改革の検討をすべきである。
  なお、その際には、設備投資の促進を税制で一層支援し、さらに小規模事業者の事務負担を軽減するために、免税点を300万円(現行150万円)程度に引き上げるべきである。あわせて、申告業務の簡素化のため、減価償却制度における残存価額の廃止、租税特別措置法における30万円未満の少額資産の費用化等、税率の見直しなど、国税の課税標準の計算方法との整合性を図るべきである。
 5 個人事業者番号の導入について
  個人事業者等について、法人番号と同様に運用上の制限が少ない「個人事
業者番号」を導入し、その付番を選択的に受けられるようにする必要があ
る。この結果、法人の番号は法人番号に統一化され、個人番号は個人の税・社
会保障・災害対策のみに利用され、「個人事業者番号」は個人事業者等が経済
活動をする際に広く用いられることとなる。

■Ⅲ 今後の税制改正についての基本的な考え方■

【所得税】
 さらなる就労促進と所得再分配機能の回復の観点から、所得税制を抜本的に
改正すべきである。その際には、所得控除と税額控除・ゼロ税率の役割を整理
し、所得水準にかかわらず一定の税負担の軽減がなされ、かつ、徴税コストの
少ない制度の導入を検討すべきである。
 また、所得の種類に関係なく課税最低限を設定できる所得控除や税額控除な
どによることが望ましい。
【中小法人税制】
 具体的な税制改正に際しては、個人と法人の課税制度の相違を前提にした上で、総合的に検討し、公平・中立・簡素な制度とすべきである。
また、資本金基準や所得金額のほか従業員数など他の指標を組み合わせることが適当である。 
【法人税】
 法人税制の改正に当たっては、税率の引下げと課税ベースのトレードオフに
よる財源確保の視点よりも、適正な課税ベースの構築と確定決算主義の維持を
基本に据えて検討すべきである。主として財源確保上の要請から措置された規
定等については、その効果や妥当性も考慮した上で、早急に見直す必要があ
る。
【消費税】
  これからの我が国の社会保障4経費(年金、医療、介護、子育て)を支えるの
は、消費税である。
 日本税理士会連合会は、概ね次のような姿をあるべき消費税制と考えてい
る。
①単一税率制度が望ましい。
②仕入税額控除方式としては、請求書・領収書等に事業者番号(法人は法人番号、個人は新たに定める個人事業者番号)を記載することを仕入税額控除の要件の一つとする。
③基準期間制度を廃止してすべての事業者を課税事業者とし、その課税期間の課税売上が少額である一定の事業者には、その旨の届出書の提出を要件として、申告を不要とする申告不要制度の採用と、免税事業者であっても仕入税額控除の要件を満たした請求書等の交付を可能とすることで、いわゆる「免税事業者の排除問題」は解決する。
④簡易課税制度については、みなし仕入れ率を引き下げた上で設備投資に係る仕入税額控除を認め、一定の要件を付した上でその課税期間に係る諸届けの提出時期を申告期限までとする。
⑤課税ベースを狭めることとなる非課税の範囲を縮小する。
【相続税・贈与税】
 平成27年から施行されている相続税の基礎控除の引下げ等による課税ベー
スの拡大は、資産格差を是正し、財源調達機能を回復させるための施策ではあ
るが、相続税の申告件数が大幅に増加し、これに伴い延納及び物納の申請も増
加することが見込まれていることから、延納及び物納の手続きを一層周知する
ことが必要であるとともに、各種書類の提出期限や不足資料等の補完期限の延
長についても検討すべきである。
 贈与税については、高齢者世代から若年世代への資産移転を通じて経済の活
性化を図るという社会的要請を受けて、相続税の補完税としての性格を維持し
つつ、その負担軽減を図ることを検討する必要がある。そのためには、より広
く世代間の資産移転を促進するために基礎控除の拡大や税率構造の見直しを行
うべきである。
【地方税】
  地方行政の役割が一層高まっている。税源の偏在性が少ない地方税制を構築
する必要がある。
 法人事業税の外形標準課税の適用対象法人のあり方については、引き続き慎重に検討を行うこととされている。しかし、大法人向けの外形標準課税の拡大は必要であるが、中小法人については適用すべきでない。
 土地に対する固定資産税については、負担調整措置等の廃止を視野に入れた検討をすべきである。
 【納税環境整備・その他】
1 国税通則法等
 税務調査手続きをはじめ各種手続きに係る国税通則法の改正が行われ、法令解釈通達、事務運営指針及びFAQが公表の趣旨を包摂した納税者憲章を制定するとともに、国税通則法第1条(目的)に「納税者の権利利益の保護に資する」旨の文言を追加すべきである。
2 閲覧サービス
 適正申告のための納税環境整備の観点から、提出された申告書等の閲覧及びコピーの交付等(カメラ撮影およびスキャナによる読み取り)に係る手続を緩和し、基本的な事項については国税通則法に規定すべきである。
3 社会保障・税一体改革に伴う見直し
社会保障・税一体改革に際しては、社会保険料と所得税・住民税の負担のバランス等を考慮し、負担割合及び負担の連続性等について見直す必要がある。
4 公会計制度
 国及び地方公共団体の財政状態や、行政コストの内容等を容易に把握するため、「国の財務書類」がより一層活用されるように取り組むことが必要である。
5 成年後見制度等への対応
関連する税制及び税務上の取扱い等について継続して見直すことが必要である。
【国際税制】
 中小法人の国外取引活動を支援する措置の検討や未決済デリバティブ取引に
係る税務の取扱い等の見直しをするとともに、個人の資産税分野における課税
の公平を確保するための執行体制の一層の整備が必要である。  
 二重非課税については国際的に対処し、不正な資産隠しに対しては国際的な課税ルールを構築することが必要である。
 移転価格税制については、事前確認と相互協議(我が国の税務行政庁と海外子会社所在国の税務行政庁の間で国家間協議)の一層の迅速化と予見可能性を高めることが必要である。
【災害対応税制】
 恒久法として「災害税制に関する基本法」を立法化すべきであると要望してきた。


【総  評】
今回、日本税理士会連合会が取りまとめた平成30年度税制改正に関する建議書について取り上げたのは、今年12月に提出される自民党政権下での平成30年度税制改正にどこまでこの建議書が取り込まれているかの確認の意味での意図からです。

例年からの内容が盛り込まれておりましたが、消費税率の引上げに伴う低所得者層への負担増いわゆる逆進性への対応策として軽減税率の今後の導入の行方が気になりました。日本税理士会連合会がいうように、大部分は低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税率となる恐れがあり、今問題となっている年金以上に支給している生活保護の支給に近い状況が起こるのではないかと思われます。
今まで若いころに一生懸命に働き、掛けてきた年金を、定年を迎えた老後に支給できるようにしたはずです。ところが今は大変不景気で、病気やけがのため、失業したわけではなく、勤め先が倒産したがために、本人は働く気が合っても、再就職先が見つからず、比較的若いころから生活保護を支給されるようになってしまっています。

日本は「皆平等」「弱者救済」「困ったときはお互い様」の精神が昔からあります。ただ、それを行き届かせることにこだわると、税収増が思ったほど見込めず、国及び地方の借金が一向に減らないのではないでしょうか。

しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。


posted by 7に縁がある税理士 at 14:30| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

 (税理士会員相談室)
 <<消費税>>
● 販売用の住宅を一時的に賃貸した場合の個別対応方式による仕入税額控除
  質 問
  不動産業を営むA社は、販売目的で分譲マンションを取得したが、資金繰りその他の事情を考慮し、一時的に居住用として賃貸することとなった。この場合において、建物の取得費は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して仕入税額控除を計算することができるか。
  回 答
  課税仕入れを行った日(建物取得時)の目的が「販売用」であり、建物取得時点で非課税となる家賃収入が発生する予定がなかったことから、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して問題ないものと思われる。
  検 討
  質問の事例では、建物取得時の用途が販売用であるから、これを一時的に賃貸したとしても、その賃貸により発生する家賃収入(非課税)は、課税仕入の用途区分に影響しないものと考えるべきである。
なお、一時的な目的変更とはいえ、販売目的から賃貸用に変化しているため、後日説明を求められることも考えられる。そのため、法人内部の稟議書等で、取得後の一時的な賃貸その他の経緯を整理しておくと有効である。

● 賃貸中の中古マンションを取得した場合の個別対応方式による仕入税額控除
質 問
不動産業を営むB社は、住宅として賃貸中の中古マンションを、買手を先
に確保した上、転売目的で賃借人付きで丸ごと取得したが、買手の資金の都
合により、実際の売却は決算をまたいで10ヶ月後となった。この場合にお 
いて、建物の取得費は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して仕
入税額控除を計算することができるか。
 なお、当該土地建物の保有期間中の家賃収入は、当社の収益として計上し
ているが、建物部分についての減価償却費は計上せず、決算書には取得した
土地建物を「商品」として表示する予定である。 
  回 答
  本件中古マンションの取得の目的は転売にあることから、最終的に課税売上げが発生することは明らかである。ただし、建物の取得時点で入居者がいることから、最終目的が中古マンションの転売ということであっても、転売までの間、非課税となる家賃収入が発生していることも事実である。したがって、本件建物の取得は、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入に区分せざるを得ないものと思われる。
検 討
  賃借人と買手を含めた三者間の協議により、1か月未満の短期家賃については買手に帰属するなどの取り決めをした場合には、消費税における課税仕入れの用途区分は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分することが認められ、法人税においても寄付金認定などはなく、家賃収入は買手に帰属させることができるものと思われる。
 上述のように非課税収入の収受権を転売先に帰属させることで、「課税資産
の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」から「課税資産の譲
渡等にのみ要するもの」に用途区分を転換させるなどの工夫も必要になるも
のと思われる。

● 用途を変更した場合の修正申告の是非
質 問
不動産業を営むC社は、前事業年度末に貸ビルを建築するための敷地を購
入し、仲介手数料を支払っている。当該前事業年度に係る消費税の確定申告
では、個別対応方式を採用し、仲介手数料は、ビルの家賃収入(課税)に対応
するものとして、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分している。
当初計画をしていた建物の建築がかなわず、不採算となることが判明した。そのため、やむなく当該土地を更地のまま転売することとなった。
この場合において、前期の消費税の確定申告で、全額を仕入税額控除の対象とした仲介手数料について、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」に用途区分を変更した上で、修正申告をする必要があるか。
  回 答
  質問の事例では、仲介手数料支払時の用途が貸ビルを建築するための敷地の取得に係るものであるから、その後に土地の用途が変更になったとしても、当初の用途区分を変更し、修正申告をする必要はない。
検 討
 本件の場合、賃貸ビル建設の計画から販売へと方向転換に至った理由から、用途区分の変更が後発的な事象に基因するため、修正申告の必要性は存しない。そこで、後日その状況の客観性を主張する場面を想定し、販売への用途区分の変更経緯を整理しておくと有効である。
 なお、土地を購入した場合に支払う仲介手数料や土地造成費は、その土地の用途に応じて次のように区分することになる。

【仲介手数料等の課税仕入れの用途区分の判定】
利用方法          課税仕入れの用途区分
       課税資産の    その他の資産    共通して
譲渡等にのみ   の譲渡等にのみ   要するもの
要するもの    要するもの
 ①販売用の          土地の売上高に直接
 土地の場合          対応するもの

 ②購入した 建物の売上げに            土地の売上げと
 土地の上に 直結する建物の            建物の売上げに
 建物を建て、建築費                対するもの
 分譲住宅と
 して販売
 する場合
 
 ③購入した          ・住宅家賃収入に
 土地の上に          直接対応するもの
 建物を建て、         ・建物の建築費
 賃貸住宅と
 して貸付け
 る場合

 ④購入した ・住宅以外の
 土地の上に 家賃収入に直接
 建物を建て、対応するもの         
 店舗として ・建物の建築費
貸付ける場合

 ⑤用途未確定                    売上げと明確な
 の場合                       対応関係のない
                           もの


● 建物の建替えに伴う立退料の取扱い
質 問
  当社は画材関連品の小売業を営んでいるが、従来(20年以上前)から賃借し
ていた店舗用建物の建替えに伴い、立退きの要求を受けた。
 当社としては、立地条件や同業者の減少等により、安定した売り上げが得
られていたこともあり、その補てん分としての立退料を要求したところ、600
万円の支払いを受けることになった。
 この場合、受け取った立退料について、消費税の課税対象となるのか。
  回 答
 原則として、課税対象外取引となるため、消費税の課税対象とはなら
ない。
検 討
 現実問題として、立退料が支払われる場合に、それらが明確に区分されて
支払われることはほとんどなく、その判断が困難であることから、次の通達
が設けられている。
(建物賃貸借契約の解除に伴う立退料の取扱い)
 消基通5-2-7
  建物等の賃借人が賃貸借の目的とされている建物等の契約の解除に伴い賃
借人から収受する立退料(不動産業者等の仲介を行うものを経由して収受する
場合を含む。)は、賃貸借の権利が消滅することに対する補償、営業上の損失
又は移転等に要する実費補償などに伴い収受されるものであり、資産の譲渡
等の対価に該当しない。
(注) 建物等の賃借人たる地位を賃借人以外の第三者に譲渡し、その対価を
立退き料等として収受したとしても、これらは建物等の賃借権の譲渡に
係る対価として受領されるものであり、資産の譲渡等の対価に該当する
ことになるのであるから留意する。
  ここで留意したいのは、通達の注書きの意味である。
   具体例としては、銀座で飲食店(クラブ)を営む法人が、オーナーの了
  解のもとに、「建物賃借権」として第三者に譲渡するケースは、資産の
譲渡であることから、課税対象取引として取り扱われることになる。


【総  評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやすい論点を再確認していただきたい意図からです。
共通して「用途区分を変更」した場合における質問・回答が目に付きました。消費税申告における個別対応方式を採用した場合の3種類の課税仕入れの用途区分も表にしてみました。これは課税売上割合が95%未満の場合、採用されるもので、他に一括比例配分方式があります。
また、余談ですが、平成27年4月1日以後に開始する課税期間から消費税の簡易課税制度におけるみなし仕入率がそれまでの90~50%の刻みだったのが、90~40%の刻みになりました。特に、第四種事業の金融業及び保険業が60%から50%に、第五種事業の不動産業が50%から40%に変更になりましたので、御留意下さいませ。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
posted by 7に縁がある税理士 at 00:35| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

 (税理士会員相談室)
 <<資産税>>
● 交換の特例の「交換のために取得したものでないこと」の要件
  質 問
  Aは、長期保有のP宅地をBが2年前に取得したQ宅地と交換する。両宅地は等価であり、Aは、交換後のQ宅地を宅地の用に供する。Aは、固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例(以下「交換の特例」という。)の適用を受ける考えである。
  交換の特例には、対象資産の要件として、相手方が「交換のために取得したと認められるものを除く」との要件があるが、Aは、Bが2年前にQ宅地を取得したことは、取引の際の資料等により確認しているものの、Bがそれを交換のために取得したかどうかについては判定することができない。
Aの交換は、Q宅地をBが交換のために取得したと認定されて、Aの交換の特例の適用が否認されることにはならないだろうか。
  回 答
  2年前にBがQ宅地を取得した目的がその後に行う交換のためであったことが客観的に明らかでない場合には、「交換のために取得したと認められるものを除く」という特例適用除外事由をクリアーしたものとして、交換の特例を適用することができる。
  検 討
  交換の特例の適用要件には、①各当事者が1年以上所有していた固定資産であること、②交換取得資産につき相手方が交換のために取得したと認められるものでないことが含まれている。上記要件のうち、①の要件は譲渡資産及び取得資産の両方に適用される。取得資産についての「1年以上所有」の要件は、昭和40年度の税制改正により追加されたものであり、その改正前は譲渡資産のみの要件であった。他方、取得資産に係る②の要件は、①の改正前から存在している。
昭和40年度改正当時の大蔵省主税局の担当官の説明によれば、相手方所
 有であった取得資産についても「1年以上の所有要件」を追加し、これを外
 形基準として上記②の要件の判定を容易にしたのがその改正の趣旨であった
 ことが認められる(昭和40年版「改正税法のすべて」大蔵財務協会35頁)。

● 譲渡資産が自己の事業用の試算でない場合の買換え等の特例の適用
質 問
甲は、10年ほど前に、営んでいた大都市郊外での農業経営は、農業経営移
 譲年金を受給するために甲と同居し生計を一にしている長男乙に移譲した。
  甲は、この度、公共事業のために自己が所有し乙が営む農業の用に供して
きた農地1,800㎡を買い取られ、対価補償金7000万円を受け取った。補償金
収入で代替資産としての土地の買換えを行う意向はなく、自己が所有する土
地上に7000万円の建築費用を投じて貸家建物数棟を新築したいと思ってい
る。
 甲が行う予定の貸家の新築について、租税特別措置法33条1項に規定する
収用等により資産を買い取られた場合の代替資産の取得の特例(以下「代替資
産取得の特例」という。)の適用を受けることができるか。 
  回 答
  甲は、新築して貸家の用に供する建物を代替資産として、代替資産取得の特例を適用することができる。
検 討
  代替資産取得の特例の代替資産となるのは、
①個別法としての譲渡資産の種類区分ごとの「同種の資産」(措令22④)、
②一組法としての譲渡資産の用途区分に応ずる「一組の資産」(措令22⑤)、
③事業継続法としての譲渡資産がその譲渡人の事業用であった場合に、その
 者が事業用に供するために取得する上記①②に該当する資産以外の資産で
ある(措令22⑥)。
 甲が新築する貸家建物は、上記③の事業継続法の「事業用資産」に該当す
る。
なお、この場合における甲の譲渡資産は、甲の事業用に供されていたもので
はなく、長男乙の事業用に供されていたものであって、甲の取得資産は、甲
自身の事業用に供するものである。
 しかし、事業用資産の所有者と事業経営者が異なることになった場合にお
いても、双方が生計を一にしているときは、その譲渡資産及び買換資産のい
ずれもがその譲渡・買換えをした者の事業用資産であるとみて、この特例を
適用する取扱いが定められている(措通33-43)。
 この取扱いは、特定の事業用資産の買換えの特例(措法37①)にも、準用さ
れる(措通37-22)。

● 低額譲受益課税を受けないで配偶者控除の適用をする贈与税対策
質 問
丁は、このほど丙との婚姻期間が20年以上となったので、丙から通常の
 売買価額が4600万円と認められる自宅の土地家屋(以下「自宅不動産」とい
う。)
全部の贈与をしてもらい、贈与税の配偶者控除2000万円(以下「本件控除」と
いう。)の適用を受けたいと考えた。
 丁は、税務署の担当部門に出向いて相談したところ、自宅不動産の相続税
評価額が3,500万円であり、丁が自宅不動産の贈与を受けて本件控除の適用
をしても贈与税が450万円余もかかることが判明したことから、その計画は
断念した。
 その後に丁の父が死亡し、丁が遺産中の預金を相続して、相続税納付後の
預金額3000万円が残存している。丁は、その残存預金額を原資に丙から自
宅不動産を買い受けることで、当初本件控除の適用対象財産として受贈予定
であった自宅不動産を改めて取得するつもりである。
 この場合には、丁に対する贈与税の課税関係は、どのようになるのか。
  回 答
  丁が丙から自宅不動産を買い受ける場合は、丁に対して、自宅不動産の相続税評価額とその買受価額との差額でなく、通常の取引価額4600万円と買受価額3000万円との差額に相当する低額譲受益1600万円を対象に贈与税が課税される(平成元年3月29日付け個別通達)。
  しかし、丁がこの受贈益1600万円につき、丙から自宅不動産に係る居住用不動産に係る居住用不動産の一部の贈与を受けたとして贈与税の申告をすればこれが認められる。
検 討
 丁の本件控除の適用関係について検討してみると、相続税法21条の6第1
項に規定する「居住用不動産」でも「居住用不動産を取得するための金銭」でも
なく、自宅不動産を低額で譲り受けたことによる「経済的利益の享受」である
から、これが本件控除の対象財産とはならないと考えられる。
 しかしながら、この売買では、居住用不動産に該当する自宅不動産のうち
一部が売買され残余が贈与されたと見ることができ、本件控除では居住用不
動産の一部の贈与も適用することが可能であるから、この自宅不動産に係る
低額譲受益額1600万円につき居住用不動産の一部贈与があったとして贈与
税の申告書を提出すれば、本件控除を適用することができることになる。

● 短期前払費用通達の運用上の留意点
質 問
同族会社であるA社は、代表取締役B氏の所有する不動産を借用して、事
業を営んでいる(3月決算法人)。A社は資金的な余裕があり、かつ、B氏から
の要望もあったため、家賃等の支払方法を1年分のまとめ支払いに変更する
ことを考えている。
法人税の短期前払費用の取扱いは、実務上浸透しているようであるが、運
 用上注意しなければならない点をご教示いただきたい。
  回 答
  短期前払費用の取扱いは、①契約に基づくものであること、②継続的に役務の提供を受けるものであること、③1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払ったこと、④継続して支払った日の属する事業年度の損金の額に算入していること、⑤収益と対応させるべき費用でないこと、という要件が付されている(法基通2-2-14)。
 そのため、通達の運用上は、これらの要件を逸脱しないよう配慮する必要がある。
検 討
(1) 通達運用上の留意点
 ② 「継続的に役務の提供を受けるもの」については、等質等量のサービス
が契約期間中に継続的に提供される必要がある。本件は、不動産の提供に基づく家賃等であるため、その解釈の範疇にある。なお、税理士の顧問契約等については、役務の提供度合いが等質等量とは言えないケースが多いため、通達の適用にあたって否定的な考えが支配的である。
 ③ 「1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払っていること」は、当
年4月から翌年3月分の家賃等であるならば、当年3月末に支払ったもの
であれば許容範囲であると思うが、当年2月に支払ったものについては、
短期前払費用の取扱いは適用されない。つまり、役務の受入れの開始前に
対価の支払が行われ、その支払時から1年を超える期間を支払対象期間と
するようなものは、通達の適用から除外されていることを読み取らなけれ
ばならない。
 なお、家賃等が未払の場合には、本通達の対象とならない。
 ④ 本件のような同族関係者間取引であれば、一旦変更された契約内容につ
いては、むやみに変えるべきではない。
(2) 想定しておかなければいけない留意事項
短期前払費用の取扱いの適用により、支払者側は損金の一時計上を行う
ことになるが、反射的に受取側は収益として認識されるため、変更年度の
課税所得の増幅効果が生じる。
 そこで、月額から年額への変更は、単に12倍した金額の家賃等の取り
決めではなく金利調整分のディスカウントを配慮する、又は事実上の値
上げの意味合いを整備する等の必要性について、併せて検討するべきであ
る。
   最後に、所有権移転外ファイナンスリース等の要件を満たすような賃貸
借契約であった場合(定期借家契約等)には、短期前払費用の取扱いが適用
できなくなる。


【総  評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやすい論点を再確認していただきたい意図からです。
特に婚姻関係20年以上の夫婦間における「低額譲受益課税を受けないで配偶者控除の適用をする贈与税」に関しては、夫婦間で行う売買価額が自宅不動産の通常の売買価額4600万円なのか相続税評価額3500万円なのかを注意して行い、居住用不動産の一部贈与があったとして贈与税の申告書を提出しなければなりません。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
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税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

(税理士会員相談室)
 <<法人税>>
● 完全親法人に対する不動産譲渡損益の計上繰延べ
  質 問
  S社は、平成27年5月に株式交換によって100%支配関係に当たるP社のグループに入った。平成28年1月1日から5月末日までの間に遊休資産である土地及びその上に存する建物(以下「不動産」という。)をP社に売却する予定である。この不動産は減損会計の対象となっており、平成27年5月期に評価損87,392千円を計上した結果、帳簿価額は45000千円となっている。
 帳簿価額の45000千円で売却した場合の税務処理がどうなるか。また、資本関係のない他社から40,000千円で購入の申し出がある。仮に時価と異なる価額でP社に売却した場合のS社とP社の税務処理はどうなるか。
 なお、不動産を譲り受けたP社がその後その不動産を100%グループ内の他の会社に譲渡した場合にS社の税務処理はどうなるか。
  回 答
  本事例のS社とP社間は完全支配関係にあるので、いわゆるグループ法人単体課税制度の適用対象となる。本事例の譲渡の対象となる土地及び建物のそれぞれの譲渡直前の帳簿価額が10,000千円以上であれば、いずれも譲渡損益調整資産に該当し、譲渡損益の繰延べの対象となる。時価と異なる価額で譲渡があった場合は、その差額が受贈益または寄附金となる。たとえ100%グループ内であっても譲受法人であるP社が他の関係会社に譲渡した場合は、S社において繰延べた譲渡損益を計上し、戻し入れる処理が必要となる。
  検 討
 1 譲渡損益の繰延べと戻入計上 
   本事例であるが、帳簿価額の45,000千円が適正な売買価額であるとすれば、会計上の譲渡損失は生じないが、税務上は次の仕訳が想定される。
         (借  方)         (貸  方)
   現 金 預 金  45,000千円   土地・建物  132,392千円
 固定資産譲渡損失  87,392千円
   (注) 土地と建物はどちらも譲渡損が生じているものとする。
 減損会計の適用による評価損の金額87,392千円は、税務上評価損の計上
が認められる事実には該当しないとして、S社では平成27年5月期の申告
調整で加算(留保)されているので、その対象となった不動産が平成27年5
月期で譲渡される結果、同期の申告調整で減算(留保)される。
   一方、減算の対象となった不動産がいずれも譲渡損益調整資産に該当す
れば、グループ法人単体課税制度のうち資産の譲渡損益の繰延べの規定
(法法61の13①)の適用を受けるので、上記の仕訳で示している固定資産
譲渡損失の金額87,392千円が「譲渡損益調整勘定」として申告調整で加算
(留保)される。
 もっとも、P社が譲り受けた不動産のうち適正に計上した建物の減価償
却費に見合う一定の金額はS社で減算(留保)調整して戻し入れる。また、
P社が譲り受けた不動産を他に譲渡した場合も戻入未済の残額をS社で減
算(留保)調整して戻入処理をすることになる(法法61の13②、法令122の
14④一、三)。
2 時価と異なる価額で譲渡された場合
 資本関係のない他社が40,000千円の買取価額を示している事実があ
り、これが実勢価額とされれば売買価額との差5,000千円が生じ、これが
S社側では受贈益(完全支配関係のあるグループ法人間なので法人税法第
25条の2第1項の規定により全額益金不算入)となり、P社側では寄附金
(完全支配関係のあるグループ法人間なので法人税法第37条第2項の規定
により全額損金不算入)となる。
 譲渡損益調整資産に該当する資産の譲渡であっても、資産の譲渡である
ことに変わりはないので、実際に収受した金銭等の額ではなく、原則どお
り時価で譲渡があったものとして税務処理をすることになる。

● 損害賠償金の損金計上時期
質 問
   Y社の社員が起こした不祥事により、Bが損害を受けたとして雇用者責任を追及された。Y社は事故の過失を認め損害賠償に応ずることになった。Y社は銀行融資が2500万円しか受けられないとして当期末までに2500万円を支払った。その後、翌期に入って賠償金額4000万円の合意がなされ、追加の1500万円は3年の分割払いにすることが決まった。しかし、当期の法人税の申告期限までに「合意書」等のような正式な文書作成には至っていない。期中に支払った2500万円は当期の損金の額に算入できるか。
  回 答
  損害賠償金の額が確定していない場合であっても、期末までに支払われた賠償金が当事者間(Y社とBとの間)で争いがない金額と認められれば、当期の損金の額に算入される。
検 討
  なお、翌期に入って当事者間の合意がなされ損害賠償金の額が4000万円と確定したようであるが、これを明らかにするために「合意書」等の文書の作成が必要となろう。
  本事例の残額の1500万円は、たとえ分割払いがされたとしても、損害賠
 償金の額が当事者双方で合意され確定したときに債務が確定したとして、そ
の確定した日の属する事業年度で全額を損金の額に算入することが認められ
よう。

 
【総  評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやすい論点を再確認していただきたい意図からです。
特に100%支配関係に当たるP社のグループに土地建物売却後、資本関係のない他社が低い買取価額を示している事実があり、これが実勢価額とされれば売買価額との差が生じた時は注意が必要です。この場合、100%支配関係に入ったS社の方で法人所得の計算上、減算(全額益金不算入)し、100%支配関係に当たるP社の方で法人所得の計算上、加算(全額損金不算入)としなければなりません。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
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税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

(税理士会員相談室)
 <<法人税>>
● 完全親法人に対する不動産譲渡損益の計上繰延べ
  質 問
  S社は、平成27年5月に株式交換によって100%支配関係に当たるP社のグループに入った。平成28年1月1日から5月末日までの間に遊休資産である土地及びその上に存する建物(以下「不動産」という。)をP社に売却する予定である。この不動産は減損会計の対象となっており、平成27年5月期に評価損87,392千円を計上した結果、帳簿価額は45000千円となっている。
 帳簿価額の45000千円で売却した場合の税務処理がどうなるか。また、資本関係のない他社から40,000千円で購入の申し出がある。仮に時価と異なる価額でP社に売却した場合のS社とP社の税務処理はどうなるか。
 なお、不動産を譲り受けたP社がその後その不動産を100%グループ内の他の会社に譲渡した場合にS社の税務処理はどうなるか。
  回 答
  本事例のS社とP社間は完全支配関係にあるので、いわゆるグループ法人単体課税制度の適用対象となる。本事例の譲渡の対象となる土地及び建物のそれぞれの譲渡直前の帳簿価額が10,000千円以上であれば、いずれも譲渡損益調整資産に該当し、譲渡損益の繰延べの対象となる。時価と異なる価額で譲渡があった場合は、その差額が受贈益または寄附金となる。たとえ100%グループ内であっても譲受法人であるP社が他の関係会社に譲渡した場合は、S社において繰延べた譲渡損益を計上し、戻し入れる処理が必要となる。
  検 討
 1 譲渡損益の繰延べと戻入計上 
   本事例であるが、帳簿価額の45,000千円が適正な売買価額であるとすれば、会計上の譲渡損失は生じないが、税務上は次の仕訳が想定される。
         (借  方)         (貸  方)
   現 金 預 金  45,000千円   土地・建物  132,392千円
 固定資産譲渡損失  87,392千円
   (注) 土地と建物はどちらも譲渡損が生じているものとする。
 減損会計の適用による評価損の金額87,392千円は、税務上評価損の計上
が認められる事実には該当しないとして、S社では平成27年5月期の申告
調整で加算(留保)されているので、その対象となった不動産が平成27年5
月期で譲渡される結果、同期の申告調整で減算(留保)される。
   一方、減算の対象となった不動産がいずれも譲渡損益調整資産に該当す
れば、グループ法人単体課税制度のうち資産の譲渡損益の繰延べの規定
(法法61の13①)の適用を受けるので、上記の仕訳で示している固定資産
譲渡損失の金額87,392千円が「譲渡損益調整勘定」として申告調整で加算
(留保)される。
 もっとも、P社が譲り受けた不動産のうち適正に計上した建物の減価償
却費に見合う一定の金額はS社で減算(留保)調整して戻し入れる。また、
P社が譲り受けた不動産を他に譲渡した場合も戻入未済の残額をS社で減
算(留保)調整して戻入処理をすることになる(法法61の13②、法令122の
14④一、三)。
2 時価と異なる価額で譲渡された場合
 資本関係のない他社が40,000千円の買取価額を示している事実があ
り、これが実勢価額とされれば売買価額との差5,000千円が生じ、これが
S社側では受贈益(完全支配関係のあるグループ法人間なので法人税法第
25条の2第1項の規定により全額益金不算入)となり、P社側では寄附金
(完全支配関係のあるグループ法人間なので法人税法第37条第2項の規定
により全額損金不算入)となる。
 譲渡損益調整資産に該当する資産の譲渡であっても、資産の譲渡である
ことに変わりはないので、実際に収受した金銭等の額ではなく、原則どお
り時価で譲渡があったものとして税務処理をすることになる。

● 損害賠償金の損金計上時期
質 問
   Y社の社員が起こした不祥事により、Bが損害を受けたとして雇用者責任を追及された。Y社は事故の過失を認め損害賠償に応ずることになった。Y社は銀行融資が2500万円しか受けられないとして当期末までに2500万円を支払った。その後、翌期に入って賠償金額4000万円の合意がなされ、追加の1500万円は3年の分割払いにすることが決まった。しかし、当期の法人税の申告期限までに「合意書」等のような正式な文書作成には至っていない。期中に支払った2500万円は当期の損金の額に算入できるか。
  回 答
  損害賠償金の額が確定していない場合であっても、期末までに支払われた賠償金が当事者間(Y社とBとの間)で争いがない金額と認められれば、当期の損金の額に算入される。
検 討
  なお、翌期に入って当事者間の合意がなされ損害賠償金の額が4000万円と確定したようであるが、これを明らかにするために「合意書」等の文書の作成が必要となろう。
  本事例の残額の1500万円は、たとえ分割払いがされたとしても、損害賠
 償金の額が当事者双方で合意され確定したときに債務が確定したとして、そ
の確定した日の属する事業年度で全額を損金の額に算入することが認められ
よう。

 
【総  評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやすい論点を再確認していただきたい意図からです。
特に100%支配関係に当たるP社のグループに土地建物売却後、資本関係のない他社が低い買取価額を示している事実があり、これが実勢価額とされれば売買価額との差が生じた時は注意が必要です。この場合、100%支配関係に入ったS社の方で法人所得の計算上、減算(全額益金不算入)し、100%支配関係に当たるP社の方で法人所得の計算上、加算(全額損金不算入)としなければなりません。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
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税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

 (税理士会員相談室)
 <<資産税>>
  質 問
  被相続人甲は、次のとおり遺言を残し、平成28年5月に死亡した。この場合、相続人及び受遺者に対する相続税、所得税及び法人税の課税関係はどのようになるのか。
 【遺言の要旨】
  甲は、後記の財産を相続人及び知人A,学校法人B学園に対し次のとおり遺贈する。
 (財産取得者)
 乙(妻・包括受遺者)・・・b地を除く全財産の2分の1
 丙(長男・包括受遺者)・・・a地、建物の2分の1
 A(知人・特定受遺者)・・・現金預金の2分の1
 (学)B学園(甲等との関係はない。特定受遺者)・・・b地全部
 (財産内訳)
 1 不動産・・a地400㎡、b地300㎡、建物200㎡
 2 現金預金・・300万円
 なお、相続債務は、借入金500万円があった。
  回 答
 1 相続税関係
  (1) 相続人乙、丙及び受遺者Aが取得した財産については、相続税が課税される。
  (2)  (学)B学園は、公益法人ではあるが法人にかわりにないから、原則として、相続税は課税されない。ただし、相続税法66条4項の適用がある場合は、相続税が課税される。

 2 所得税(譲渡所得)関係
  (学)B学園への遺贈については、被相続人甲に対し原則として、所得税法
59条1項の規定により所得税(譲渡所得)が課税される。ただし、措置法40
条の適用がある場合には、所得税(譲渡所得)は非課税となる。
 3 法人税関係
   公益法人が遺贈により取得した財産については、法人税の課税は、行われない。
  検 討
 1 相続税関係
  (1) 課税財産について
   なお、事例の(学)B学園については、遺言者及びその親族等と何らの関係もないとのことなので、同条の適用はないと考えられる。
  (2) 相続債務について
   包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する(民法990条)ことか
ら、相続人と同様、相続債務を承継することになる。特定受遺者は、積極
財産の取得のみに止まり、債務を承継することはない。
 2 所得税(譲渡所得)関係
   ただし、(学)B学園は公益法人であるから、措置法40条の承認要件を
  満たせば被相続人甲に対する所得税は非課税となる。
 (注) 仮に措置法40条の適用がない場合は、被相続人甲に対してみなし譲渡所得の課税が行われるが、この場合、その所得税額は相続税の債務控除の対象となる。
 3 法人税関係
   (学)B学園が遺贈により取得した財産については法人税が課税されないこととなる。

質 問
  被相続人甲は、次のとおり遺言を残し、平成28年5月に死亡した。この場合、相続人及び受遺者に対する相続税、所得税及び法人税の課税関係はどのようになるのか。
 【遺言の要旨】
  乙、丙及びAは、後記1、2の財産を換価し、他の財産と合計したところで次のとおり分配する。
  (財産取得者)
  乙(長男・包括受遺者)には、5分の2
  丙(次男・包括受遺者には、5分の2
  A(知人・特定受遺者)には、5分の1
  (財産内訳)
  1 不動産・・・宅地300㎡、建物200㎡
  2 上場株式・・・B社株式、10,000株
3 現金預金・・・5,000万円
  なお、相続人は、乙、丙のみであり、財産の換価及びその換価処分の代金の分配は、遺言どおり行われた。
  また、遺言により上記1,2の財産の換価が遺言執行者により行われた場合には、課税関係が異なるか。
  回 答
 1 相続税関係
    相続人乙、丙及び受遺者Aが取得した換価前の財産について、相続税が
課税される。
    換価前の財産の相続税評価額による。
2 所得税(譲渡所得)関係
   不動産及び株式の換価処分に係る譲渡所得は、乙、丙及びAに対して分
配された価額の割合に応じて課税される。
検 討
 1 相続税について
  (2) 法律面からの検討
   ② 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有することから、換価処分等に関しては相続人と同一の法律効果が包括受遺者に帰属し、相続税、譲渡所得の課税関係も相続人と同一になると考えられる。
③ 相続または包括遺贈があった場合、被相続人の財産(換価処分前)は
 相続開始と同時に相続人又は包括受遺者に移転する(物件的効力)と考
えられる。
 
 
【総  評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやすい論点を再確認していただきたい意図からです。
特に相続における包括受遺者、特定受遺者其々の立場の違いは注意が必要です。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
posted by 7に縁がある税理士 at 00:30| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

 (税理士会員相談室)
 <<資産税>>
  質 問
  被相続人甲は、次のとおり遺言を残し、平成28年5月に死亡した。この場合、相続人及び受遺者に対する相続税、所得税及び法人税の課税関係はどのようになるのか。
 【遺言の要旨】
  甲は、後記の財産を相続人及び知人A,学校法人B学園に対し次のとおり遺贈する。
 (財産取得者)
 乙(妻・包括受遺者)・・・b地を除く全財産の2分の1
 丙(長男・包括受遺者)・・・a地、建物の2分の1
 A(知人・特定受遺者)・・・現金預金の2分の1
 (学)B学園(甲等との関係はない。特定受遺者)・・・b地全部
 (財産内訳)
 1 不動産・・a地400㎡、b地300㎡、建物200㎡
 2 現金預金・・300万円
 なお、相続債務は、借入金500万円があった。
  回 答
 1 相続税関係
  (1) 相続人乙、丙及び受遺者Aが取得した財産については、相続税が課税される。
  (2)  (学)B学園は、公益法人ではあるが法人にかわりにないから、原則として、相続税は課税されない。ただし、相続税法66条4項の適用がある場合は、相続税が課税される。

 2 所得税(譲渡所得)関係
  (学)B学園への遺贈については、被相続人甲に対し原則として、所得税法
59条1項の規定により所得税(譲渡所得)が課税される。ただし、措置法40
条の適用がある場合には、所得税(譲渡所得)は非課税となる。
 3 法人税関係
   公益法人が遺贈により取得した財産については、法人税の課税は、行われない。
  検 討
 1 相続税関係
  (1) 課税財産について
   なお、事例の(学)B学園については、遺言者及びその親族等と何らの関係もないとのことなので、同条の適用はないと考えられる。
  (2) 相続債務について
   包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する(民法990条)ことか
ら、相続人と同様、相続債務を承継することになる。特定受遺者は、積極
財産の取得のみに止まり、債務を承継することはない。
 2 所得税(譲渡所得)関係
   ただし、(学)B学園は公益法人であるから、措置法40条の承認要件を
  満たせば被相続人甲に対する所得税は非課税となる。
 (注) 仮に措置法40条の適用がない場合は、被相続人甲に対してみなし譲渡所得の課税が行われるが、この場合、その所得税額は相続税の債務控除の対象となる。
 3 法人税関係
   (学)B学園が遺贈により取得した財産については法人税が課税されないこととなる。

質 問
  被相続人甲は、次のとおり遺言を残し、平成28年5月に死亡した。この場合、相続人及び受遺者に対する相続税、所得税及び法人税の課税関係はどのようになるのか。
 【遺言の要旨】
  乙、丙及びAは、後記1、2の財産を換価し、他の財産と合計したところで次のとおり分配する。
  (財産取得者)
  乙(長男・包括受遺者)には、5分の2
  丙(次男・包括受遺者には、5分の2
  A(知人・特定受遺者)には、5分の1
  (財産内訳)
  1 不動産・・・宅地300㎡、建物200㎡
  2 上場株式・・・B社株式、10,000株
3 現金預金・・・5,000万円
  なお、相続人は、乙、丙のみであり、財産の換価及びその換価処分の代金の分配は、遺言どおり行われた。
  また、遺言により上記1,2の財産の換価が遺言執行者により行われた場合には、課税関係が異なるか。
  回 答
 1 相続税関係
    相続人乙、丙及び受遺者Aが取得した換価前の財産について、相続税が
課税される。
    換価前の財産の相続税評価額による。
2 所得税(譲渡所得)関係
   不動産及び株式の換価処分に係る譲渡所得は、乙、丙及びAに対して分
配された価額の割合に応じて課税される。
検 討
 1 相続税について
  (2) 法律面からの検討
   ② 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有することから、換価処分等に関しては相続人と同一の法律効果が包括受遺者に帰属し、相続税、譲渡所得の課税関係も相続人と同一になると考えられる。
③ 相続または包括遺贈があった場合、被相続人の財産(換価処分前)は
 相続開始と同時に相続人又は包括受遺者に移転する(物件的効力)と考
えられる。
 
 
【総  評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやすい論点を再確認していただきたい意図からです。
特に相続における包括受遺者、特定受遺者其々の立場の違いは注意が必要です。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
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