2019年05月29日

令和1年 税務相談室に寄せられた相談事例

■相談事例Q&A■

<<法人税>>
リース資産の消費税の仕入税額控除の時期
【質問】
 6 月決算法人の中小企業Aですが、30 年 6 月にリース資産の引き渡しを受け 6 月分リース料を支払いました。事業の用に供したのは 7 月(翌期)です。
消費税の仕入税額控除は事業の用に供した翌期に行うのでしょうか。
【回答】
 原則として、当該資産の引き渡しを受けた事業年度にその全額を仕入控除 することになります。
なお、中小企業の特例として、リース賃料を賃借料処理している場合に は、消費税の仕入税額控除はリース賃料を支払うべき日の属する事業年度 で分割控除することも認められています。

リース資産の減価償却費の計上時期
【質問】
 6 月決算法人の中小企業Aですが、リース期間定額法で償却費を計上する場合と、リース賃料を償却費とする場合の税務上の処理はどうなります か。
【回答】
リース期間定額法で償却費を計上する場合には、当期においては未だ事業の用に供していませんので減価償却費の計上はできません。
当期に支払ったリース賃料を損金処理すると、その額は償却超過額となります。
ただし大会社等はリース賃料の総額が 300 万円を超える場合は、リース会計基準により賃借料処理は認められていません。

 リース資産の据付費の取り扱い
【質問】
 機械をリースして、その据付費は別に支払いました。この据付費はリース 資産の取得費となるのでしょうか。それとも繰延資産になるのでしょう か。
【回答】
 1 機械のリースが税務上のリース取引に該当する場合 据付費はリース資産の取得費となります。 据付費部分について一括損金計上したとき
  は償却費として損金経理した ものとされ、償却超過額となります。
 2 機械のリースが税務上のリース取引に該当しない場合 リース資産の据付費は、資産を貸借するための権利金等に該当し、繰延 資産として
  扱うことになります。

<<所得税>>
 開業前の借入金の利子の取り扱い
【質問】
 個人の医者が、病院を開業するに当たって土地建物を取得します。
 この土地と建物の購入資金は、ほとんど借入金です。開業前の借入金利子 を「開業費」として繰延資産に計上することは可能ですか。
【回答】
 開業前の固定資産取得のための借入金の利子等は当該固定資産の取得価格 に算入します。
 また、建物の減価償却は、竣工した時からではなく、医院としての事業開 始時より行うこととなります。

 相続人全員が相続放棄した場合の準確定申告
【質問】
 相続人全員が相続放棄した場合、誰が準確定申告をしなければならないの ですか。それとも相続財産法人の残余財産はいずれ国庫に帰属す
 ることから申告しなくてもよいのですか。
【回答】
 所得税法上、相続人には包括受遺者も含むものとされているため、たとえ相続人がいない場合でも包括受遺者がいれば、そのものが確定申告
 書を提出することとなります。
 民法上の相続人も包括受遺者もいない場合には、相続財産は、「相続財産法人」となり、選任された相続財産法人の管理人が相続財産の管理を
 行い ますが、この相続財産法人に関しては所得税法上何ら規定がありません。
 納付義務の履行については、申告納税方式を原則とする所得税について、相続財産法人が準確定申告する義務もあることになります。
 その場合の申告期限については、管理人が確定した日(家庭裁判所から管理人に通知された日)の翌日から 4 カ月を経過した日の前日までに行
 うこととなると思われます。 国庫への帰属よりも国税の納税義務の履行が先順位となります。

 賃貸人が支払った立退料
【質問】
 不動産の賃貸を行っている個人ですが、この賃貸している土地、建物を譲渡することとなり、入居者を立ち退かせるために立退料を支払いま
 した。
 支払った立退料は不動産所得の必要経費として控除してよいでしょうか。
【回答】
 1 建物の譲渡に際し支払う立退料・・・譲渡費用
 2 土地を譲渡するために建物を取り壊し、その取り壊しに際し支払う立退料・・・土地の譲渡費用
 3 賃貸中の建物の貸借人に支払う立退料 1,2以外の不動産所得の基因となっていた建物の貸借人に支払うも の・・・不動産所得の必要
  経費

<<相続税>>
 相続時精算課税制度による贈与と相続税の申告義務
【質問】
 私は、A 資産の贈与を受けた時、相続時精算課税によって申告しました。 今般その贈与者がなくなりました。遺産総額は基礎控除額未満で
 す。相続税の申告は必要ですか。
【回答】
 相続時精算課税の贈与税額があれば還付申告ができます。

 指定受取人以外の者が死亡保険金を受け取った場合
【質問】
 保険金の保険契約者で保険料を負担していた父親が死亡しました。 保険契約上の受取人は息子(19 歳)ですが、実際は母親が受け取っていま  
 す。 母親を保険金受取人として申告すれば、「配偶者の税額軽減」で相続税額は ゼロとなりますがそれでよいですか。
【回答】
 母親が受取人であるとして、「配偶者の税額軽減」を適用することは難しい でしょう。

 相続税の延納申請の承継手続
【質問】
 被相続人に引き続いて申告期限内に相続人(長男)が死亡しました。相続税 の延納申請の承継手続きをしたいのですが、どのような書式になり
 ます か。
【回答】
 相続人の相続人は国税通則法の規定により、相続人の納税義務など税法上 の地位を継承します。 相続人(長男)の相続税申告書の第 1 表の付表
 1(納税義務等の承継に係る明 細書)により承継する延納金額を記載し、延納申請をすればよいものと考 えます。

 遺産分割のやり直しと相続税申告の要否
【質問】
 13 年前に亡くなった母の遺産である不動産について、単独名義の方が管理 上便利であるとの説明を受け、すべて弟(四男)の名義に変更しまし
 た。 我々兄弟 3 人(長男、次男、三男)は、母の遺産の全部を弟が相続すること を認めたわけではありませんでした。相続をやり直すことは可
 能ですか。 相続税に時効はありますか。
【回答】
 相続税には更正決定の除斥期間(いわゆる課税の時効)がありますので、13 年も以前の相続税については今になって弟さんに課税されることは
 ありません。
 ただし、遺産分割のやり直しについては、贈与税が課税になることがあり ますのでご注意ください。

 生命保険契約に関する権利の評価
【質問】
 亡くなった父が契約者(保険料負担者)で、私を被保険者とする生命保険を 契約していました。その生命保険契約の評価について、保険会社に
 照会したところ剰余金の分配等も含まれていました。これも加えて相続財産とするのでしょうか。
【回答】
 生命保険契約に関する権利の計上には、剰余金の分配も含めることとされ ています。

 空屋にしていた土地家屋の小規模宅地の特例の適用の可否
【質問】
 父は娘夫婦の建てた二所帯住宅に平成 19 年から住んでいましたが、平成 20 年 3 月に死亡しました。父が平成 18 年まで住んでいた
 父の土地家屋は 空き家になっていました。相続税の計算上、父の土地は小規模宅地の特例 により 50%減額ができますか。
【回答】
 父の土地家屋は相続の開始の「直前」において父が居住していないので、特例による 50%減額の適用はできないと思われます。

 生計を一にする親族等がいない場合の小規模宅地の特例
【質問】
 相続人の中に配偶者や生計を一にする居住親族がいない場合、自己の土地 家屋を所有していないものが相続した時は小規模宅地の特例の適
 用が可能ですか。
【回答】
 その相続人が、相続開始前 3 年以内に日本国内にある自己又は自己の配偶者の所有にかかる家屋に居住したことがなく、かつ、相続開始時か
 ら申告期限まで引き続きその家屋を所有していれば、特定居住用宅地としての特例適用は可能です。

 期限後申告をした場合の小規模宅地の特例
【質問】
 期限後申告でも、遺産分割が整っていれば、小規模宅地の特例を受けられますか。
【回答】
 相続人についての規定にかなっていれば、小規模宅地の特例を受ける旨を 記載した計算明細書及び、省令で定める書類(戸籍謄本・遺言書の
 写し・ 遺産分割協議書の写し・住民票の写し・戸籍の付表の写し・相続開始前 3 年以内に居住していた家屋がその者又はその者の配偶者の
 ものでないこと が分かる資料等)の添付があれば可能です。

 夫婦間での現金の贈与
【質問】
 妻が夫から 2000 万円の現金贈与を受け、そのまま何もしないで、無税になることがあるのでしょうか。
【回答】
 贈与税の配偶者控除額は 2000 万円ですが、婚姻期間が 20 年以上であること、居住用不動産の取得とその家屋に居住すること、申告書を提出
 することが要件です。
 相続時精算課税制度では配偶者は受贈者の範囲から除外されています。贈与税の基礎控除額は 110 万円ですから、現金の贈与を受け手続きも
 しないで無税になることはありません。

 離婚による財産分与の限度額
【質問】
 離婚により妻が夫から財産分与として居宅(一般的な規模)を取得しましたが、贈与税が課税されない財産分与の限度額はあるのでしょうか。 【回答】
 財産分与額について、特に定められた限度額はありません。


【総 評】
 今回は税務相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落 としやすい論点を再確認していただきたい意図からです。 特に
 相続における小規模宅地の特例、贈与等は注意が必要です。
 しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
posted by 7に縁がある税理士 at 17:17| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

「平成 31 年度税制改正大綱」~第二 平成 31 年度税制改正の具体的内容 ~

第二 平成 31 年度税制改正の具体的内容

五 国際課税
1 過大支払利子税制の見直し
2 移転価格税制の見直し
3 外国子会社合算税制の見直し
4 平成 32 年(令和 2 年)に開催される東京オリンピック競技大会又は東京パラリンピック競技大会に参加等をする非居住者及び外国法人に係る課
 税の特例の創設
5 台湾との間での金融口座情報の自動的な提供のための報告制度等の整備
6 その他

六 納税環境整備
1 番号が付された証券口座情報の効率的な利用に係る措置
2 情報照会手続の整備
3 eLTAX 障害発生時の申告等に係る期限延長
4 大法人の電子申告の義務化に伴う所要の措置
5 その他

七 関税
1 暫定税率の適用期限の延長等
2 個別品目の関税率等の見直し
3 その他

第三 検討事項

1 年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する 中で、世代間及び世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公
 的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバラ ンス、貯蓄・投資商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留
 意するとともに、平成 30 年度税制改正の公的年金等控除の見直しの考え方や年金制度改革の方向性も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて
 課税のあり方を総合的に検討する。


【総 評】
今回は平成 31 年度税制改正大綱に関して、検証していきました。
ここまで平成 31 年度税制改正に関して記載してきましたが、今後は会計税務コラム 等を記載していきますので御期待下さい。
posted by 7に縁がある税理士 at 16:48| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

「平成 31 年度税制改正 大綱」~第二 平成 31 年度税制改正の具体的内容~

第二 平成 31 年度税制改正の具体的内容

四 消費課税
1 車体課税等の見直し
(地方税)
<自動車税環境性能割>
(4) 平成 31 年 10 月 1 日に導入される環境性能割について、次の見直しを行う。
 ① 環境性能に応じた非課税又は 1 %若しくは 2 %の税率(営業用自動車にあっては 、 非課税又は 0.5 %若しくは 1 %の税率)の適用区分につい
  て、次の見直しを行う。
 ロ 乗用車
  (1) 自家用乗用車に係る燃費性能に関する要件を次のとおりとする。
            現 行             改正案
        平成 32 年度燃費基準値     平成 32 年度燃費基準値
   非課税   より 10 %以上年譜性能     より 20 %以上年譜性能 の良いもの
         の良いもの          平成 32 年度燃費基準値
        平成 32 年度燃費基準値
    1 %   を満たすもの          より 20 %以上年譜性能 の良いもの
        平成 27 年度燃費基準値      平成 32 年度燃費基準値
    2 %   を満たすもの
 ② 市町村交付金の交付割合を、次のとおりとする。
   現 行               100 分の 65
   平成 31 年度から平成 33 年度まで  100 分の 47
   平成 34 年度以降          100 分の 43
(注) 上記の「現行」とは、環境性能割導入以後に適用することとされている交付 割合に関する規定である。
(5) 平成 31 年 10 月 1 日から平成 32 年 9 月 30 日までの間に取得した自家用乗用車 に係る環境性能割について、次のとおり税率 1 %分を軽減する特例措置を講ずる。
また、この措置による減収については、全額国費で補填する。
  本措置を講ずる前の税率    本措置を講じた後の税率等
      1 %             非課税
      2 %             1 %
      3 %             2 %
<自動車税種別割>
(7) 自家用乗用車(三輪の小型自動車を除く。)に係る種別割の税率を次のとおりとし、平成 31 年 10 月 1 日以後に新車新規登録を受けたものから適用する。
(総排気量)        現行   改正案
1,000㏄以下      29,500 円  25,000 円
1,000㏄超 1,500㏄以下 34,500 円  30,500 円
1,500㏄超 2,000㏄以下 39,500 円  36,000 円
2,000㏄超 2,500㏄以下 45,000 円  43,500 円
2,500㏄超 3,000㏄以下 51,000 円  50,000 円
3,000㏄超 3,500㏄以下 58,000 円  57,000 円
3,500㏄超 4,000㏄以下 66,500 円  65,500 円
4,000㏄超 4,500㏄以下 76,500 円  75,500 円
4,500㏄超 6,000㏄以下 88,000 円  87,000 円
6,000㏄超       111,000 円  110,000 円
(8) 自動車税において講じている燃費性能等の優れた自動車の税率を軽減し、一定年 数を経過した自動車の税率を重くする特例措置(いわゆる「自動車税のグリーン化特 例」)について、次の措置を講ずる。
① 自家用自動車
 イ 自動車税のグリーン化特例(軽課) 平成 33 年度及び平成 34 年度に新車新規登録を受けた自動車について、現 行対象としている自動車のう
 ち電気自動車、天然ガス自動車、プラグインハ イブリッド自動車及び軽油自動車に限った特例措置(税率を概ね 100 分の 75 軽減する措置)
 を、当該登録の翌年度に講ずる。その上で、平成 31 年度及び 平成 32 年度に新車新規登録を受けた自動車については、平成 30 年度に新車 新
 規登録を受けた自動車に係る自動車税において講じられている措置と同様の措置を適用する。
 ロ 自動車税のグリーン化特例(重課) 平成 31 年度及び平成 32 年度において、現行と同様の措置を講ずる。
2 復興支援のための税制上の措置
3 租税特別措置等
4 その他


【総 評】 今回は平成 31 年度税制改正大綱に関して、検証していきました。 特に目新しく感じたのは、消費課税では自動車税率の見直しへの取組みが目に付きました。
posted by 7に縁がある税理士 at 16:04| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

「平成 31 年度税制改正大綱」~第二 平成 31 年度税制改正の具体的内容 ~

第二 平成 31 年度税制改正の具体的内容

二 資産課税
1 個人事業者の事業用資産にかかる納税猶予制度の創設等
(1) 個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度の創設
① 概要 認定相続人が、平成 31 年 1 月 1 日から平成 40 年 12 月 31 日までの間に、相続 等により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条 件に、その認定相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事 業用資産の課税価格に対応する相続税の納税を猶予する。
(注 1) 上記の「認定相続人」とは、承継計画に記載された後継者であって、中小 企業における経営の承継の円滑化に関する法律の規定による認定を受けた 者をいう。
(注 2) 上記の「特定事業用資産」とは、被相続人の事業(不動産貸付事業等を除く。 以下同じ。)の用に供されていた土地(面積 400 ㎡までの部分に限る。)、建 物(床面積 800 ㎡までの部分に限る。 )及び建物以外の減価償却資産(固定資 産税又は営業用として自動車税若しくは軽自動車税の課税対象となってい るものその他これらに準ずるものに限る。)で青色申告書に添付される貸借 対照表に計上されているものをいう。
(注 3) 上記の「承継計画」とは、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受け て作成された特定事業用資産の承継前後の経営見通し等が記載された計画 であって、平成 31 年 4 月 1 日から平成 36 年 3 月 31 日までの間に都道府 県に提出されたものをいう。
② 納税猶予額の計算 猶予税額の計算方法は、非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例と同様とする。
③ 納税猶予の免除 イ 全額免除 次の場合には、猶予税額の全額を免除する。
(イ) 認定相続人が、その死亡の時まで、特定事業用資産を保有し、事業を継続した場合
(ロ) 認定相続人が一定の身体障害等に該当した場合 (ハ) 認定相続人について破産手続開始の決定があった場合
(ニ) 相続税の申告期限から 5 年経過後に、次の後継者へ特定事業用資産を贈与し、 その後継者がその特定事業用資産について贈与税の納税猶予制度(後述)の適用を 受ける場合 ロ 一部免除 次の場合には、非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例に準じ て、猶予税額の一部を免除する。
 (イ) 同族関係者以外の者への特定事業用資産を一括して譲渡する場合
 (ロ) 民事再生計画の認可決定等があった場合
  (ハ) 経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特定事業用資産 の一括譲渡又は特定事業用資産に係る事業の廃止をするとき (注 4) 上記の「経営環境の変化を示す一定の要件」は、非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例に準じた要件とする。
なお、上記イ(ハ)又はロの場合には、過去 5 年間に認定相続人の青色事業専従者に 支払われた給与等で必要経費として認められない額は免除しない。
④ 猶予税額の納付
 イ 認定相続人が、特定事業用資産に係る事業を廃止した場合等には、猶予税額の全額を納付する。
 ロ 認定相続人が、特定事業用資産の譲渡等をした場合には、その譲渡等をした部分に対応する猶予税額を納付する。
⑤ 利子税の納付 上記④により、猶予税額の全部又は一部を納付する場合には、その納付税額に ついて相続税の法定申告期限からの利子税(年  
 3.6%)(利子税の特例(貸出約定平均 利率の年平均が 0.6%の場合)を適用した場合には、年 0.7%)を併せて納付する
⑥ その他
 イ 被相続人は相続開始前において、認定相続人は相続開始後において、それ ぞれ青色申告の承認を受けていなければならない。  
 ロ 認定相続人は、相続税の申告期限から 3 年毎に継続届出書を税務署長に提 出しなければならない。
ハ 認定相続人が、相続税の申告期限から 5 年経過後に特定事業用資産を現物 出資し、会社を設立した場合には、当該認定相続人が当該会社
  の株式等を保有 していることその他一定の要件を満たすときは、納税猶予を継続する。
 二 被相続人に債務がある場合には特定事業用資産の価額から当該債務の額(明 らかに事業用でない債務の額を除く。)を控除した額を猶予税額
  の計算の基礎 とする、非上場株式等についての相続税の納税猶予制度における資産管理会 社要件を踏まえた要件を設定する等の租税回避行
  為を防止する措置を講ずる。
ホ この納税猶予の適用を受ける場合には、特定事業用宅地等について小規模 宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受ける
  ことができ ない。
 ヘ その他非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例に準ずる措置 のほか所要の措置を講ずる。
(2) 個人事業者の事業用資産に係る贈与税の納税猶予制度の創設
 ① 認定受贈者(18 歳(平成 34 年 3 月 31 日までの贈与については、20 歳)以上である者に限る。以下同じ。 )が、平成 31 年 1 月 1 日から平成
  40 年 12 時月 31 日 までの間に、贈与により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定受贈
  者が納付すべき贈与税額のうち、贈与に より取得した特定事業用資産の課税価格に対応する贈与税の納税を猶予する。
 ② 認定受贈者が贈与者の直系卑属である推定相続人以外のものであっても、そ の贈与者がその年 1 月 1日において 60 歳以上である場合に
  は、相続時精算課 税の適用を受けることができる。 ③ 猶予税額の納付、免除等については、相続税の納税猶予制度と同様とする。 ④ 贈与
  者の死亡時には、特定事業用資産(既に納付した猶予税額に対応する 部分を除く。 )をその贈与者から相続等により取得したものとみなし、
  贈与時の 時価により他の相続財産と合算して相続税を計算する。その際、都道府県の確 認を受けた場合には、相続税の納税猶予の適用を受
  けることができる。
(注) 上記(1)及び(2)の改正は、平成 31 年 1 月 1 日以後に相続等又は贈与により取得 する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。
(3) 特定事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 の見直し 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算
 の特例について、特定事業用宅 地等の範囲から、相続開始前 3 年以内に事業の用に供された宅地等(当該宅地等の上 で事業の用に供されてい
 る減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の価額の 15%以上である場合を除く。)を除外する。
(注) 上記の改正は、平成 31 年 4 月 1 日以後に相続等により取得する財産に係る相 続税について適用する。ただし、同日前から事業の用に供さ
 れている宅地等については、適用しない。
2 教育資金の一括贈与非課税措置の見直し
3 結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し
4 租税特別措置等
5 その他
(国 税)
(1) 相続税の未成年者控除の対象となる相続人の年齢を 18 歳未満(現行:20 歳 未満)に引き下げる。
(2) 次に掲げる制度における受贈者の年齢要件を 18 歳以上(現行:20 歳以上)に 引き下げる。
① 相続時精算課税制度
② 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例
③ 相続時精算課税適用者の特例
④ 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度(特例制度についても同様と する。)(再掲)
(注) 上記(1)及び(2)の改正は、平成 34 年 4 月 1 日以後に相続若しくは遺贈又は 贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。

三 法人課税
1 イノベーション促進のための研究開発税制の見直し
2 中堅・中小・小規模事業者の支援
(国 税)
(1) 中小企業等の法人税の軽減税率の特例の適用期限を 2 年延長する。
3 地方創生の推進
4 頻発する災害への対応
5 都市・地方の持続可能な発展のための地方税体系の構築
(1) 法人事業税(所得割及び収入割に限る。)の税率の改正 法人事業税の標準税率を次のとおりとし、平成 31 年 10 月 1 日以後に開始する事業 年度から適用する。
② 資本金 1 億円以下の普通法人等の所得割の標準税率            現 行 改正案
                         年 400 万円以下の所得      5% 3.5%
                         年 400 万円超年 800 万円以下の所得 7.3% 5.3%
                         年 800 万円超の所得       9.6% 7%
(注 3) 上記の「現行」とは、平成 31 年 10 月以降に適用することとされている税率 に関する規定である。
(2) 特別法人事業税(仮称)の創設
① 特別法人事業税(仮称)の基本的な仕組み
イ 納税義務者等 特別法人事業税(仮称)は、法人事業税(所得割又は収入割)の納税義務者に対し て課する国税とする。
ロ 課税標準  法人事業税額(標準税率により計算した所得割額又は収入割額とする。)
ハ 税率
 (イ) 付加価値割額、資本割額及び所得割額の合算額に 260% よって法人事業税を課税される法人の所得割額に 対する税率
 (ロ) 所得割額によって法人事業税を課税される普通法 37% 人等の所得割額に対する税率
 (ハ) 所得割額によって法人事業税を課税される特別法 34.5% 人の所得割額に対する税率
 (二) 収入割額によって法人事業税を課税される法人の 30% 収入割額に対する税率
二 申告納付 特別法人事業税(仮称)の申告納付は、都道府県に対して、法人事業税と併せて行 うものとする。
ホ 賦課徴収 特別法人事業税(仮称)の賦課徴収は、都道府県において、法人事業税と併せて行 うものとする。
ヘ 国への払込み 都道府県は、特別法人事業税(仮称)として納付された額を国の交付税及び譲与税 配当金特別会計に払い込むものとする。
② 適用期日 特別法人事業税(仮称)は、平成 31 年 10 月 1 日以後に開始する事業年度から適 用する。
(2) 特別法人事業譲与税(仮称)の創設
(3) その他 6 円滑・適正な納税のための環境整備 7 その他の租税特別措置
8 その他


【総 評】 今回は平成 31 年度税制改正大綱に関して、検証していきました。 特に目新しく感じた のは、資産課税において、個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度の創設、法 人課税において、法人事業税(所得割及び収入割に限る。 )の税率の改正、特別法人事業税(仮 称)の創設が目に付きました。
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「平成 31 年度税制改正大綱」~第一 平成31年度税制改正の基本的考え方~

「平成 31 年度税制改正大綱」の目次を下記に列挙し、見送られた改正項目、前 年度と同様の改正項目等が再度盛り込まれたのかを検証していきます。

目 次

第一 平成31年度税制改正の基本的考え方
安倍内閣は、これまで、デフレ脱却と経済再生を最重要課題として取り組んできた。
高齢者から若者まで全ての世代が安心できる全世代型の社会保障制度 へと大きく転換するとともに、財政健全化も確実に進めていくため、消 費税率10%への引上げを平成31年10月に確実に実施する。

以下、平成31年度税制改正の主要項目及び今後の税制改正に当たって の基本的考え方を述べる。

1 消費税率の引上げに伴う対応等 (1)需要変動の平準化に向けた取組み
平成31年10月の消費税率引上げに当たっては、平成26年4月の引上 げの経験を生かし、経済に影響を及ぼさないよう、万全を期す。
① 消費税率引上げ時における価格設定の柔軟化と転化対策
② 住宅に係る措置
③ 自動車に係る措置 自動車の取得時の負担感を緩和するため、平成31年10月1日から
平成32年9月30日までの間に自家用乗用車(登録者及び軽自動車) を取得した場合、環境性能割の税率を1%分軽減する。なお、この 措置による地方税の減収については、全額国費で補てんする。
(2) 軽減税率制度の実施
(3) 医療に係る措置

2 デフレ脱却・経済再生、地方創生の推進
(1)イノベーション促進のための研究開発税制の見直し
(2)中堅・中小・小規模事業者の支援
①個人事業者の事業承継に対する支援
② 中小企業による積極的な設備投資等の支援
③ 中堅・中小企業による先進的な設備投資や災害の事前対策のための 設備投資に対する支援
(3)地方創生の推進
①ふるさと納税の健全な発展に向けた制度の見直し
② 地域経済を牽引する事業に対する支援
③ 地域における不動産の有効活用
④外国人旅行者向け消費税免税制度の利便性向上
(4)頻発する災害への対応 (5)その他考慮すべき課題

3 車体課税

4 都市・地方の持続可能な発展のための地方税体系の構築
5 経済社会の構造変化等を踏まえた税制の検討
(1) 個人所得課税のあり方
(2) 相続税・贈与税のあり方

6 経済活動の国際化・電子化への対応と租税回避・脱税の効果的な抑制

7 円滑・適正な納税のための環境整備
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「平成31年度税制改正大綱」の要約趣旨等

「平成 31 年度税制改正大綱」の目次を下記に列挙し、見送られた改正項目、前 年度と同様の改正項目等が再度盛り込まれたのかを検証していきます。

目 次

第一 平成31年度税制改正の基本的考え方・・・・・・・・・・・・1
安倍内閣は、これまで、デフレ脱却と経済再生を最重要課題として取り組んできた。
高齢者から若者まで全ての世代が安心できる全世代型の社会保障制度 へと大きく転換するとともに、財政健全化も確実に進めていくため、消 費税率10%への引上げを平成31年10月に確実に実施する。

以下、平成31年度税制改正の主要項目及び今後の税制改正に当たって の基本的考え方を述べる。

1 消費税率の引上げに伴う対応等 (1)需要変動の平準化に向けた取組み
平成31年10月の消費税率引上げに当たっては、平成26年4月の引上 げの経験を生かし、経済に影響を及ぼさないよう、万全を期す。
① 消費税率引上げ時における価格設定の柔軟化と転化対策
② 住宅に係る措置
③ 自動車に係る措置 自動車の取得時の負担感を緩和するため、平成31年10月1日から
平成32年9月30日までの間に自家用乗用車(登録者及び軽自動車) を取得した場合、環境性能割の税率を1%分軽減する。なお、この 措置による地方税の減収については、全額国費で補てんする。
(2) 軽減税率制度の実施
(3) 医療に係る措置

2 デフレ脱却・経済再生、地方創生の推進
(1)イノベーション促進のための研究開発税制の見直し
(2)中堅・中小・小規模事業者の支援
①個人事業者の事業承継に対する支援
② 中小企業による積極的な設備投資等の支援
③ 中堅・中小企業による先進的な設備投資や災害の事前対策のための 設備投資に対する支援
(3)地方創生の推進
①ふるさと納税の健全な発展に向けた制度の見直し
② 地域経済を牽引する事業に対する支援
③ 地域における不動産の有効活用
④外国人旅行者向け消費税免税制度の利便性向上
(4)頻発する災害への対応 (5)その他考慮すべき課題

3 車体課税

4 都市・地方の持続可能な発展のための地方税体系の構築
5 経済社会の構造変化等を踏まえた税制の検討
(1) 個人所得課税のあり方
(2) 相続税・贈与税のあり方

6 経済活動の国際化・電子化への対応と租税回避・脱税の効果的な抑制

7 円滑・適正な納税のための環境整備


第二 平成31年度税制改正の具体的内容・・・・・・・・・・・・・18

一 個人所得課税
1 住宅・土地税制
(国 税)
[延長・拡充等]
(1) 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について、次 の措置を講ずる。
① 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例の創設
イ 一般の住宅(認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅以外の住 宅)の場合
次に掲げる金額のいずれか少ない金額
(イ) 住宅借入金等の年末残高(4000万円を限度)×1%
(ロ) [住宅の取得等の対価の額又は費用の額-当該住宅の取得 等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等](4000 万円を限度)×2%÷3
2 金融・証券税制
3 森林環境税(仮称)及び森林環境譲与税(仮称)の創設
4 租税特別措置等
5 その他

二 資産課税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
1 個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設等
2 教育資金の一括贈与非課税措置の見直し
3 結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し
4 租税特別措置等
5 その他
(国 税)
(1) 相続税の未成年者控除の対象となる相続人の年齢を18歳未満(現 行:20歳未満)に引き下げる。
(2) 次に掲げる制度における受贈者の年齢要件を18歳以上(現行:20 歳以上)に引き下げる。
① 相続時精算課税制度
② 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例
③ 相続時精算課税適用者の特例
④ 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度(特例制度につい ても同様とする。)(再掲)
(注) 上記(1)及び(2)の改正は、平成34年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与 税について適用する。

三 法人課税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
1 イノベーション促進のための研究開発税制の見直し
2 中堅・中小・小規模事業者の支援
3 地方創生の推進
4 頻発する災害への対応
5 都市・地方の持続可能な発展のための地方税体系の構築
6 円滑・適正な納税のための環境整備
7 その他の租税特別措置
8 その他

四 消費課税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83
1 車体課税等の見直し
2 復興支援のための税制上の措置
3 租税特別措置等
4 その他

五 国際課税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・98
1 過大支払利子税制の見直し
2 移転価格税制の見直し
3 外国子会社合算税制の見直し
4 平成32年に開催される東京オリンピック競技大会又は東京パラリンピック競技大会に参加等をする非居住者及び外国法人に係る課 税の特例の創設
5 台湾との間での金融口座情報の自動的な提供のための報告制度等 の整備
6 その他

六 納税環境整備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・114
1 番号が付された証券口座情報の効率的な利用に係る措置
2 情報照会手続の整備
3 eLTAX障害発生時の申告等に係る期限延長
4 大法人の電子申告の義務化に伴う所要の措置
5 その他

七 関税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・119
1 暫定税率の適用期限の延長等
2 個別品目の関税率等の見直し
3 その他

第三 検討事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・121

1 年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する 中で、世代間及び世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年 金、公的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバラ ンス、貯蓄・投資商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス 等に留意するとともに、平成30年度税制改正の公的年金等控除の見直 しの考え方や年金制度改革の方向性も踏まえつつ、拠出・運用・給付 を通じて課税のあり方を総合的に検討する。


【総 評】 今回は平成 31 年度税制改正大綱に関して、検証していきました。 平成 30 年度税制改正大綱は表紙 1P、目次 1P、本文 132P の冊子だったのが、 平成 31 年度税制改正大綱は表紙 1P、目次 1P、本文 122P の冊子と前年度より 若干スリムなボリュームのある内容になった印象です。 特に目新しく感じたのは、所得課税では住宅借入金等を有する場合の所得税 額の特別控除の見直し、資産課税では年齢要件の見直しが目に付きました。
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【平成31年度税制改正に関する建議書】

■消費税における単一税率及び請求書等保存方式の維持■
 日税連は、これまでも単一税率制度の維持を強く主張してきたが、税率の引き上げが目前に迫る中、平成31年度税制改正が軽減税率制度を撤回することのできる事実上最後の機会であると考え、建議書においては重要建議項目の最初に据えることとした。

(1)単一税率制度の維持
   軽減税率制度には次のような問題がある。
  ・区分経理等により事業者の事務負担が増加する
  ・逆進性対策として非効率であるうえに、財政が毀損し社会保障給付の抑制が必要になる
  ・簡易課税制度が複雑な制度となる
  ・軽減税率適用に関する訴訟等が増加する
   特に、事業者の事務負担の増加は軽視できない問題である。
  例えば、国税庁は「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」
(平成29年1月改訂)及び「同(個別事例編)」(同)を公表しているが、事業者には、こうした項目の一つ一つに適切に対応することが求められてい
るが、その一つ一つに膨大な事務負担を強いられることになる。
 こうした観点から、日税連は低所得者対策の代替案として、あらかじめ国が一定額を入金したプリペイドカードを配付する方法や、一定額の簡素な給付措置を提言した。プリペイドカードによる方法は、購入時にカードをレジにかざすなどし、軽減税率対象品の場合、標準税率と軽減税率の差に相当する消費税額がカードから引かれる仕組みである。
また、簡素な給付措置は、平成26年4月の消費税率8%への引き上げによる影響を緩和するため、低所得者に対する暫定的措置として導入された
「臨時福祉給付金」のような仕組みである。
 いずれの措置も、低所得者へのピンポイントの給付が可能である点において、軽減税率制度より優れているといえる。
  (2)請求書等保存方式の維持
    適格請求書等保存方式の導入は、平成35年10月からであるが、平成31年10月からは、区分記載請求書等保存方式が導入される予定であ
る。換言すれば、もし軽減税率制度が導入されない場合であっても、現状では適格請求書等保存方式は導入されることとなる。
適格請求書等保存方式にも、次のような問題がある。
・事業者及び税務官公署の事務に多大な影響を与える
・名目GDP600兆円に向けた成長戦略、行政手続コスト(事業者の作業時間)20%の削減目標を掲げる国の方針に反する
・税務官公署においては、実調率の低下が顕著である中、さらなる負担
を強いることとなり、適正課税が脅かされる
特に事務負担の増加は、事業者だけにとどまらず、行政コストにもその影響が及ぶため、日本経済への影響が懸念される。
 こうした観点から、日税連は、現行の請求書等保存方式の維持を主張するとともに、軽減税率制度への対応として、区分経理等に関しては、
現行の請求書等保存方式に一定の記載事項を追加することを提言した。
 (3)消費税制の抜本的見直し
    適格請求書等保存方式のもう一つの問題は、免税事業者が取引から排除される恐れがあることである。日税連は、その検討に当たっては、特にこの「免税事業者の排除問題」への措置を講じるよう主張した。
なお、具体的な見直しの方向性として、「基準期間制度を廃止し、すべての事業者を課税事業者として取り扱い、新たに小規模事業者に対す
る申告不要制度を創設すること」を別途項目で提言している。

■所得控除の抜本的見直し■
 
 (1)人的控除
    人的控除は、所得のうちそこまでは課税されない課税最低限を構成するものである。このため、人的控除は租税法における憲法25条の生存権保障の現れであると解されている。
したがって、給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であることや、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ検討していくことが必要である。
 給与所得控除は、「勤務費用の概算経費」と「他の所得との負担調整」からなるとされているが、他の所得との負担調整の意義や給与所得と事業所得を明確に分ける意義は薄れているといえる。
 公的年金等への課税は、拠出時に社会保険料控除として全額控除され、給付時に課税される仕組みとなっている。その上、給付時には公的年金等控除が適用され、実質的に非課税に近い課税制度となっている。したがって、公的年金等控除の見直しについても検討すべきである。
 以上のことより、給与所得控除や公的年金等控除の所得計算上の控除を縮減した上で、人的控除を中心として課税最低限を確保することが適切である。現行の所得の種類ごとの負担調整、すなわち所得計算上の控除を縮減し、人的な事情による負担調整である人的控除を拡充することにより、課税最低限を確保する税制の構築を検討すべきである。
 (2)税額控除化の検討
    現行の所得控除方式は、適用税率の高い高所得者に有利な制度であり、所得金額により税負担の軽減効果に差異が生じている。そこで、人的控除などについては、【図2】に示す通り、一定の所得金額に最低税率を乗じた金額を税額から控除する「税額控除方式」や、一定の所得金額までの税率をゼロとする「ゼロ税率方式」への変更を検討すべきである。

■中小法人に対する繰越欠損金控除制限及び外形標準課税の不適用■

(1) 繰越欠損金の100%控除制度の維持
中小法人は、大法人と比べ財務基盤も弱く、繰越欠損金に控除制限を設けると、中小法人の資金繰りを圧迫することになる。また、中小
法人は、大法人と比べ業績回復には相当な期間を要する場合が多い。したがって、中小法人に対しては現行の繰越欠損金の100%控除
制度を維持すべきである。
  (2)中小法人への外形標準課税の不適用
中小法人の雇用の確保と資金繰り悪化を防ぐためだけでなく、地方創生の観点からも、中小法人には法人事業税の外形標準課税を適用すべきでない。

■償却資産に係る固定資産税の抜本的見直し■

(1)償却資産に係る固定資産税の位置づけ 
     税収規模は約1兆6000億円であり、地方財政における安定した基幹税の一つとなっている。
    また、平成28年度与党税制改正大綱では「償却資産に対する固定資産税の制度は堅持する」とされている。
(2)税制審議会の答申
平成28年度は、諮問「償却資産に係る固定資産税制度のあり方について」に対して答申があった。
答申では、
① 業種間で税負担が偏在している
② 市町村の執行体制と課税客体の補足が十分でない
③ 事業者の事務負担が煩雑である
等の問題点が指摘されている。
答申は、それらの問題点を踏まえて提言を行っており、その内容を要約したものが建議項目となっている。
(3)建議項目の概要
①将来的には廃止
     建議書では、国際競争力の観点からも将来的には廃止を検討すべきであるとしている。
②解決案の提示
・償却資産税を固定資産税とは異なる新たな税目とすること 
・賦課期日を法人の決算日とすること
・申告期限を所得税及び法人税の申告期限と一致させること
・将来的にe-TaxとeLTAXを連携又は統一することにより税額確定方式を申告納税方式に変更すること
・設備投資の促進を税制で一層支援し、さらに小規模事業者の事務負担を軽減するために、免税点を300万円(現行150万円)程度に引き上げること
・申告業務の簡素化のため、国税の課税標準の計算方法との整合性を図ること

■個人事業者番号の導入■

(1)現行制度の問題点
法人番号の利用により、当事者は経済的なメリットを享受することができる。これに対して、個人番号はその取り扱いが法令で限定されてい
るため、個人事業者等には取引の際に自由に利用できる「番号」が存在しない。すなわち、個人事業者は、法人番号が有する経済的なメリット
を享受できない。
(2)個人事業者番号の導入 
個人事業者等について、法人番号と同様に運用上の制限が少ない「個人事業者番号」を導入し、その付番を選択的に受けられるようにする必
要があるとしている。
この結果、法人の番号は法人番号に統一され、個人番号は個人の税・社会保障・災害対策のみに利用され、「個人事業者番号」は個人事業者
等が経済活動をする際に広く用いられることとなり、新たな価値の創出につながることが期待される。
 なお、消費税における適格請求書発行事業者の登録に関連して、建議書は、法人番号及び「個人事業者番号」の活用を検討すべきであるとし
ている。


【総  評】
前回に引き続き、日本税理士会連合会が取りまとめた平成31年度税制改正に関する建議書について取り上げたのは、今年12月に提出される自民党政権下での平成30年度税制改正にどこまでこの建議書が取り込まれているかの確認の意味での意図からです。

特に同意を示したのが、下記事項です。
(1)単一税率制度の維持
   軽減税率制度には次のような問題がある。
  ・区分経理等により事業者の事務負担が増加する
  ・逆進性対策として非効率であるうえに、財政が毀損し社会保障給付の抑制が必要になる
  ・簡易課税制度が複雑な制度となる
  ・軽減税率適用に関する訴訟等が増加する
   特に、事業者の事務負担の増加は軽視できない問題である。
  例えば、国税庁は「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」
(平成29年1月改訂)及び「同(個別事例編)」(同)を公表しているが、事業者には、こうした項目の一つ一つに適切に対応することが求められてい
るが、その一つ一つに膨大な事務負担を強いられることになる。
 こうした観点から、日税連は低所得者対策の代替案として、あらかじめ国が一定額を入金したプリペイドカードを配付する方法や、一定額の簡素な給付措置を提言した。プリペイドカードによる方法は、購入時にカードをレジにかざすなどし、軽減税率対象品の場合、標準税率と軽減税率の差に相当する消費税額がカードから引かれる仕組みである。
また、簡素な給付措置は、平成26年4月の消費税率8%への引き上げによる影響を緩和するため、低所得者に対する暫定的措置として導入された
「臨時福祉給付金」のような仕組みである。
 いずれの措置も、低所得者へのピンポイントの給付が可能である点において、軽減税率制度より優れているといえる。

このまま消費税における事務負担が増えたことを理由に、弊事務所のような税理士事務所からの税理士報酬を増加させることを顧問先様等へ御理解いただくのは難しく、徒に税務リスクを同時に増加させるか、一旦期限内に申告して、5年内に更正の請求で還付申告を行うかしないと、納税者の税負担のバランスを保てなくなる恐れがあります。
いずれにも得のない改正のように映ります。

しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
posted by 7に縁がある税理士 at 00:17| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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