2021年10月27日

【令和 4 年度税制改正に関する建議書】

■Ⅰ 税制に対する基本的な視点■

(1) 公平な税負担
納税者が負担能力に応じて分かち合うという意味で公平には、水平的公平、垂直的公
平とともに世代間の公平の問題があり、それらが相互に補完し合うバランスのとれた税
制を構築していく必要がある。
(2) 理解と納得のできる税制
租税制度は納税者が理解できるものであり、また、その目的や内容についても納得で
きるものである必要がある。
(3) 適正な事務負担
納税者に求められる事務負担は過度なものであってはならず、必要かつ最小限になる
ように配慮されるべきである。また、適正な事務負担は、税務行政においても考慮する
必要がある。
(4) 時代に適合する税制
税制を常に時代に適合するものとすべく、その見直しを継続しなければならない。
(5) 透明な税務行政
公平な税負担の確保と申告納税制度を維持・発展させるためには必要不可欠であり、納
税者からさらなる信頼を得るための施策を行っていく努力が求められる。

■Ⅱ 本建議書における重要建議項目■

1 適格請求書等保存方式を見直すとともに、その導入時期を延期すること。
適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)については、簡易で安価な電子インボイス制度が整備されるなど中小企業者に対する負担軽減措置が講じられるまでの間は、導入を延期すべきである。
(2)市場取引に与える影響
事業者の負担と徴税コスト等を考慮し、仕入税額控除方式(インボイス方式を含む。)及び免税点制度等の見直しを含めた消費税のあり方について、抜本的に再検討すべきである。
3 基礎的な人的控除のあり方を見直すとともに、所得計算上の控除から基礎控除へのシフトを進めること。
(2)所得計算上の控除から基礎控除へのシフト
給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であることや、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除を縮減した上で、基礎的な人的控除を引き上げるべきである。
4 「災害損失控除」を創設するとともに、相続時精算課税制度における受贈財産が災害により損失を受けた場合の救済措置を設けること。
 (1)「災害損失控除」の創設
 当年分の所得金額から災害損失控除及び純損失を控除しきれない場合の繰越控除期間は、最低でも5年間の繰越が認められるべきである。
(2)相続時精算課税における受贈財産が被災し損失が生じた場合の救済措置
災害により相続時の受贈財産の価額が贈与時の価額を著しく下回り、回復の見込みのない場合には、相続時の価額で加算する救済措置を設けるべきである。

■Ⅲ 今後の税制改正についての基本的な考え方■

【所得税】
所得の種類に関係なく課税最低限を設定できる基礎的な人的控除を中心とした制度を構築すべきである。
【中小法人税制】
資本金基準や所得金額のほか従業員数など他の指標を組み合わせることが適当である。
【法人税】
法人税制の改正に当たっては、税率の見直しと課税ベースのトレードオフによる財源確保の視点ではなく、適正な課税ベースの構築を基本に据え、公平・中立が維持できる制度となるようにすべきである。
【消費税】
日本税理士会連合会は、概ね次のような姿をあるべき消費税制と考えている。
①単一税率制度とする。
②適格請求書等保存方式を見直す。
③課税ベースを狭めることとなる非課税の範囲を縮小する。
④基準期間における課税売上高による納税義務の判定を廃止し、当年又は当事業年度にお
ける課税売上高により課税事業者の判定をし、課税売上高が一定額以下の場合は、納税義
務が免除される制度を創設する。
⑤簡易課税制度については、みなし仕入れ率を引き下げた上で設備投資に係る仕入税額控
除を認め、一定の要件を付した上でその課税期間に係る諸届けの提出時期を申告期限までとする。
【相続税・贈与税】
高齢者世代から若年世代への資産移転を通じて経済の活性化を図るという社会的要請があり、贈与税において、相続税の補完税としての機能を弱めるとともに、資産格差の固定化につながることから、適用期限の到来を見据えて廃止又は縮小すべきである。世代間の資産移転を促進するには、贈与税の基礎控除の拡大や税率構造の見直しを行うべきである。
【地方税】
税源の偏在性が少ない地方税制を構築する必要がある。
法人事業税の外形標準課税については、中小法人に適用すべきでなく、一定規模以下の中堅法人については、適用除外又は現行の軽減措置の恒久化等を検討すべきである。
【納税環境整備・その他】
3 国税通則法等
複雑で難解な税法及び税務手続を専門家でない納税者が正しく理解することは必ずしも容易ではなく、納税者が誤った理解の下に不利益を被る可能性も高い状況において、納税者の最低限の権利保護を目的として、諸外国にも例の多い納税者憲章を制定するとともに、国税通則法 第1条(目的)に「納税者の権利利益の保護に資する」旨の文言を追加すべきである。
4 公会計制度
国及び地方公共団体の財政状態や、行政コストの内容等を容易に把握するため、「国の財務書類」等がより一層活用されるように取り組むことが必要である。
5 成年後見制度
関連する税制及び税務上の取扱い等を見直すことが必要である。
【災害対応税制】
恒久法として「災害税制に関する基本法」を立法化すべきであると要望してきた。

■Ⅳ 税制改正建議項目■

【所得税】
 個人が業務用不動産を譲渡したことにより生じた譲渡損失についても、損益通算等を認めるべきである。
【中小法人税制】
 現行では、中小法人について、課税所得800万円以下を15%とし、大法人より軽減された税率が適用されている。また、中小法人は大企業と比較して外部からの資金調達が困難であり、事業資金を得るためには利益を獲得し、内部留保に努める必要があり、軽減税率が適用される課税所得の上限を年800万円から引き上げるべきである。
【法人税】
損金不算入とする役員給与を明示した上で、役員報酬及び賞与について株主総会等の決議によって事前に確定した金額の範囲までの部分については、不相当に高額なものを除き、原則として損金の額に算入すべきである。
【消費税】
 基準期間における課税売上高による納税義務の判定を廃止し、すべての事業者を課税事業者とした上で、当年又は当事業年度の課税売上高が一定額以下の場合は、納税者の選択によって申告をしなくても納税義務が免除される制度を創設すべきである。
 なお、簡易課税制度についても同様に、現行の基準期間による判定ではなく当年又は当事業年度の課税売上高が一定額以下の場合には確定申告時に選択できるよう改正すべきである。


【総 評】
今回、日本税理士会連合会が取りまとめた令和4年度税制改正に関する建議書について取り上げたのは、今年12月に提出される自民党政権下での令和4年度税制改正にどこまでこの建議書が取り込まれているかの確認の意味での意図からです。

例年からの内容が盛り込まれておりましたが、消費税に関しては、日本税理士会連合会がいうように、大部分は低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税率となる恐れがあり、今問題となっている年金以上に支給している生活保護の支給に近い状況が起こるのではないかと思われます。

今まで若いころに一生懸命に働き、掛けてきた年金を、定年を迎えた老後に支給できるようにしたはずです。ところが今は大変不景気で、病気やけがのため、失業したわけではなく、勤め先が倒産したがために、本人は働く気が合っても、再就職先が見つからず、比較的若いころから生活保護を支給されるようになってしまっています。

日本は「皆平等」「弱者救済」「困ったときはお互い様」の精神が昔からあります。ただ、それを行き届かせることにこだわると、税収増が思ったほど見込めず、国及び地方の借金が一向に減らないのではないでしょうか。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
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令和3年(2021年) 税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

(税理士会員相談室)
<<消費税>>
● 販売用の住宅を一時的に賃貸した場合の個別対応方式による仕入税額控除
質 問
不動産業を営むA社は、販売目的で分譲マンションを取得したが、資金繰りその他の事情を考慮し、一時的に居住用として賃貸することとなった。この場合において、建物の取得費は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して仕入税額控除を計算することができるか。
回 答
課税仕入れを行った日(建物取得時)の目的が「販売用」であり、建物取得時点で非課税となる家賃収入が発生する予定がなかったことから、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して問題ないものと思われる。
検 討
質問の事例では、建物取得時の用途が販売用であるから、これを一時的に賃貸したとしても、その賃貸により発生する家賃収入(非課税)は、課税仕入の用途区分に影響しないものと考えるべきである。
なお、一時的な目的変更とはいえ、販売目的から賃貸用に変化しているため、後日説明を求められることも考えられる。そのため、法人内部の稟議書等で、取得後の一時的な賃貸その他の経緯を整理しておくと有効である。

● 賃貸中の中古マンションを取得した場合の個別対応方式による仕入税額控除
質 問
不動産業を営むB社は、住宅として賃貸中の中古マンションを、買手を先に確保した上、転売目的で賃借人付きで丸ごと取得したが、買手の資金の都合により、実際の売却は決算をまたいで10ヶ月後となった。この場合において、建物の取得費は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して仕入税額控除を計算することができるか。
なお、当該土地建物の保有期間中の家賃収入は、当社の収益として計上しているが、建物部分についての減価償却費は計上せず、決算書には取得した土地建物を「商品」として表示する予定である。
回 答
本件中古マンションの取得の目的は転売にあることから、最終的に課税売上げが発生することは明らかである。ただし、建物の取得時点で入居者がいることから、最終目的が中古マンションの転売ということであっても、転売までの間、非課税となる家賃収入が発生していることも事実である。したがって、本件建物の取得は、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入に区分せざるを得ないものと思われる。
検 討
賃借人と買手を含めた三者間の協議により、1か月未満の短期家賃については買手に帰属するなどの取り決めをした場合には、消費税における課税仕入れの用途区分は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分することが認められ、法人税においても寄付金認定などはなく、家賃収入は買手に帰属させることができるものと思われる。
上述のように非課税収入の収受権を転売先に帰属させることで、「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」から「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に用途区分を転換させるなどの工夫も必要になるものと思われる。

● 用途を変更した場合の修正申告の是非
質 問
不動産業を営むC社は、前事業年度末に貸ビルを建築するための敷地を購入し、仲介手数料を支払っている。当該前事業年度に係る消費税の確定申告では、個別対応方式を採用し、仲介手数料は、ビルの家賃収入(課税)に対応するものとして、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分している。
当初計画をしていた建物の建築がかなわず、不採算となることが判明した。そのため、やむなく当該土地を更地のまま転売することとなった。
この場合において、前期の消費税の確定申告で、全額を仕入税額控除の対象とした仲
介手数料について、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」に用途区分を変更した上で、修正申告をする必要があるか。
回 答
質問の事例では、仲介手数料支払時の用途が貸ビルを建築するための敷地の取得に係るものであるから、その後に土地の用途が変更になったとしても、当初の用途区分を変更し、修正申告をする必要はない。
検 討
本件の場合、賃貸ビル建設の計画から販売へと方向転換に至った理由から、用途区分の変更が後発的な事象に基因するため、修正申告の必要性は存しない。そこで、後日その状況の客観性を主張する場面を想定し、販売への用途区分の変更経緯を整理しておくと有効である。
なお、土地を購入した場合に支払う仲介手数料や土地造成費は、その土地の用途に応じて次のように区分することになる。

【仲介手数料等の課税仕入れの用途区分の判定】
利用方法     課税仕入れの用途区分
        課税資産の   その他の資産   共通して
        譲渡等にのみ  の譲渡等にのみ   要するもの
        要するもの   要するもの
①販売用の         土地の売上高に直接
土地の場合         対応するもの
②購入した   建物の売上げに         土地の売上げと
土地の上に    直結する建物の        建物の売上げに
建物を建て、   建築費           対するもの
分譲住宅と
して販売
する場合
③購入した         ・住宅家賃収入に
土地の上に          直接対応するもの
建物を建て、         ・建物の建築費
賃貸住宅と
して貸付け
る場合
④購入した   ・住宅以外の
土地の上に     家賃収入に直接
建物を建て、   対応するもの
店舗として    ・建物の建築費
貸付ける場合
⑤用途未確定               売上げと明確な
の場合                 対応関係ないもの

● 建物の建替えに伴う立退料の取扱い
質 問
当社は画材関連品の小売業を営んでいるが、従来(20年以上前)から賃借していた店舗用建物の建替えに伴い、立退きの要求を受けた。
当社としては、立地条件や同業者の減少等により、安定した売り上げが得られていたこともあり、その補てん分としての立退料を要求したところ、600万円の支払いを受けることになった。
この場合、受け取った立退料について、消費税の課税対象となるのか。
回 答
原則として、課税対象外取引となるため、消費税の課税対象とはならない。
検 討
現実問題として、立退料が支払われる場合に、それらが明確に区分されて支払われることはほとんどなく、その判断が困難であることから、次の通達が設けられている。
(建物賃貸借契約の解除に伴う立退料の取扱い)
消基通5-2-7
建物等の賃借人が賃貸借の目的とされている建物等の契約の解除に伴い賃借人から収受する立退料(不動産業者等の仲介を行うものを経由して収受する場合を含む。)は、賃貸借の権利が消滅することに対する補償、営業上の損失又は移転等に要する実費補償などに伴い収受されるものであり、資産の譲渡等の対価に該当しない。
(注)  建物等の賃借人たる地位を賃借人以外の第三者に譲渡し、その対価を立退き料等
として収受したとしても、これらは建物等の賃借権の譲渡に係る対価として受領さ
れるものであり、資産の譲渡等の対価に該当することになるのであるから留意する。
ここで留意したいのは、通達の注書きの意味である。
具体例としては、銀座で飲食店(クラブ)を営む法人が、オーナーの了解のもとに、
「建物賃借権」として第三者に譲渡するケースは、資産の譲渡であることから、課税
対象取引として取り扱われることになる。

【総 評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやすい論点を再確認していただきたい意図からです。
共通して「用途区分を変更」した場合における質問・回答が目に付きました。消費税申告における個別対応方式を採用した場合の3種類の課税仕入れの用途 区分も表にしてみました。これは課税売上割合が95%未満の場合、採用されるもので、他に一括比例配分方式があります。
また、余談ですが、平成27年4月1日以後に開始する課税期間から消費税の簡易課税制度におけるみなし仕入率がそれまでの90~50%の刻みだったのが、90~40%の刻みになりました。特に、第四種事業の金融業及び保険業が60%から50%に、第五種事業の不動産業が50%から40%に変更になりましたので、御留意下さいませ。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
posted by 7に縁がある税理士 at 15:48| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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