2018年05月07日

【平成30年度税制改正に関する建議書】

■Ⅰ 税制に対する基本的な視点■

(1)公平な税負担
 納税者が負担能力に応じて分かち合うという意味で公平には、水平的公平、
垂直的公平とともに世代間の公平の問題があり、それらが相互に補完し合うバ
ランスのとれた税制を構築していく必要がある。
(2)理解と納得のできる税制
 租税制度は納税者が理解できるものであり、また、その目的や内容についても納得できるものである必要がある。
(3)適正な事務負担
 納税者に求められる事務負担は過度なものであってはならず、必要かつ最小
限になるように配慮されるべきである。また、適正な事務負担は、税務行政に
おいても考慮する必要がある。
(4)時代に適合する税制
 税制を常に時代に適合するものとすべく、その見直しを継続しなければなら
ない。
(5)透明な税務行政
 公平な税負担の確保と申告納税制度を維持・発展させるためには必要不可欠
であり、納税者からさらなる信頼を得るための施策を行っていく努力が求めら
れる。

■Ⅱ 本建議書における重要県議項目■

1 消費税における単一税率及び請求書等保存方式の維持について
  事業者の事務負担が増加すること等の理由から、日本税理士会連合会は、単一税率制度の維持を強く主張しており、平成35年10月に導入予定の区分経理等のための適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)への移行については、例えば、請求書等に一定の記載事項を追加することにより、区分経理等は十分可能であるとも考えられる。
  事業者の負担と徴税コスト等を考慮し、仕入税額控除方式(インボイス方式を含む。)及び免税点制度等の見直しを含めた消費税制のあり方について抜本的に再検討すべきである。
2 所得控除の抜本的見直しについて
 (1)人的控除
給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であることや、こうした所得計算上の控除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除を縮減した上で、人的控除を中心として課税最低限を確保することが適切である。
 (2)税額控除化の検討
  所得控除の一部については、すべての納税者が一定額まで同一の軽減効果
が得られる税額控除方式又はゼロ税率方式(一定の課税所得まで税率をゼロ
とする方式)への変更を検討すべきである。
3 中小法人に対する繰越欠損金控除制限及び外形標準課税の不適用につい
 て
(1) 繰越欠損金の100%控除制度の維持
中小法人は、大法人と比較して事業基盤の弱い法人が多く、控除制限に
より資金繰りを圧迫することとなる。業績回復の阻害要因とならないよう
に、中小法人に対しては現行の繰越欠損金の100%控除制度を維持すべき
である。
(2) 中小法人への外形標準課税の不適用
中小法人の雇用確保と資金繰りの悪化を防ぐためだけでなく、地方創生
の観点からも、中小法人には法人事業税の外形標準課税を適用すべきでは
ない。
4 償却資産に係る固定資産税の抜本的見直しについて
  償却資産に係る固定資産税を固定資産税とは異なる新たな税目とすること、賦課期日を法人の決算日とすること、申告期限を所得税及び法人税の申告期限と一致させること、将来的にe-TaxとeLTAXを連携又は統一することにより税額確定方式を申告納税方式に変更することなど、抜本的改革の検討をすべきである。
  なお、その際には、設備投資の促進を税制で一層支援し、さらに小規模事業者の事務負担を軽減するために、免税点を300万円(現行150万円)程度に引き上げるべきである。あわせて、申告業務の簡素化のため、減価償却制度における残存価額の廃止、租税特別措置法における30万円未満の少額資産の費用化等、税率の見直しなど、国税の課税標準の計算方法との整合性を図るべきである。
 5 個人事業者番号の導入について
  個人事業者等について、法人番号と同様に運用上の制限が少ない「個人事
業者番号」を導入し、その付番を選択的に受けられるようにする必要があ
る。この結果、法人の番号は法人番号に統一化され、個人番号は個人の税・社
会保障・災害対策のみに利用され、「個人事業者番号」は個人事業者等が経済
活動をする際に広く用いられることとなる。

■Ⅲ 今後の税制改正についての基本的な考え方■

【所得税】
 さらなる就労促進と所得再分配機能の回復の観点から、所得税制を抜本的に
改正すべきである。その際には、所得控除と税額控除・ゼロ税率の役割を整理
し、所得水準にかかわらず一定の税負担の軽減がなされ、かつ、徴税コストの
少ない制度の導入を検討すべきである。
 また、所得の種類に関係なく課税最低限を設定できる所得控除や税額控除な
どによることが望ましい。
【中小法人税制】
 具体的な税制改正に際しては、個人と法人の課税制度の相違を前提にした上で、総合的に検討し、公平・中立・簡素な制度とすべきである。
また、資本金基準や所得金額のほか従業員数など他の指標を組み合わせることが適当である。 
【法人税】
 法人税制の改正に当たっては、税率の引下げと課税ベースのトレードオフに
よる財源確保の視点よりも、適正な課税ベースの構築と確定決算主義の維持を
基本に据えて検討すべきである。主として財源確保上の要請から措置された規
定等については、その効果や妥当性も考慮した上で、早急に見直す必要があ
る。
【消費税】
  これからの我が国の社会保障4経費(年金、医療、介護、子育て)を支えるの
は、消費税である。
 日本税理士会連合会は、概ね次のような姿をあるべき消費税制と考えてい
る。
①単一税率制度が望ましい。
②仕入税額控除方式としては、請求書・領収書等に事業者番号(法人は法人番号、個人は新たに定める個人事業者番号)を記載することを仕入税額控除の要件の一つとする。
③基準期間制度を廃止してすべての事業者を課税事業者とし、その課税期間の課税売上が少額である一定の事業者には、その旨の届出書の提出を要件として、申告を不要とする申告不要制度の採用と、免税事業者であっても仕入税額控除の要件を満たした請求書等の交付を可能とすることで、いわゆる「免税事業者の排除問題」は解決する。
④簡易課税制度については、みなし仕入れ率を引き下げた上で設備投資に係る仕入税額控除を認め、一定の要件を付した上でその課税期間に係る諸届けの提出時期を申告期限までとする。
⑤課税ベースを狭めることとなる非課税の範囲を縮小する。
【相続税・贈与税】
 平成27年から施行されている相続税の基礎控除の引下げ等による課税ベー
スの拡大は、資産格差を是正し、財源調達機能を回復させるための施策ではあ
るが、相続税の申告件数が大幅に増加し、これに伴い延納及び物納の申請も増
加することが見込まれていることから、延納及び物納の手続きを一層周知する
ことが必要であるとともに、各種書類の提出期限や不足資料等の補完期限の延
長についても検討すべきである。
 贈与税については、高齢者世代から若年世代への資産移転を通じて経済の活
性化を図るという社会的要請を受けて、相続税の補完税としての性格を維持し
つつ、その負担軽減を図ることを検討する必要がある。そのためには、より広
く世代間の資産移転を促進するために基礎控除の拡大や税率構造の見直しを行
うべきである。
【地方税】
  地方行政の役割が一層高まっている。税源の偏在性が少ない地方税制を構築
する必要がある。
 法人事業税の外形標準課税の適用対象法人のあり方については、引き続き慎重に検討を行うこととされている。しかし、大法人向けの外形標準課税の拡大は必要であるが、中小法人については適用すべきでない。
 土地に対する固定資産税については、負担調整措置等の廃止を視野に入れた検討をすべきである。
 【納税環境整備・その他】
1 国税通則法等
 税務調査手続きをはじめ各種手続きに係る国税通則法の改正が行われ、法令解釈通達、事務運営指針及びFAQが公表の趣旨を包摂した納税者憲章を制定するとともに、国税通則法第1条(目的)に「納税者の権利利益の保護に資する」旨の文言を追加すべきである。
2 閲覧サービス
 適正申告のための納税環境整備の観点から、提出された申告書等の閲覧及びコピーの交付等(カメラ撮影およびスキャナによる読み取り)に係る手続を緩和し、基本的な事項については国税通則法に規定すべきである。
3 社会保障・税一体改革に伴う見直し
社会保障・税一体改革に際しては、社会保険料と所得税・住民税の負担のバランス等を考慮し、負担割合及び負担の連続性等について見直す必要がある。
4 公会計制度
 国及び地方公共団体の財政状態や、行政コストの内容等を容易に把握するため、「国の財務書類」がより一層活用されるように取り組むことが必要である。
5 成年後見制度等への対応
関連する税制及び税務上の取扱い等について継続して見直すことが必要である。
【国際税制】
 中小法人の国外取引活動を支援する措置の検討や未決済デリバティブ取引に
係る税務の取扱い等の見直しをするとともに、個人の資産税分野における課税
の公平を確保するための執行体制の一層の整備が必要である。  
 二重非課税については国際的に対処し、不正な資産隠しに対しては国際的な課税ルールを構築することが必要である。
 移転価格税制については、事前確認と相互協議(我が国の税務行政庁と海外子会社所在国の税務行政庁の間で国家間協議)の一層の迅速化と予見可能性を高めることが必要である。
【災害対応税制】
 恒久法として「災害税制に関する基本法」を立法化すべきであると要望してきた。


【総  評】
今回、日本税理士会連合会が取りまとめた平成30年度税制改正に関する建議書について取り上げたのは、今年12月に提出される自民党政権下での平成30年度税制改正にどこまでこの建議書が取り込まれているかの確認の意味での意図からです。

例年からの内容が盛り込まれておりましたが、消費税率の引上げに伴う低所得者層への負担増いわゆる逆進性への対応策として軽減税率の今後の導入の行方が気になりました。日本税理士会連合会がいうように、大部分は低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税率となる恐れがあり、今問題となっている年金以上に支給している生活保護の支給に近い状況が起こるのではないかと思われます。
今まで若いころに一生懸命に働き、掛けてきた年金を、定年を迎えた老後に支給できるようにしたはずです。ところが今は大変不景気で、病気やけがのため、失業したわけではなく、勤め先が倒産したがために、本人は働く気が合っても、再就職先が見つからず、比較的若いころから生活保護を支給されるようになってしまっています。

日本は「皆平等」「弱者救済」「困ったときはお互い様」の精神が昔からあります。ただ、それを行き届かせることにこだわると、税収増が思ったほど見込めず、国及び地方の借金が一向に減らないのではないでしょうか。

しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。


posted by 7に縁がある税理士 at 14:30| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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