2016年09月30日

【平成28年度税制改正に関する建議書】

■はじめに■
日本税理士会連合会では、この規定に基づき、税制改正に関する建議書を毎年取りまとめている。
本建議書では、冒頭において「今後の税制改正についての基本的な考え方」を
示し、中長期的に取り組むべき課題を明らかにした後、続いて各税目の「税制改正建議項目」を示している。
なお、東日本大震災に関する税制及び取扱いについては、本建議書でも引き
続き提言するとともに、大規模震災等に備え、税制においても恒久法として「災害税制に関する基本法」の策定を提案した。

■税制に対する基本的な視点■
(1)公平な税負担
納税者が負担能力に応じて分かち合うという意味で公平には、水平的公平、
垂直的公平とともに世代間の公平の問題があり、それらが相互に補完し合うバ
ランスのとれた税制を構築していく必要がある。
(2)理解と納得のできる税制
租税制度は納税者が理解できるものであり、また、その目的や内容についても納得できるものである必要がある。
(3)必要最小限の事務負担
過度の負担を納税者に強いることは避けなければならない。
(4)時代に適合する税制
税制を常に時代に適合するものとすべく、その見直しを継続しなければなら
ない。
(5)透明な税務行政
公平な税負担の確保と申告納税制度を維持発展させるためには必要不可欠で
あり、納税者からさらなる信頼を得るための施策を行っていく努力が求められ
る。

■本建議書における重要県議項目■
(1)消費税の単一税率を維持すること
事業者の事務負担なども考慮すれば、消費税の単一税率は維持すべきであ
る。
逆進性への対応策は、個人所得課税及び社会保障給付の見直しを含めた社会
保障・税一体改革の中で構築することが適切であり、個人所得課税における所
得再分配機能の強化と社会保障・税番号制度の導入による社会保障給付の一層
の効率化・重点化により対処すべきである。
(2)外形標準課税は中小法人に導入しないこと
中小法人は、大法人と比較すると財務基盤が弱く欠損法人割合も高い。したがって、担税力の観点から、外形標準課税を中小法人に導入すべきではない。
また、外形標準課税の課税標準の一つである付加価値割の大半は給与であり、中小法人は大法人と比較すると労働分配率が高いことから、中小法人に外形標準課税が導入された場合には、中小法人の雇用にも影響を及ぼすことになる。
(3)給与所得控除・公的年金等控除を見直すこと
現行の給与所得控除額については相当程度の引下げを行うことが適当であ
る。
また、公的年金等控除についても、拠出時に社会保険料控除を適用し、年金
の受給時に公的年金等控除を適用することは二重控除とみることができること
から、現行の公的年金等控除は相当程度の縮減を行うことが適当である。
さらに、適切な課税ベースを維持するために、給与所得控除と公的年金等控
除の重複適用についても早急に見直しを行う必要がある。
日本税理士会連合会は、これらの論点を含め、現状の税制における問題点及
び中長期的視点に立ったあるべき税制を構築するための諸施策を本建議書にと
りまとめた。

■Ⅰ 今後の税制改正についての基本的な考え方■
【中小法人税制】
平成28年度以降の税制改正においては、①減価償却の定額法への一本
化、②法人事業税の損金不算入化、③中小法人における法人税の軽減税率・欠損金繰越控除の控除限度・特定同族会社の留保金課税・事業税の外形標準課税などについて検討を行うこととされている。
これらの項目を検討する際には、中小法人の実態を十分に踏まえるべきである。

【所得税】
所得税における所得再分配機能を回復させるためことも引き続き重要である。そのためには、次の項目について特に見直していくことが必要である。
① 給与所得及び公的年金等所得に係る手続きを含む課税のあり方
② 所得控除のあり方
③ 分離課税制度のあり方
なお、復興特別所得税については、所得税率を引き上げる形で所得税に
吸収し、引上げ部分を復興特別所得税とみなして復興の財源にすることを
検討すべきである。

【法人税】
海外からの国内企業への投資を促進するためには、法人税率の一層の引下げが必須である。
他方で、法人税率の引下げによる税収減を補うための課税ベースの拡大も議論されているが、法人税制の改正に当たっては、財源確保の視点だけではなく、適正な課税ベースの構築も引き続き検討すべきである。

【消費税】
1 単一税率の維持
消費税率については、軽減税率の導入が検討されており、平成27年度与党税制改正大綱には、「関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入する。」と明記されている。
しかし、消費税の軽減税率制度は、次に掲げる理由により導入すべきではない。
① 軽減税率により税収が減少すると、税収を補てんするために、標準税率のさらなる引上げ、社会保障給付の抑制等が必要となる。
② 軽減税率による税収減収額のうち、大部分は低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税額となり、低所得者に対する負担軽減策としては極めて効率の悪い制度である。
③ 軽減税率の適用範囲を合理的に設定することは極めて困難(特に、軽減税率対象品目から高級食材・嗜好品を除く場合など)であるとともに、その適用の判断に係る納税義務者の事務が複雑となり、徴税コスト等も増大する。
④ ヨーロッパ諸国において軽減税率の適用に関する訴訟が非常に多いことが指摘されている。軽減税率の適用範囲の是否認を巡り、わが国においても税務訴訟等が増加し、社会的コストの増大を招くと予想される。
⑤ インボイス制度の導入(別途のインボイスを発行する場合と、請求書等の書類に標準税率と軽減税率に係る必要項目を追加的に記載する場合等が考えられる。)が必要となり、納税義務者の事務負担が増大する。特に、二段階での税率引上げに旧税率の経過措置が加わり、さらに軽減税率が導入されると、実務上混乱が生じることは避けられない。
⑥ 軽減税率が導入された場合、現行の簡易課税制度を合理的な制度として存続させようとすると、事業区分の細分化等が必要となり、複雑な課税制度となってしまう。
2 社会保障・税一体改革の必要性
個人所得課税及び社会保障給付の見直しも含めた社会保障・税の一体改革の中で解決することが適切である。すなわち、個人所得課税における所得再分配機能の強化を図りつつ、社会保障・税番号制度の導入により社会保障給付をより効率的に運用し、真に給付を必要とする者に重点的に行うことにより対処することが必要である。そのための方策として、給付を低所得者層に限定した給付付き税額控除制度を導入することを検討すべきである。
3 請求書等保存方式の維持
わが国の消費税法は、現在、「請求書等保存方式」(帳簿の保存に加え、取引の相手方等が発行した請求書等の保存を要件とする方式のことで、別途のインボイスを発行しないことから「帳簿方式」ともいわれている。)を採用している。この方式においても、別途のインボイスを発行しなくとも、現行の帳簿方式で正確な消費税額の計算が行われている。したがって、現行の「請求書等保存方式」(帳簿方式)を維持すべきである。

【相続税・贈与税】
平成27年から施行されている相続税の基礎控除の引下げ等による課税ベースの拡大は、資産格差を是正し、財源調達機能を回復させるための措置であり、相続税の申告件数が大幅に増加する。これに伴い延納及び物納の申請も増加することが見込まれることから、延納及び物納の手続きを一層周知することが必要であるとともに、各種書類の提出期限や不足資料等の補完期限の延長についても検討すべきである。
贈与税は、高齢者世代から若年世代への資産移転を通じて、経済の活性化を図るという社会的要請を受けて相続税の補完税としての性格を維持しつつ、その負担軽減を図ることを検討する必要がある。そのためには、より広く世代間の資産移転を促進するために基礎控除の拡大や税率構造の見直しを行うべきである。

【地方税】
地方行政の役割が一層高まっている。税源の偏在性が少ない地方税制を構築する必要がある。
平成27年度税制改正において、大法人向けの法人事業税の外形標準課税の拡大が行われ、さらなる拡大と適用対象法人のあり方について引き続き慎重に検討を行うとされた。大法人向けの外形標準課税の拡大は必要であるが、中小法人については雇用の安定や赤字法人の担税力を考慮し、景気回復の足かせにならないよう外形標準課税は導入すべきでない。
なお、固定資産税については、平成27年度は評価替えの年に当たり土地の負担調整措置等が継続されることとなったが、次回の評価替えまでに、負担調整措置等の廃止を視野に入れ検討をすべきである。

【納税環境整備・その他】
1 国税通則法等
今後の運用等を踏まえて、税務調査手続きをはじめ各種手続きに係る国
税通則法の改正が行われ、法令解釈通達、事務運営指針及びFAQが公表の
趣旨を包摂した納税者憲章の制定及び国税通則法第1条(目的)への「納税
者の権利利益の保護に資する」旨の文言の追加を検討すべきである。

2 IT化の進展に合わせた税法全体の見直し
電子申告等が普及しつつある今日、自署押印等の手続きについて、紙ベ
ース及び電子ベースのいずれにも適合するよう、抜本的に改める必要があ
る。
また、より一層の税務関係書類に係るスキャナ保存制度の普及定着を図
るために、適正事務処理要件の規定に際しては、課税の公平を保ちつ
つ、中小法人や個人事業者にも配慮したものとすべきである。一方で、出
先におけるスマートフォン等での領収書の撮影・保存による原本の破棄に
ついては、改ざん防止のための手続きや措置を適切に講じるなど慎重な検
討が必要である。

3 公会計制度
国及び地方公共団体は、説明・運用の責任を明確にし、かつ、行政コス
ト等を容易に把握するためには、複式簿記・発生主義会計を基礎とした財
務に係る資料も作成し、公表する必要がある。平成15年度決算分より企
業会計の考え方及び手法を基礎として財務省が作成し、公表している「国
の財務書類」がより一層活用されるように取り組むことが必要である。

4 成年後見制度等への対応
関連する税制及び税務上の取扱い等について、継続して見直すことが必
要である。

【国際税制】
経済のボーダレス化による課税関係の混乱を回避するため、情報交換・徴収共助など執行体制における一層の国際協調に期待したい。
電子商取引の適正な課税のため、BEPS行動計画でも問題視されている伝
統的な物理的恒久的施設概念の修正が必要である。

【震災対応税制】
国家規模の災害危機管理体制整備の一環として、税制においても恒久法
として「災害税制に関する基本法」を立法化すべきである。また、この基
本法は、震災等の災害に対応すべく各税目を横断的に統合し、災害発生後
は直ちに災害税制として機能させるものとすべきである。

【総 評】
今回、日本税理士会連合会が取りまとめた平成28年度税制改正に関する建議書について取り上げたのは、今年12月に提出される自民党政権下での平成28年度税制改正にどこまでこの建議書が取り込まれているかの確認の意味での意図からです。
例年からの内容が盛り込まれておりましたが、消費税率の引上げに伴う低所得者層への負担増いわゆる逆進性への対応策として軽減税率の導入が気になりま
した。日本税理士会連合会がいうように、大部分は低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税率となる恐れがあり、今問題となっている年金以上に出している生活保護支給に近い状況が起こるのではないかと思われます。
今まで若いころに一生懸命に働き、掛けてきた年金を、定年を迎えた老後に支給できるようにしたはずです。ところが今は大変不景気で、病気やけがのため、失業したわけではなく、勤め先が倒産したがために、本人は働く気が合っても、再就職先が見つからず、比較的若いころから生活保護を支給されるようになってしまっています。
日本は「皆平等」「弱者救済」「困ったときはお互い様」の精神が昔からあります。ただ、それを行き届かせることにこだわると、税収増が思ったほど見込めず、国及び地方の借金が一向に減らないのではないでしょうか。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
posted by 7に縁がある税理士 at 18:22| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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