(1)
公平な税負担
納税者が負担能力に応じて分かち合うという意味で公平には、水平的公平、垂直的公
平とともに世代間の公平の問題があり、それらが相互に補完し合うバランスのとれた税
制を構築していく必要がある。
(2)
理解と納得のできる税制
租税制度は納税者が理解できるものであり、また、その目的や内容についても納得で
きるものである必要がある。
(3)
適正な事務負担
納税者に求められる事務負担は過度なものであってはならず、必要かつ最小限になる
ように配慮されるべきである。また、適正な事務負担は、税務行政においても考慮する
必要がある。
(4)
時代に適合する税制
税制を常に時代に適合するものとすべく、その見直しを継続しなければならない。
(5)
透明な税務行政
公平な税負担の確保と申告納税制度を維持・発展させるためには必要不可欠であり、納
税者からさらなる信頼を得るための施策を行っていく努力が求められる。
■Ⅱ 本建議書における重要建議項目■
1
少子化対策について、税制面での検討を行うこと。
①
年少扶養親族や高校生世代の扶養親族に係る所得控除と給付等との併用
②
配偶者の就業調整を減少させるためのさらなる検討
③
不妊治療や出産費用等に係る医療費控除の拡充
④
教育等に関する支出についての税制支援
2
年末調整の実施時期及び所得税の確定申告期間を拡大すること。
(2)所得税の確定申告期間
1月1日から3月31日までとすべきである。
3
役員給与税制について見直しを行うとともに、中小企業者等の法人税率の特例の適用期限について延長すること。
4
消費税の軽減税率制度を廃止し単一税率制度に戻し、インボイス制度導入に伴う各種特例措置について適用期限を延長すること。
5
雑損控除の適用につき「特定非常災害により生じた損失」については、控除の順番を
見直すとともに、繰戻還付制度を創設すること。
■Ⅲ 今後の税制改正についての基本的な考え方■
【所得税】
個人所得課税においては、所得計算上の控除を縮減し、基礎的な人的控除を中心とした制
度を構築すべきである。
【中小法人税制】
資本金基準や所得金額のほか従業員数など他の指標を組み合わせることが適当である。
【法人税】
法人税制の改正にあたっては、課税ベースのあるべき姿についての検討がなされるべきである。
【消費税】
日本税理士会連合会は、概ね次のような姿をあるべき消費税制と考える。
①単一税率制度とすべきこと。
③非課税取引の範囲については縮小を前提とした検討とすること。
【相続税・贈与税】
贈与税が空洞化し、相続税の補完税としての機能を弱めるとともに、資産格差の固定化につながることから、適用期限の到来を見据えて廃止又は縮小すべきである。
【地方税】
偏在性の少ない税制を構築することが必要がある。
【納税環境整備・その他】
2 国税通則法等
複雑で難解な税法及び税務手続を専門家でない納税者が正しく理解することは必ずしも容易ではなく、納税者が誤った理解の下に不利益を被る可能性も高い状況において、納税
者の最低限の権利保護を目的として、国税通則法第1条(目的)に「納税者の権利利益の保護に資する」旨の文言を追加すべきである。
3 公会計制度
国及び地方公共団体の財政状態や、行政コストの内容等を容易に把握するため、「国の財務書類」等がより一層活用されるように取り組むことが必要である。
【国際税制】
国内の企業に意図せざる課税が及ぶことのないように配慮すべきである。
【災害対応税制】
災害による損失と復興に要する支出について税制上のさらなる措置が必要である。
■Ⅳ 税制改正建議項目■
【所得税・法人税等 共通項目】
耐用年数の短縮制度において既存資産の経過年数を考慮した耐用年数(例示として減価償
却資産の耐用年数等に関する省令第3条に規定する中古資産の耐用年数など)で償却でき
る方法を追加すべきである。
『所得税』
業務用不動産の譲渡損失について、損益通算及び翌期以降の繰越しを認めること。
納付期限を給与等の支払月の翌月末日に改めるとともに、納期特例適用者に係る納付期
限については、1月と7月の各末日とすべきである。
【中小法人税制】
中小法人の減価償却方法は定率法と定額法の選択適用を維持すること。
【法人税】
少額減価償却資産等の取得価額基準を引き上げること。
交際費等の損金不算入制度について、損金算入要件を緩和すること。
【消費税】
納税義務免除制度及び簡易課税制度について、基準期間制度を廃止し、当該課税期間によ
る判定とすること。
簡易課税制度のみなし仕入率を引き下げ、設備投資に対する別枠での控除を認めること。
【総 評】
今回、日本税理士会連合会が取りまとめた令和7年度税制改正に関する建議書について取り上げたのは、今年12月に提出される自民党政権下での令和7年度税制改正にどこまでこの建議書が取り込まれているかの確認の意味での意図からです。
例年からの内容が盛り込まれておりましたが、消費税に関しては、日本税理士会連合会がいうように、大部分は低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税率となる恐れがあり、今問題となっている年金以上に支給している生活保護の支給に近い状況が起こるのではないかと思われます。
今まで若いころに一生懸命に働き、掛けてきた年金を、定年を迎えた老後に支給できるようにしたはずです。ところが今は大変不景気で、病気やけがで失業したわけではなく、勤め先が倒産したがために、本人は働く気が合っても、再就職先が見つからず、比較的若いころから生活保護を支給されるようになってしまっています。
日本は「皆平等」「弱者救済」「困ったときはお互い様」の精神が昔からあります。ただ、それを行き届かせることにこだわると、税収増が思ったほど見込めず、国及び地方の借金が一向に減らないのではないでしょうか。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。