2020年01月11日

令和1年 税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

(税理士会員相談室)
<<資産税>>
● 交換の特例の「交換のために取得したものでないこと」の要件
質 問
A は、長期保有の P 宅地を B が 2 年前に取得した Q 宅地と交換する。両宅地は等価
であり、A は、交換後の Q 宅地を宅地の用に供する。A は、固定資産の交換の場合の譲渡
所得の特例(以下「交換の特例」という。)の適用を 受ける考えである。
交換の特例には、対象資産の要件として、相手方が「交換のために取得したと認められる
ものを除く」との要件があるが、A は、B が 2 年前に Q 宅地を 取得したことは、取引の
際の資料等により確認しているものの、B がそれを 交換のために取得したかどうかについ
ては判定することができない。 A の交換は、Q 宅地を B が交換のために取得したと認定
されて、A の交換の 特例の適用が否認されることにはならないだろうか。
回 答
2 年前に B が Q 宅地を取得した目的がその後に行う交換のためであったことが客観的に
明らかでない場合には、「交換のために取得したと認められる ものを除く」という特例適用
除外事由をクリアーしたものとして、交換の特 例を適用することができる。
検 討
交換の特例の適用要件には、①各当事者が 1 年以上所有していた固定資産 であること、
②交換取得資産につき相手方が交換のために取得したと認められるものでないことが含ま
れている。上記要件のうち、①の要件は譲渡資産及び取得資産の両方に適用される。取得資
産についての「1 年以上所有」の 要件は、昭和 40 年度の税制改正により追加されたもの
であり、その改正前 は譲渡資産のみの要件であった。他方、取得資産に係る②の要件は、
①の改 正前から存在している。
昭和 40 年度改正当時の大蔵省主税局の担当官の説明によれば、相手方所有であった取
得資産についても「1 年以上の所有要件」を追加し、これを外形基準として上記②の要件の
判定を容易にしたのがその改正の趣旨であったことが認められる(昭和 40 年版「改正税法
のすべて」大蔵財務協会 35 頁)。

● 譲渡資産が自己の事業用の試算でない場合の買換え等の特例の適用
質 問
甲は、10 年ほど前に、営んでいた大都市郊外での農業経営は、農業経営移譲年金を受給
するために甲と同居し生計を一にしている長男乙に移譲した。
甲は、この度、公共事業のために自己が所有し乙が営む農業の用に供して きた農地 1,800
㎡を買い取られ、対価補償金 7000 万円を受け取った。補償金収入で代替資産としての土
地の買換えを行う意向はなく、自己が所有する土地上に 7000 万円の建築費用を投じて貸家
建物数棟を新築したいと思っている。
甲が行う予定の貸家の新築について、租税特別措置法 33 条 1 項に規定する 収用等に
より資産を買い取られた場合の代替資産の取得の特例(以下「代替資 産取得の特例」とい
う。)の適用を受けることができるか。
回 答
甲は、新築して貸家の用に供する建物を代替資産として、代替資産取得の特例を適用する
ことができる。
検 討
代替資産取得の特例の代替資産となるのは、
①個別法としての譲渡資産の種類区分ごとの「同種の資産」(措令 22④)、
②一組法としての譲渡資産の用途区分に応ずる「一組の資産」(措令 22⑤)、
③事業継続法としての譲渡資産がその譲渡人の事業用であった場合に、その者が事業用に
供するために取得する上記①②に該当する資産以外の資産で ある(措令 22⑥)。
甲が新築する貸家建物は、上記③の事業継続法の「事業用資産」に該当する。
なお、この場合における甲の譲渡資産は、甲の事業用に供されていたもので はなく、長男
乙の事業用に供されていたものであって、甲の取得資産は、甲 自身の事業用に供するもの
である。
しかし、事業用資産の所有者と事業経営者が異なることになった場合においても、双方が
生計を一にしているときは、その譲渡資産及び買換資産のいずれもがその譲渡・買換えをし
た者の事業用資産であるとみて、この特例を 適用する取扱いが定められている(措通 33
43)。
この取扱いは、特定の事業用資産の買換えの特例(措法 37①)にも、準用される(措通 37
22)。

● 低額譲受益課税を受けないで配偶者控除の適用をする贈与税対策
質 問
丁は、このほど丙との婚姻期間が 20 年以上となったので、丙から通常の売買価額が
4600 万円と認められる自宅の土地家屋(以下「自宅不動産」という。)
全部の贈与をしてもらい、贈与税の配偶者控除 2000 万円(以下「本件控除」という。)の適用
を受けたいと考えた。
丁は、税務署の担当部門に出向いて相談したところ、自宅不動産の相続税 評価額が 3,500
万円であり、丁が自宅不動産の贈与を受けて本件控除の適用をしても贈与税が 450 万円余
もかかることが判明したことから、その計画は断念した。
その後に丁の父が死亡し、丁が遺産中の預金を相続して、相続税納付後の 預金額 3000
万円が残存している。丁は、その残存預金額を原資に丙から自 宅不動産を買い受けること
で、当初本件控除の適用対象財産として受贈予定 であった自宅不動産を改めて取得するつ
もりである。
この場合には、丁に対する贈与税の課税関係は、どのようになるのか。
回 答
丁が丙から自宅不動産を買い受ける場合は、丁に対して、自宅不動産の相 続税評価額と
その買受価額との差額でなく、通常の取引価額 4600 万円と買 受価額 3000 万円との差額
に相当する低額譲受益 1600 万円を対象に贈与税が課税される(平成元年 3 月 29 日付け個別
通達)。
しかし、丁がこの受贈益 1600 万円につき、丙から自宅不動産に係る居住用不動産に係る
居住用不動産の一部の贈与を受けたとして贈与税の申告をすればこれが認められる。
検 討
丁の本件控除の適用関係について検討してみると、相続税法 21 条の 6 第 1 項に規定する
「居住用不動産」でも「居住用不動産を取得するための金銭」でもなく、自宅不動産を低額で
譲り受けたことによる「経済的利益の享受」であるから、これが本件控除の対象財産とはな
らないと考えられる。
しかしながら、この売買では、居住用不動産に該当する自宅不動産のうち 一部が売買され
残余が贈与されたと見ることができ、本件控除では居住用不 動産の一部の贈与も適用する
ことが可能であるから、この自宅不動産に係る 低額譲受益額 1600 万円につき居住用不動
産の一部贈与があったとして贈与 税の申告書を提出すれば、本件控除を適用することがで
きることになる。

● 短期前払費用通達の運用上の留意点
質 問
同族会社である A 社は、代表取締役 B 氏の所有する不動産を借用して、事 業を営んで
いる(3 月決算法人)。A 社は資金的な余裕があり、かつ、B 氏からの要望もあったため、家
賃等の支払方法を 1 年分のまとめ支払いに変更する ことを考えている。
法人税の短期前払費用の取扱いは、実務上浸透しているようであるが、運用上注意しなけ
ればならない点をご教示いただきたい。
回 答
短期前払費用の取扱いは、①契約に基づくものであること、②継続的に役 務の提供を受
けるものであること、③1 年以内に提供を受ける役務に係るも のを支払ったこと、④継続
して支払った日の属する事業年度の損金の額に算入していること、⑤収益と対応させるべ
き費用でないこと、という要件が付 されている(法基通 2-2-14)。
そのため、通達の運用上は、これらの要件を逸脱しないよう配慮する必要が ある。
検 討 (1) 通達運用上の留意点 ② 「継続的に役務の提供を受けるもの」については、等質等量のサービス が契約期間中
に継続的に提供される必要がある。本件は、不動産の提供に 基づく家賃等であるため、
その解釈の範疇にある。なお、税理士の顧問契約等については、役務の提供度合いが等
質等量とは言えないケースが多い ため、通達の適用にあたって否定的な考えが支配的
である。
③ 「1 年以内に提供を受ける役務に係るものを支払っていること」は、当年 4 月から翌
年 3 月分の家賃等であるならば、当年 3 月末に支払ったもの であれば許容範囲である
と思うが、当年 2 月に支払ったものについては、短期前払費用の取扱いは適用されな
い。つまり、役務の受入れの開始前に対価の支払が行われ、その支払時から 1 年を超え
る期間を支払対象期間とするようなものは、通達の適用から除外されていることを読
み取らなければならない。
なお、家賃等が未払の場合には、本通達の対象とならない。
④ 本件のような同族関係者間取引であれば、一旦変更された契約内容については、むや
みに変えるべきではない。 (2) 想定しておかなければいけない留意事項 短期前払費用の取扱いの適用により、支払 者側は損金の一時計上を行う ことになるが、反射的に受取側は収益として認識され
るため、変更年度の 課税所得の増幅効果が生じる。
そこで、月額から年額への変更は、単に 12 倍した金額の家賃等の取り 決めでは
なく金利調整分のディスカウントを配慮する、又は事実上の値上げの意味合いを整備
する等の必要性について、併せて検討するべきである。
最後に、所有権移転外ファイナンスリース等の要件を満たすような賃貸 借契約で
あった場合(定期借家契約等)には、短期前払費用の取扱いが適用 できなくなる。


【総 評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやす
い論点を再確認していただきたい意図からです。
特に婚姻関係 20 年以上の夫婦間における「低額譲受益課税を受けないで配偶者控除の
適用をする贈与税」に関しては、夫婦間で行う売買価額が自宅不動産の通常の売買価額
4600 万円なのか相続税評価額 3500 万円なのかを注意して行い、居住用不動産の一部贈与
があったとして贈与税の申告書を提出しなければなりません。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
posted by 7に縁がある税理士 at 15:48| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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