2019年05月29日

【平成31年度税制改正に関する建議書】

■消費税における単一税率及び請求書等保存方式の維持■
 日税連は、これまでも単一税率制度の維持を強く主張してきたが、税率の引き上げが目前に迫る中、平成31年度税制改正が軽減税率制度を撤回することのできる事実上最後の機会であると考え、建議書においては重要建議項目の最初に据えることとした。

(1)単一税率制度の維持
   軽減税率制度には次のような問題がある。
  ・区分経理等により事業者の事務負担が増加する
  ・逆進性対策として非効率であるうえに、財政が毀損し社会保障給付の抑制が必要になる
  ・簡易課税制度が複雑な制度となる
  ・軽減税率適用に関する訴訟等が増加する
   特に、事業者の事務負担の増加は軽視できない問題である。
  例えば、国税庁は「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」
(平成29年1月改訂)及び「同(個別事例編)」(同)を公表しているが、事業者には、こうした項目の一つ一つに適切に対応することが求められてい
るが、その一つ一つに膨大な事務負担を強いられることになる。
 こうした観点から、日税連は低所得者対策の代替案として、あらかじめ国が一定額を入金したプリペイドカードを配付する方法や、一定額の簡素な給付措置を提言した。プリペイドカードによる方法は、購入時にカードをレジにかざすなどし、軽減税率対象品の場合、標準税率と軽減税率の差に相当する消費税額がカードから引かれる仕組みである。
また、簡素な給付措置は、平成26年4月の消費税率8%への引き上げによる影響を緩和するため、低所得者に対する暫定的措置として導入された
「臨時福祉給付金」のような仕組みである。
 いずれの措置も、低所得者へのピンポイントの給付が可能である点において、軽減税率制度より優れているといえる。
  (2)請求書等保存方式の維持
    適格請求書等保存方式の導入は、平成35年10月からであるが、平成31年10月からは、区分記載請求書等保存方式が導入される予定であ
る。換言すれば、もし軽減税率制度が導入されない場合であっても、現状では適格請求書等保存方式は導入されることとなる。
適格請求書等保存方式にも、次のような問題がある。
・事業者及び税務官公署の事務に多大な影響を与える
・名目GDP600兆円に向けた成長戦略、行政手続コスト(事業者の作業時間)20%の削減目標を掲げる国の方針に反する
・税務官公署においては、実調率の低下が顕著である中、さらなる負担
を強いることとなり、適正課税が脅かされる
特に事務負担の増加は、事業者だけにとどまらず、行政コストにもその影響が及ぶため、日本経済への影響が懸念される。
 こうした観点から、日税連は、現行の請求書等保存方式の維持を主張するとともに、軽減税率制度への対応として、区分経理等に関しては、
現行の請求書等保存方式に一定の記載事項を追加することを提言した。
 (3)消費税制の抜本的見直し
    適格請求書等保存方式のもう一つの問題は、免税事業者が取引から排除される恐れがあることである。日税連は、その検討に当たっては、特にこの「免税事業者の排除問題」への措置を講じるよう主張した。
なお、具体的な見直しの方向性として、「基準期間制度を廃止し、すべての事業者を課税事業者として取り扱い、新たに小規模事業者に対す
る申告不要制度を創設すること」を別途項目で提言している。

■所得控除の抜本的見直し■
 
 (1)人的控除
    人的控除は、所得のうちそこまでは課税されない課税最低限を構成するものである。このため、人的控除は租税法における憲法25条の生存権保障の現れであると解されている。
したがって、給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であることや、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ検討していくことが必要である。
 給与所得控除は、「勤務費用の概算経費」と「他の所得との負担調整」からなるとされているが、他の所得との負担調整の意義や給与所得と事業所得を明確に分ける意義は薄れているといえる。
 公的年金等への課税は、拠出時に社会保険料控除として全額控除され、給付時に課税される仕組みとなっている。その上、給付時には公的年金等控除が適用され、実質的に非課税に近い課税制度となっている。したがって、公的年金等控除の見直しについても検討すべきである。
 以上のことより、給与所得控除や公的年金等控除の所得計算上の控除を縮減した上で、人的控除を中心として課税最低限を確保することが適切である。現行の所得の種類ごとの負担調整、すなわち所得計算上の控除を縮減し、人的な事情による負担調整である人的控除を拡充することにより、課税最低限を確保する税制の構築を検討すべきである。
 (2)税額控除化の検討
    現行の所得控除方式は、適用税率の高い高所得者に有利な制度であり、所得金額により税負担の軽減効果に差異が生じている。そこで、人的控除などについては、【図2】に示す通り、一定の所得金額に最低税率を乗じた金額を税額から控除する「税額控除方式」や、一定の所得金額までの税率をゼロとする「ゼロ税率方式」への変更を検討すべきである。

■中小法人に対する繰越欠損金控除制限及び外形標準課税の不適用■

(1) 繰越欠損金の100%控除制度の維持
中小法人は、大法人と比べ財務基盤も弱く、繰越欠損金に控除制限を設けると、中小法人の資金繰りを圧迫することになる。また、中小
法人は、大法人と比べ業績回復には相当な期間を要する場合が多い。したがって、中小法人に対しては現行の繰越欠損金の100%控除
制度を維持すべきである。
  (2)中小法人への外形標準課税の不適用
中小法人の雇用の確保と資金繰り悪化を防ぐためだけでなく、地方創生の観点からも、中小法人には法人事業税の外形標準課税を適用すべきでない。

■償却資産に係る固定資産税の抜本的見直し■

(1)償却資産に係る固定資産税の位置づけ 
     税収規模は約1兆6000億円であり、地方財政における安定した基幹税の一つとなっている。
    また、平成28年度与党税制改正大綱では「償却資産に対する固定資産税の制度は堅持する」とされている。
(2)税制審議会の答申
平成28年度は、諮問「償却資産に係る固定資産税制度のあり方について」に対して答申があった。
答申では、
① 業種間で税負担が偏在している
② 市町村の執行体制と課税客体の補足が十分でない
③ 事業者の事務負担が煩雑である
等の問題点が指摘されている。
答申は、それらの問題点を踏まえて提言を行っており、その内容を要約したものが建議項目となっている。
(3)建議項目の概要
①将来的には廃止
     建議書では、国際競争力の観点からも将来的には廃止を検討すべきであるとしている。
②解決案の提示
・償却資産税を固定資産税とは異なる新たな税目とすること 
・賦課期日を法人の決算日とすること
・申告期限を所得税及び法人税の申告期限と一致させること
・将来的にe-TaxとeLTAXを連携又は統一することにより税額確定方式を申告納税方式に変更すること
・設備投資の促進を税制で一層支援し、さらに小規模事業者の事務負担を軽減するために、免税点を300万円(現行150万円)程度に引き上げること
・申告業務の簡素化のため、国税の課税標準の計算方法との整合性を図ること

■個人事業者番号の導入■

(1)現行制度の問題点
法人番号の利用により、当事者は経済的なメリットを享受することができる。これに対して、個人番号はその取り扱いが法令で限定されてい
るため、個人事業者等には取引の際に自由に利用できる「番号」が存在しない。すなわち、個人事業者は、法人番号が有する経済的なメリット
を享受できない。
(2)個人事業者番号の導入 
個人事業者等について、法人番号と同様に運用上の制限が少ない「個人事業者番号」を導入し、その付番を選択的に受けられるようにする必
要があるとしている。
この結果、法人の番号は法人番号に統一され、個人番号は個人の税・社会保障・災害対策のみに利用され、「個人事業者番号」は個人事業者
等が経済活動をする際に広く用いられることとなり、新たな価値の創出につながることが期待される。
 なお、消費税における適格請求書発行事業者の登録に関連して、建議書は、法人番号及び「個人事業者番号」の活用を検討すべきであるとし
ている。


【総  評】
前回に引き続き、日本税理士会連合会が取りまとめた平成31年度税制改正に関する建議書について取り上げたのは、今年12月に提出される自民党政権下での平成30年度税制改正にどこまでこの建議書が取り込まれているかの確認の意味での意図からです。

特に同意を示したのが、下記事項です。
(1)単一税率制度の維持
   軽減税率制度には次のような問題がある。
  ・区分経理等により事業者の事務負担が増加する
  ・逆進性対策として非効率であるうえに、財政が毀損し社会保障給付の抑制が必要になる
  ・簡易課税制度が複雑な制度となる
  ・軽減税率適用に関する訴訟等が増加する
   特に、事業者の事務負担の増加は軽視できない問題である。
  例えば、国税庁は「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」
(平成29年1月改訂)及び「同(個別事例編)」(同)を公表しているが、事業者には、こうした項目の一つ一つに適切に対応することが求められてい
るが、その一つ一つに膨大な事務負担を強いられることになる。
 こうした観点から、日税連は低所得者対策の代替案として、あらかじめ国が一定額を入金したプリペイドカードを配付する方法や、一定額の簡素な給付措置を提言した。プリペイドカードによる方法は、購入時にカードをレジにかざすなどし、軽減税率対象品の場合、標準税率と軽減税率の差に相当する消費税額がカードから引かれる仕組みである。
また、簡素な給付措置は、平成26年4月の消費税率8%への引き上げによる影響を緩和するため、低所得者に対する暫定的措置として導入された
「臨時福祉給付金」のような仕組みである。
 いずれの措置も、低所得者へのピンポイントの給付が可能である点において、軽減税率制度より優れているといえる。

このまま消費税における事務負担が増えたことを理由に、弊事務所のような税理士事務所からの税理士報酬を増加させることを顧問先様等へ御理解いただくのは難しく、徒に税務リスクを同時に増加させるか、一旦期限内に申告して、5年内に更正の請求で還付申告を行うかしないと、納税者の税負担のバランスを保てなくなる恐れがあります。
いずれにも得のない改正のように映ります。

しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
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2019年05月28日

【平成31年度税制改正に関する建議書】

■Ⅰ 税制に対する基本的な視点■

(1)公平な税負担
 納税者が負担能力に応じて分かち合うという意味で公平には、水平的公平、垂直的公平とともに世代間の公平の問題があり、それらが相互に補完し合うバランスのとれた税制を構築していく必要がある。
(2)理解と納得のできる税制
 租税制度は納税者が理解できるものであり、また、その目的や内容についても納得できるものである必要がある。
(3)適正な事務負担
 納税者に求められる事務負担は過度なものであってはならず、必要かつ最小限になるように配慮されるべきである。また、適正な事務負担は、税務行政においても考慮する必要がある。
(4)時代に適合する税制
 税制を常に時代に適合するものとすべく、その見直しを継続しなければならない。
(5)透明な税務行政
 公平な税負担の確保と申告納税制度を維持・発展させるためには必要不可欠であり、納税者からさらなる信頼を得るための施策を行っていく努力が求められる。

■Ⅱ 本建議書における重要県議項目■

1 消費税における単一税率及び請求書等保存方式の維持について
  事業者の事務負担が増加すること等の理由から、日本税理士会連合会は、単一税率制度の維持を強く主張しており、平成35年10月に導入予定の区分経理等のための適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)への移行については、例えば、請求書等に一定の記載事項を追加することにより、区分経理等は十分可能であるとも考えられる。
  事業者の負担と徴税コスト等を考慮し、仕入税額控除方式(インボイス方式を含む。)及び免税点制度等の見直しを含めた消費税制のあり方について抜本的に再検討すべきである。
2 所得控除の抜本的見直しについて
 (1)人的控除
給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であることや、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除を縮減した上で、人的控除を中心として課税最低限を確保することが適切である。
 (2)税額控除化の検討
  所得控除の一部については、すべての納税者が一定額まで同一の軽減効果が得られる税額控除方式又はゼロ税率方式(一定の課税所得まで税率をゼロとする方式)への変更を検討すべきである。
3 中小法人に対する繰越欠損金控除制限及び外形標準課税の不適用について
(1) 繰越欠損金の100%控除制度の維持
中小法人は、大法人と比較して事業基盤の弱い法人が多く、控除制限により資金繰りを圧迫することとなる。業績回復の阻害要因とならないように、中小法人に対しては現行の繰越欠損金の100%控除制度を維持すべきである。
(2) 中小法人への外形標準課税の不適用
中小法人の雇用確保と資金繰りの悪化を防ぐためだけでなく、地方創生の観点からも、中小法人には法人事業税の外形標準課税を適用すべきではない。
4 償却資産に係る固定資産税の抜本的見直しについて
  償却資産に係る固定資産税を固定資産税とは異なる新たな税目とすること、賦課期日を法人の決算日とすること、申告期限を所得税及び法人税の申告期限と一致させること、将来的にe-TaxとeLTAXを連携又は統一することにより税額確定方式を申告納税方式に変更することなど、抜本的改革の検討をすべきである。
  なお、その際には、設備投資の促進を税制で一層支援し、さらに小規模事業者の事務負担を軽減するために、免税点を300万円(現行150万円)程度に引き上げるべきである。あわせて、申告業務の簡素化のため、減価償却制度における残存価額の廃止、租税特別措置法における30万円未満の少額資産の費用化等、税率の見直しなど、国税の課税標準の計算方法との整合性を図るべきである。
 5 個人事業者番号の導入について
  個人事業者等について、法人番号と同様に運用上の制限が少ない「個人事業者番号」を導入し、その付番を選択的に受けられるようにする必要がある。この結果、法人の番号は法人番号に統一化され、個人番号は個人の税・社会保障・災害対策のみに利用され、「個人事業者番号」は個人事業者等が経済活動をする際に広く用いられることとなる。

■Ⅲ 今後の税制改正についての基本的な考え方■

【所得税】
 さらなる就労促進と所得再分配機能の回復の観点から、所得税制を抜本的に改正すべきである。その際には、所得控除と税額控除・ゼロ税率の役割を整理し、所得水準にかかわらず一定の税負担の軽減がなされ、かつ、徴税コストの少ない制度の導入を検討すべきである。
 また、所得の種類に関係なく課税最低限を設定できる所得控除や税額控除などによることが望ましい。
【中小法人税制】
 具体的な税制改正に際しては、個人と法人の課税制度の相違を前提にした上で、総合的に検討し、公平・中立・簡素な制度とすべきである。
また、資本金基準や所得金額のほか従業員数など他の指標を組み合わせることが適当である。 
【法人税】
 法人税制の改正に当たっては、税率の引下げと課税ベースのトレードオフによる財源確保の視点よりも、適正な課税ベースの構築と確定決算主義の維持を基本に据えて検討すべきである。主として財源確保上の要請から措置された規定等については、その効果や妥当性も考慮した上で、早急に見直す必要がある。
【消費税】
  これからの我が国の社会保障4経費(年金、医療、介護、子育て)を支えるのは、消費税である。
 日本税理士会連合会は、概ね次のような姿をあるべき消費税制と考えている。
①単一税率制度が望ましい。
②仕入税額控除方式としては、請求書・領収書等に事業者番号(法人は法人番号、個人は新たに定める個人事業者番号)を記載することを仕入税額控除の要件の一つとする。
③基準期間制度を廃止してすべての事業者を課税事業者とし、その課税期間の課税売上が少額である一定の事業者には、その旨の届出書の提出を要件として、申告を不要とする申告不要制度の採用と、免税事業者であっても仕入税額控除の要件を満たした請求書等の交付を可能とすることで、いわゆる「免税事業者の排除問題」は解決する。
④簡易課税制度については、みなし仕入れ率を引き下げた上で設備投資に係る仕入税額控除を認め、一定の要件を付した上でその課税期間に係る諸届けの提出時期を申告期限までとする。
⑤課税ベースを狭めることとなる非課税の範囲を縮小する。
【相続税・贈与税】
 平成27年から施行されている相続税の基礎控除の引下げ等による課税ベースの拡大は、資産格差を是正し、財源調達機能を回復させるための施策ではあるが、相続税の申告件数が大幅に増加し、これに伴い延納及び物納の申請も増加することが見込まれていることから、延納及び物納の手続きを一層周知することが必要であるとともに、各種書類の提出期限や不足資料等の補完期限の延長についても検討すべきである。
 贈与税については、高齢者世代から若年世代への資産移転を通じて経済の活性化を図るという社会的要請を受けて、相続税の補完税としての性格を維持しつつ、その負担軽減を図ることを検討する必要がある。そのためには、より広く世代間の資産移転を促進するために基礎控除の拡大や税率構造の見直しを行うべきである。
【地方税】
  地方行政の役割が一層高まっている。税源の偏在性が少ない地方税制を構築する必要がある。
 法人事業税の外形標準課税の適用対象法人のあり方については、引き続き慎重に検討を行うこととされている。しかし、大法人向けの外形標準課税の拡大は必要であるが、中小法人については適用すべきでない。
 土地に対する固定資産税については、負担調整措置等の廃止を視野に入れた検討をすべきである。
 【納税環境整備・その他】
1 国税通則法等
 税務調査手続きをはじめ各種手続きに係る国税通則法の改正が行われ、法令解釈通達、事務運営指針及びFAQが公表の趣旨を包摂した納税者憲章を制定するとともに、国税通則法第1条(目的)に「納税者の権利利益の保護に資する」旨の文言を追加すべきである。
2 閲覧サービス
 適正申告のための納税環境整備の観点から、提出された申告書等の閲覧及びコピーの交付等(カメラ撮影およびスキャナによる読み取り)に係る手続を緩和し、基本的な事項については国税通則法に規定すべきである。
3 社会保障・税一体改革に伴う見直し
社会保障・税一体改革に際しては、社会保険料と所得税・住民税の負担のバランス等を考慮し、負担割合及び負担の連続性等について見直す必要がある。
4 公会計制度
 国及び地方公共団体の財政状態や、行政コストの内容等を容易に把握するため、「国の財務書類」がより一層活用されるように取り組むことが必要である。
5 成年後見制度等への対応
関連する税制及び税務上の取扱い等について継続して見直すことが必要である。
【国際税制】
 中小法人の国外取引活動を支援する措置の検討や未決済デリバティブ取引に係る税務の取扱い等の見直しをするとともに、個人の資産税分野における課税の公平を確保するための執行体制の一層の整備が必要である。  
 二重非課税については国際的に対処し、不正な資産隠しに対しては国際的な課税ルールを構築することが必要である。
 移転価格税制については、事前確認と相互協議(我が国の税務行政庁と海外子会社所在国の税務行政庁の間で国家間協議)の一層の迅速化と予見可能性を高めることが必要である。
【災害対応税制】
 恒久法として「災害税制に関する基本法」を立法化すべきであると要望してきた。


【総  評】
今回、日本税理士会連合会が取りまとめた平成30年度税制改正に関する建議書について取り上げたのは、今年12月に提出される自民党政権下での平成31年度税制改正にどこまでこの建議書が取り込まれているかの確認の意味での意図からです。

例年からの内容が盛り込まれておりましたが、消費税率の引上げに伴う低所得者層への負担増いわゆる逆進性への対応策として軽減税率の今後の導入の行方が気になりました。日本税理士会連合会がいうように、大部分は低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税率となる恐れがあり、今問題となっている年金以上に支給している生活保護の支給に近い状況が起こるのではないかと思われます。
今まで若いころに一生懸命に働き、掛けてきた年金を、定年を迎えた老後に支給できるようにしたはずです。ところが今は大変不景気で、病気やけがのため、失業したわけではなく、勤め先が倒産したがために、本人は働く気が合っても、再就職先が見つからず、比較的若いころから生活保護を支給されるようになってしまっています。

日本は「皆平等」「弱者救済」「困ったときはお互い様」の精神が昔からあります。ただ、それを行き届かせることにこだわると、税収増が思ったほど見込めず、国及び地方の借金が一向に減らないのではないでしょうか。

しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。


posted by 7に縁がある税理士 at 23:37| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

 (税理士会員相談室)
 <<消費税>>
● 販売用の住宅を一時的に賃貸した場合の個別対応方式による仕入税額控除
  質 問
  不動産業を営むA社は、販売目的で分譲マンションを取得したが、資金繰りその他の事情を考慮し、一時的に居住用として賃貸することとなった。この場合において、建物の取得費は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して仕入税額控除を計算することができるか。
  回 答
  課税仕入れを行った日(建物取得時)の目的が「販売用」であり、建物取得時点で非課税となる家賃収入が発生する予定がなかったことから、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して問題ないものと思われる。
  検 討
  質問の事例では、建物取得時の用途が販売用であるから、これを一時的に賃貸したとしても、その賃貸により発生する家賃収入(非課税)は、課税仕入の用途区分に影響しないものと考えるべきである。
なお、一時的な目的変更とはいえ、販売目的から賃貸用に変化しているため、後日説明を求められることも考えられる。そのため、法人内部の稟議書等で、取得後の一時的な賃貸その他の経緯を整理しておくと有効である。

● 賃貸中の中古マンションを取得した場合の個別対応方式による仕入税額控除
質 問
不動産業を営むB社は、住宅として賃貸中の中古マンションを、買手を先に確保した上、転売目的で賃借人付きで丸ごと取得したが、買手の資金の都合により、実際の売却は決算をまたいで10ヶ月後となった。この場合において、建物の取得費は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して仕入税額控除を計算することができるか。
 なお、当該土地建物の保有期間中の家賃収入は、当社の収益として計上しているが、建物部分についての減価償却費は計上せず、決算書には取得した土地建物を「商品」として表示する予定である。 
回 答
  本件中古マンションの取得の目的は転売にあることから、最終的に課税売上げが発生することは明らかである。ただし、建物の取得時点で入居者がいることから、最終目的が中古マンションの転売ということであっても、転売までの間、非課税となる家賃収入が発生していることも事実である。したがって、本件建物の取得は、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入に区分せざるを得ないものと思われる。
検 討
  賃借人と買手を含めた三者間の協議により、1か月未満の短期家賃については買手に帰属するなどの取り決めをした場合には、消費税における課税仕入れの用途区分は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分することが認められ、法人税においても寄付金認定などはなく、家賃収入は買手に帰属させることができるものと思われる。
 上述のように非課税収入の収受権を転売先に帰属させることで、「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」から「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に用途区分を転換させるなどの工夫も必要になるものと思われる。

● 用途を変更した場合の修正申告の是非
質 問
不動産業を営むC社は、前事業年度末に貸ビルを建築するための敷地を購入し、仲介手数料を支払っている。当該前事業年度に係る消費税の確定申告では、個別対応方式を採用し、仲介手数料は、ビルの家賃収入(課税)に対応するものとして、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分している。
当初計画をしていた建物の建築がかなわず、不採算となることが判明した。そのため、やむなく当該土地を更地のまま転売することとなった。
この場合において、前期の消費税の確定申告で、全額を仕入税額控除の対象とした仲介手数料について、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」に用途区分を変更した上で、修正申告をする必要があるか。
回 答
  質問の事例では、仲介手数料支払時の用途が貸ビルを建築するための敷地の取得に係るものであるから、その後に土地の用途が変更になったとしても、当初の用途区分を変更し、修正申告をする必要はない。
検 討
 本件の場合、賃貸ビル建設の計画から販売へと方向転換に至った理由から、用途区分の変更が後発的な事象に基因するため、修正申告の必要性は存しない。そこで、後日その状況の客観性を主張する場面を想定し、販売への用途区分の変更経緯を整理しておくと有効である。
 なお、土地を購入した場合に支払う仲介手数料や土地造成費は、その土地の用途に応じて次のように区分することになる。

【仲介手数料等の課税仕入れの用途区分の判定】
利用方法          課税仕入れの用途区分
課税資産の    その他の資産    共通して
譲渡等にのみ   の譲渡等にのみ   要するもの
要するもの     要するもの
 ①販売用の          土地の売上高に直接
 土地の場合          対応するもの

 ②購入した 建物の売上げに            土地の売上げと
 土地の上に 直結する建物の            建物の売上げに
 建物を建て、建築費                対するもの
 分譲住宅と
 して販売
 する場合
 
 ③購入した          ・住宅家賃収入に
 土地の上に          直接対応するもの
 建物を建て、         ・建物の建築費
 賃貸住宅と
 して貸付け
 る場合

 ④購入した ・住宅以外の
 土地の上に 家賃収入に直接
 建物を建て、対応するもの         
 店舗として ・建物の建築費
貸付ける場合

 ⑤用途未確定                    売上げと明確な
 の場合                       対応関係のない
                           もの


● 建物の建替えに伴う立退料の取扱い
質 問
  当社は画材関連品の小売業を営んでいるが、従来(20年以上前)から賃借していた店舗用建物の建替えに伴い、立退きの要求を受けた。
 当社としては、立地条件や同業者の減少等により、安定した売り上げが得られていたこともあり、その補てん分としての立退料を要求したところ、600万円の支払いを受けることになった。
 この場合、受け取った立退料について、消費税の課税対象となるのか。
回 答
 原則として、課税対象外取引となるため、消費税の課税対象とはならない。
検 討
 現実問題として、立退料が支払われる場合に、それらが明確に区分されて支払われることはほとんどなく、その判断が困難であることから、次の通達が設けられている。
(建物賃貸借契約の解除に伴う立退料の取扱い)
 消基通5-2-7
  建物等の賃借人が賃貸借の目的とされている建物等の契約の解除に伴い賃借人から収受する立退料(不動産業者等の仲介を行うものを経由して収受する場合を含む。)は、賃貸借の権利が消滅することに対する補償、営業上の損失又は移転等に要する実費補償などに伴い収受されるものであり、資産の譲渡等の対価に該当しない。
(注) 建物等の賃借人たる地位を賃借人以外の第三者に譲渡し、その対価を立退き料等として収受したとしても、これらは建物等の賃借権の譲渡に係る対価として受領されるものであり、資産の譲渡等の対価に該当することになるのであるから留意する。
  ここで留意したいのは、通達の注書きの意味である。
   具体例としては、銀座で飲食店(クラブ)を営む法人が、オーナーの了解のもとに、「建物賃借権」として第三者に譲渡するケースは、資産の譲渡であることから、課税対象取引として取り扱われることになる。


【総  評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやすい論点を再確認していただきたい意図からです。
共通して「用途区分を変更」した場合における質問・回答が目に付きました。消費税申告における個別対応方式を採用した場合の3種類の課税仕入れの用途区分も表にしてみました。これは課税売上割合が95%未満の場合、採用されるもので、他に一括比例配分方式があります。
また、余談ですが、平成27年4月1日以後に開始する課税期間から消費税の簡易課税制度におけるみなし仕入率がそれまでの90~50%の刻みだったのが、90~40%の刻みになりました。特に、第四種事業の金融業及び保険業が60%から50%に、第五種事業の不動産業が50%から40%に変更になりましたので、御留意下さいませ。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
posted by 7に縁がある税理士 at 23:29| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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