2018年05月07日

税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

 (税理士会員相談室)
 <<消費税>>
● 販売用の住宅を一時的に賃貸した場合の個別対応方式による仕入税額控除
  質 問
  不動産業を営むA社は、販売目的で分譲マンションを取得したが、資金繰りその他の事情を考慮し、一時的に居住用として賃貸することとなった。この場合において、建物の取得費は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して仕入税額控除を計算することができるか。
  回 答
  課税仕入れを行った日(建物取得時)の目的が「販売用」であり、建物取得時点で非課税となる家賃収入が発生する予定がなかったことから、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して問題ないものと思われる。
  検 討
  質問の事例では、建物取得時の用途が販売用であるから、これを一時的に賃貸したとしても、その賃貸により発生する家賃収入(非課税)は、課税仕入の用途区分に影響しないものと考えるべきである。
なお、一時的な目的変更とはいえ、販売目的から賃貸用に変化しているため、後日説明を求められることも考えられる。そのため、法人内部の稟議書等で、取得後の一時的な賃貸その他の経緯を整理しておくと有効である。

● 賃貸中の中古マンションを取得した場合の個別対応方式による仕入税額控除
質 問
不動産業を営むB社は、住宅として賃貸中の中古マンションを、買手を先
に確保した上、転売目的で賃借人付きで丸ごと取得したが、買手の資金の都
合により、実際の売却は決算をまたいで10ヶ月後となった。この場合にお 
いて、建物の取得費は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して仕
入税額控除を計算することができるか。
 なお、当該土地建物の保有期間中の家賃収入は、当社の収益として計上し
ているが、建物部分についての減価償却費は計上せず、決算書には取得した
土地建物を「商品」として表示する予定である。 
  回 答
  本件中古マンションの取得の目的は転売にあることから、最終的に課税売上げが発生することは明らかである。ただし、建物の取得時点で入居者がいることから、最終目的が中古マンションの転売ということであっても、転売までの間、非課税となる家賃収入が発生していることも事実である。したがって、本件建物の取得は、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入に区分せざるを得ないものと思われる。
検 討
  賃借人と買手を含めた三者間の協議により、1か月未満の短期家賃については買手に帰属するなどの取り決めをした場合には、消費税における課税仕入れの用途区分は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分することが認められ、法人税においても寄付金認定などはなく、家賃収入は買手に帰属させることができるものと思われる。
 上述のように非課税収入の収受権を転売先に帰属させることで、「課税資産
の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」から「課税資産の譲
渡等にのみ要するもの」に用途区分を転換させるなどの工夫も必要になるも
のと思われる。

● 用途を変更した場合の修正申告の是非
質 問
不動産業を営むC社は、前事業年度末に貸ビルを建築するための敷地を購
入し、仲介手数料を支払っている。当該前事業年度に係る消費税の確定申告
では、個別対応方式を採用し、仲介手数料は、ビルの家賃収入(課税)に対応
するものとして、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分している。
当初計画をしていた建物の建築がかなわず、不採算となることが判明した。そのため、やむなく当該土地を更地のまま転売することとなった。
この場合において、前期の消費税の確定申告で、全額を仕入税額控除の対象とした仲介手数料について、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」に用途区分を変更した上で、修正申告をする必要があるか。
  回 答
  質問の事例では、仲介手数料支払時の用途が貸ビルを建築するための敷地の取得に係るものであるから、その後に土地の用途が変更になったとしても、当初の用途区分を変更し、修正申告をする必要はない。
検 討
 本件の場合、賃貸ビル建設の計画から販売へと方向転換に至った理由から、用途区分の変更が後発的な事象に基因するため、修正申告の必要性は存しない。そこで、後日その状況の客観性を主張する場面を想定し、販売への用途区分の変更経緯を整理しておくと有効である。
 なお、土地を購入した場合に支払う仲介手数料や土地造成費は、その土地の用途に応じて次のように区分することになる。

【仲介手数料等の課税仕入れの用途区分の判定】
利用方法          課税仕入れの用途区分
       課税資産の    その他の資産    共通して
譲渡等にのみ   の譲渡等にのみ   要するもの
要するもの    要するもの
 ①販売用の          土地の売上高に直接
 土地の場合          対応するもの

 ②購入した 建物の売上げに            土地の売上げと
 土地の上に 直結する建物の            建物の売上げに
 建物を建て、建築費                対するもの
 分譲住宅と
 して販売
 する場合
 
 ③購入した          ・住宅家賃収入に
 土地の上に          直接対応するもの
 建物を建て、         ・建物の建築費
 賃貸住宅と
 して貸付け
 る場合

 ④購入した ・住宅以外の
 土地の上に 家賃収入に直接
 建物を建て、対応するもの         
 店舗として ・建物の建築費
貸付ける場合

 ⑤用途未確定                    売上げと明確な
 の場合                       対応関係のない
                           もの


● 建物の建替えに伴う立退料の取扱い
質 問
  当社は画材関連品の小売業を営んでいるが、従来(20年以上前)から賃借し
ていた店舗用建物の建替えに伴い、立退きの要求を受けた。
 当社としては、立地条件や同業者の減少等により、安定した売り上げが得
られていたこともあり、その補てん分としての立退料を要求したところ、600
万円の支払いを受けることになった。
 この場合、受け取った立退料について、消費税の課税対象となるのか。
  回 答
 原則として、課税対象外取引となるため、消費税の課税対象とはなら
ない。
検 討
 現実問題として、立退料が支払われる場合に、それらが明確に区分されて
支払われることはほとんどなく、その判断が困難であることから、次の通達
が設けられている。
(建物賃貸借契約の解除に伴う立退料の取扱い)
 消基通5-2-7
  建物等の賃借人が賃貸借の目的とされている建物等の契約の解除に伴い賃
借人から収受する立退料(不動産業者等の仲介を行うものを経由して収受する
場合を含む。)は、賃貸借の権利が消滅することに対する補償、営業上の損失
又は移転等に要する実費補償などに伴い収受されるものであり、資産の譲渡
等の対価に該当しない。
(注) 建物等の賃借人たる地位を賃借人以外の第三者に譲渡し、その対価を
立退き料等として収受したとしても、これらは建物等の賃借権の譲渡に
係る対価として受領されるものであり、資産の譲渡等の対価に該当する
ことになるのであるから留意する。
  ここで留意したいのは、通達の注書きの意味である。
   具体例としては、銀座で飲食店(クラブ)を営む法人が、オーナーの了
  解のもとに、「建物賃借権」として第三者に譲渡するケースは、資産の
譲渡であることから、課税対象取引として取り扱われることになる。


【総  評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやすい論点を再確認していただきたい意図からです。
共通して「用途区分を変更」した場合における質問・回答が目に付きました。消費税申告における個別対応方式を採用した場合の3種類の課税仕入れの用途区分も表にしてみました。これは課税売上割合が95%未満の場合、採用されるもので、他に一括比例配分方式があります。
また、余談ですが、平成27年4月1日以後に開始する課税期間から消費税の簡易課税制度におけるみなし仕入率がそれまでの90~50%の刻みだったのが、90~40%の刻みになりました。特に、第四種事業の金融業及び保険業が60%から50%に、第五種事業の不動産業が50%から40%に変更になりましたので、御留意下さいませ。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
posted by 7に縁がある税理士 at 00:35| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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