令和6年度税制改正では、まずは、物価上昇を上回る賃金上昇の実現を最優先の課題とした。
令和6年度税制改正においては、デフレ脱却に向けた税制面での取組みに加えて、税制に対する国民の信頼を高める意味においても、人口減少、経済のグローバル化など、 国内外の経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直しを行う。
以下、令和6年度税制改正の主要項目及び今後の税制改正に当たっての基本的考え 方を述べる。
1. 構造的な賃上げの実現
(1) 所得税・個人住民税の定額減税
デフレに逆戻りさせないための措置の一環として、令和6年の所得税・個人住民 税の定額減税を実施し、賃金上昇と相まって、国民所得の伸びが物価上昇を上回る 状況をつくり、デフレマインドの払拭と好循環の実現につなげていく。
3. 経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し
(1)子育て支援に関する政策税制
① 子育て世帯等に対する住宅ローン控除の拡充
子育て世帯及び若者夫婦世帯における借入限度額について、子育て支援の 観点からの上乗せを行う。具体的には、新築等の認定住宅については500万 円、新築等のZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅については1,000万円の借入限度額の上乗せ措置を講ずる。
また、子育て世帯においては、住宅取得において駅近等の利便性がより重視されること等を踏まえ、新築住宅の床面積要件について合計所得金額1,000万円 以下の者に限り40㎡に緩和する。
東日本大震災の被災者向け措置についても、同様に、子育て世帯及び若者夫婦 世帯における借入限度額の上乗せ措置を講ずる。また、新築住宅の床面積要件を 緩和する。
なお、所得税額から控除しきれない額については、現行制度と同じ控除限度額 の範囲内で個人住民税額から控除する。この措置による個人住民税の減収額は、 全額国費で補填する。
③ 子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充
所得税において、生命保険料控除における新生命保険料に係る一般枠(遺 族保障)について、23歳未満の扶養親族を有する場合には、現行の4万円の 適用限度額に対して2万円の上乗せ措置を講ずることとする。
なお、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除 の合計適用限度額については、実際の適用控除額の平均が限度額を大きく 下回っている実態を踏まえ、現行の12万円から変更しない。
6.扶養控除等の見直し
児童手当については、所得制限が撤廃されるとともに、支給期間について高校生年代まで延長されることとなる。
これを踏まえ、16歳から18歳までの扶養控除について、15歳以下の取扱いとのバ ランスを踏まえつつ、高校生年代は子育て世帯において教育費等の支出がかさむ時期 であることに鑑み、現行の一般部分(国税38万円、地方税33万円)に代えて、かつて高校実質無償化に伴い廃止された特定扶養親族に対する控除の上乗せ部分(国税25万円、 地方税12万円)を復元し、高校生年代に支給される児童手当と合わせ、全ての子育て世帯に対する実質的な支援を拡充しつつ、所得階層間の支援の平準化を図ることを目指 す。
第二 令和6年度税制改正の具体的内容
一 個人所得課税
3 子育て支援に関する政策税制
(国 税)
(1) 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について、次の措置を講ずる。
① 個人で、年齢40歳未満であって配偶者を有するもの、年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者又は年齢19歳未満の扶養親族を有する者(以下「子育て特例対象個人」という。)が、認定住宅等の新築若しくは認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得又は買取再販認定住宅等の取得(以下「認定住宅等の新築等」という。)をして令和6年1月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)を次のとおりとして本特例の適用ができることとする。
住宅の区分
認定住宅
借入限度額
5000万円
ZEH水準省エネ住宅 4500万円
省エネ基準適合住宅 4000万円
② 認定住宅等の新築又は認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得に係る床面積要件の緩和措置について、令和6年12月31日以前に建築確認を受けた家屋についても適用できることとする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(注1) 「認定住宅等」とは、認定住宅、ZEH水準省エネ住宅及び省エネ基準適合 住宅をいい、「認定住宅」とは、認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう。
以下同じ。
(注2) 「買取再販認定住宅等」とは、認定住宅等である既存住宅の内宅地建物取引 業者により一定の増改築等が行われたものをいう。
(注3) 上記①及び②について、その他の要件等は、現行の住宅借入金等を有する場 合の所得税額の特別控除と同様とする。
【総 評】
今回は令和6年度税制改正大綱に関して、検証していきました。
特に目新しく感じたのは、個人所得課税では子育て支援に関する政策税制が目に付きました。