2020年01月11日

【令和 2 年度税制改正に関する建議書】

■Ⅰ 税制に対する基本的な視点■
(1) 公平な税負担 納税者が負担能力に応じて分かち合うという意味で公平には、水平的公平、垂直的公
平とともに世代間の公平の問題があり、それらが相互に補完し合うバランスのとれた税
制を構築していく必要がある。 (2) 理解と納得のできる税制 租税制度は納税者が理解できるものであり、また、その目的や内容についても納得で
きるものである必要がある。 (3) 適正な事務負担 納税者に求められる事務負担は過度なものであってはならず、必要かつ最小限になる
ように配慮されるべきである。また、適正な事務負担は、税務行政においても考慮する
必要がある。 (4) 時代に適合する税制 税制を常に時代に適合するものとすべく、その見直しを継続しなければならない。 (5) 透明な税務行政 公平な税負担の確保と申告納税制度を維持・発展させるためには必要不可欠であり、納
税者からさらなる信頼を得るための施策を行っていく努力が求められる。

■Ⅱ 本建議書における重要建議項目■

1 消費税における単一税率及び請求書等保存方式を維持すること
事業者の事務負担が増加すること等の理由から、日本税理士会連合会は、単一税率制度に
すべきである。
令和 5 年 10 月に導入予定の区分経理等のための適格請求書等保存方式(いわゆるインボ
イス方式)への移行については、例えば、請求書等に一定の記載事項を追加することにより、
区分経理等は十分可能である。
事業者の負担と徴税コスト等を考慮し、仕入税額控除方式(インボイス方式を含む。)及び
免税点制度等の見直しを含めた消費税制のあり方について抜本的に再検討すべきである。
2 基礎的な人的控除のあり方を見直すとともに、所得計算上の控除から基礎控除へのシフ
トを進めること。
給与所得控除及び公的年金等控除の水準が過大であることや、こうした所得計算上の控
除が適用されない事業所得者等とのバランスも踏まえ、所得計算上の控除を縮減した上で、
基礎的な人的控除を引き下げるべきである。

■Ⅲ 今後の税制改正についての基本的な考え方■

【所得税】
所得の種類に関係なく課税最低限を設定できる基礎的な人的控除を中心とした制度を構
築すべきである。
【中小法人税制】
具体的な税制改正に際しては、個人と法人の課税制度の相違を前提にした上で、総合的に
検討し、公平・中立・簡素な制度とすべきである。
資本金基準や所得金額のほか従業員数など他の指標を組み合わせることが適当である。
【法人税】
法人税制の改正に当たっては、税率の引下げと課税ベースのトレードオフによる財源確
保の視点ではなく、適正な課税ベースの構築を基本に据え、公平・中立が維持できる制度と
なるようにすべきである。
【消費税】
日本税理士会連合会は、概ね次のような姿をあるべき消費税制と考えている。
①単一税率制度が望ましい。
②仕入税額控除方式としては、現行の請求書等保存方式を維持することが適切である。
③基準期間における課税売上高による納税義務の判定を廃止し、当年又は当事業年度にお
ける課税売上高により課税事業者の判定をし、業者とした上で、課税売上高が一定額以下
の場合は、申告不要制度等を創設する。
④簡易課税制度については、みなし仕入れ率を引き下げた上で設備投資に係る仕入税額控
除を認め、一定の要件を付した上でその課税期間に係る諸届けの提出時期を申告期限ま
でとする。
⑤課税ベースを狭めることとなる非課税の範囲を縮小する。
【相続税・贈与税】
高齢者世代から若年世代への資産移転を通じて経済の活性化を図るという社会的要請が
あり、贈与税において、相続税の補完税としての機能を弱めるとともに、資産格差の固定化
につながることから、適用期限の到来を見据えて廃止又は縮小すべきである。世代間の資産
移転を促進するためには、贈与税の基礎控除の拡大や税率構造の見直しを行うべきである。
【地方税】
地方行政の役割が一層高まっており、税源の偏在性が少ない地方税制を構築する必要が
ある。
法人事業税の外形標準課税の適用対象法人については、大法人向けの外形標準課税の拡
大は必要であるが、中小法人については、適用すべきでない。
【納税環境整備・その他】
2 国税通則法等
複雑で難解な税法及び税務手続を専門家でない納税者が正しく理解することは必ずしも
容易ではなく、納税者が誤った理解のもとに不利益を被る可能性も高い状況において、納税
者の最低限の権利保護を目的として、諸外国にも例の多い納税者憲章を制定するとともに、
国税通則法 第 1 条(目的)に「納税者の権利利益の保護に資する」旨の文言を追加すべきで
ある。
3 申告書等閲覧サービス
目的外使用をしない旨の同意文書の提出、手数料の納付などの措置を講じればよく、納税
者の利便性と正確性を確保するためにも、同サービスの運用に当たっては、コピーの交付等
(カメラ撮影およびスキャナによる読み取り)を可能とすべきである。
4 公会計制度
国及び地方公共団体の財政状態や、行政コストの内容等を容易に把握するため、「国の財
務書類」がより一層活用されるように取り組むことが必要である。
5 成年後見制度等への対応
関連する税制及び税務上の取扱い等を見直すことが必要である。
【災害対応税制】
恒久法として「災害税制に関する基本法」を立法化すべきであると要望してきた。

■Ⅳ 税制改正建議項目■

【所得税】
個人が業務用不動産を譲渡したことにより生じた譲渡損失についても、損益通算等を認
めるべきである。
【法人税】
損金不算入とする役員給与を明示した上で、役員報酬及び賞与について株主総会等の決
議によって事前に確定した金額の範囲までの部分については、不相当に高額なものを除き、
原則として損金の額に算入すべきである。
【消費税】
基準期間における課税売上高による納税義務の判定を廃止し、すべての事業者を課税事
業者とした上で、当年又は当事業年度の課税売上高が一定額以下の場合は、選択による申告
不要制度等を創設すべきである。
なお、簡易課税制度についても同様に、現行の基準期間による判定ではなく当年又は当事
業年度の課税売上高が一定額以下の場合には確定申告時に選択できるよう改正すべきであ
る。


【総 評】
今回、日本税理士会連合会が取りまとめた令和 2 年度税制改正に関する建議書について
取り上げたのは、今年 12 月に提出される自民党政権下での令和 2 年度税制改正にどこまで
この建議書が取り込まれているかの確認の意味での意図からです。

例年からの内容が盛り込まれておりましたが、消費税率の引上げに伴う低所得者層への負
担増いわゆる逆進性への対応策として軽減税率の今後の導入の行方が気になりました。日
本税理士会連合会がいうように、大部分は低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税率とな
る恐れがあり、今問題となっている年金以上に支給している生活保護の支給に近い状況が
起こるのではないかと思われます。

今まで若いころに一生懸命に働き、掛けてきた年金を、定年を迎えた老後に支給できるよう
にしたはずです。ところが今は大変不景気で、病気やけがのため、失業したわけではなく、
勤め先が倒産したがために、本人は働く気が合っても、再就職先が見つからず、比較的若い
ころから生活保護を支給されるようになってしまっています。

日本は「皆平等」「弱者救済」「困ったときはお互い様」の精神が昔からあります。ただ、そ
れを行き届かせることにこだわると、税収増が思ったほど見込めず、国及び地方の借金が一
向に減らないのではないでしょうか。

しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
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令和1年 税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

(税理士会員相談室)
<<消費税>>
● 販売用の住宅を一時的に賃貸した場合の個別対応方式による仕入税額控除
質 問
不動産業を営む A 社は、販売目的で分譲マンションを取得したが、資金繰りその他の
事情を考慮し、一時的に居住用として賃貸することとなった。この場合において、建物の
取得費は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分して仕入税額控除を計算すること
ができるか。
回 答
課税仕入れを行った日(建物取得時)の目的が「販売用」であり、建物取得時点で非課税と
なる家賃収入が発生する予定がなかったことから、「課税資産の譲渡等にのみ要するも
の」に区分して問題ないものと思われる。
検 討
質問の事例では、建物取得時の用途が販売用であるから、これを一時的に賃貸したとし
ても、その賃貸により発生する家賃収入(非課税)は、課税仕入の用途区分に影響しないも
のと考えるべきである。
なお、一時的な目的変更とはいえ、販売目的から賃貸用に変化しているため、後日説明
を求められることも考えられる。そのため、法人内部の稟議書等で、取得後の一時的な賃
貸その他の経緯を整理しておくと有効である。

● 賃貸中の中古マンションを取得した場合の個別対応方式による仕入税額控除
質 問
不動産業を営む B 社は、住宅として賃貸中の中古マンションを、買手を先に確保した
上、転売目的で賃借人付きで丸ごと取得したが、買手の資金の都合により、実際の売却は
決算をまたいで 10 ヶ月後となった。この場合において、建物の取得費は「課税資産の譲
渡等にのみ要するもの」に区分して仕入税額控除を計算することができるか。
なお、当該土地建物の保有期間中の家賃収入は、当社の収益として計上しているが、建
物部分についての減価償却費は計上せず、決算書には取得した 土地建物を「商品」とし
て表示する予定である。
回 答
本件中古マンションの取得の目的は転売にあることから、最終的に課税売上げが発生
することは明らかである。ただし、建物の取得時点で入居者がいることから、最終目的が
中古マンションの転売ということであっても、転売までの間、非課税となる家賃収入が発
生していることも事実である。したがって、本件建物の取得は、課税資産の譲渡等とその
他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入に区分せざるを得ないものと思われる。
検 討
賃借人と買手を含めた三者間の協議により、 1 か月未満の短期家賃については買手に帰
属するなどの取り決めをした場合には、消費税における課税仕入れの用途区分は「課税資
産の譲渡等にのみ要するもの」に区分することが認められ、法人税においても寄付金認定
などはなく、家賃収入は買手に帰属させることができるものと思われる。
上述のように非課税収入の収受権を転売先に帰属させることで、「課税資産の譲渡等と
その他の資産の譲渡等に共通して要するもの」から「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」
に用途区分を転換させるなどの工夫も必要になるものと思われる。

● 用途を変更した場合の修正申告の是非
質 問
不動産業を営む C 社は、前事業年度末に貸ビルを建築するための敷地を購入し、仲介
手数料を支払っている。当該前事業年度に係る消費税の確定申告では、個別対応方式を採
用し、仲介手数料は、ビルの家賃収入(課税)に対応するものとして、「課税資産の譲渡等
にのみ要するもの」に区分している。
当初計画をしていた建物の建築がかなわず、不採算となることが判明した。そのため、
やむなく当該土地を更地のまま転売することとなった。
この場合において、前期の消費税の確定申告で、全額を仕入税額控除の対象とした仲
介手数料について、「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」に用途区分を変更した上
で、修正申告をする必要があるか。
回 答
質問の事例では、仲介手数料支払時の用途が貸ビルを建築するための敷地の取得に係
るものであるから、その後に土地の用途が変更になったとしても、当初の用途区分を変更
し、修正申告をする必要はない。
検 討
本件の場合、賃貸ビル建設の計画から販売へと方向転換に至った理由から、用途区分の
変更が後発的な事象に基因するため、修正申告の必要性は存しない。そこで、後日その状
況の客観性を主張する場面を想定し、販売への用途区分の変更経緯を整理しておくと有
効である。
なお、土地を購入した場合に支払う仲介手数料や土地造成費は、その土地の用途に応じ
て次のように区分することになる。

【仲介手数料等の課税仕入れの用途区分の判定】
利用方法      課税仕入れの用途区分
        課税資産の  その他の資産    共通して
        譲渡等にのみ  の譲渡等にのみ   要するもの
        要するもの  要するもの
①販売用の      土地の売上高に直接
土地の場合      対応するもの
②購入した  建物の売上げに       土地の売上げと
土地の上に  直結する建物の       建物の売上げに
建物を建て、  建築費          対するもの
分譲住宅と
して販売
する場合
③購入した      ・住宅家賃収入に
土地の上に       直接対応するもの
建物を建て、     ・建物の建築費
賃貸住宅と
して貸付け
る場合
④購入した   ・住宅以外の
土地の上に   家賃収入に直接
建物を建て、  対応するもの
店舗として  ・建物の建築費
貸付ける場合
⑤用途未確定           売上げと明確な
の場合             対応関係ないもの

● 建物の建替えに伴う立退料の取扱い
質 問
当社は画材関連品の小売業を営んでいるが、従来(20 年以上前)から賃借していた店舗
用建物の建替えに伴い、立退きの要求を受けた。
当社としては、立地条件や同業者の減少等により、安定した売り上げが得られていたこ
ともあり、その補てん分としての立退料を要求したところ、600 万円の支払いを受けるこ
とになった。
この場合、受け取った立退料について、消費税の課税対象となるのか。
回 答
原則として、課税対象外取引となるため、消費税の課税対象とはならない。
検 討
現実問題として、立退料が支払われる場合に、それらが明確に区分されて支払われるこ
とはほとんどなく、その判断が困難であることから、次の通達が設けられている。
(建物賃貸借契約の解除に伴う立退料の取扱い)
消基通 5-2-7
建物等の賃借人が賃貸借の目的とされている建物等の契約の解除に伴い賃借人から収
受する立退料(不動産業者等の仲介を行うものを経由して収受する 場合を含む。)は、賃
貸借の権利が消滅することに対する補償、営業上の損失又は移転等に要する実費補償な
どに伴い収受されるものであり、資産の譲渡等の対価に該当しない。
(注) 建物等の賃借人たる地位を賃借人以外の第三者に譲渡し、その対価を立退き料等
として収受したとしても、これらは建物等の賃借権の譲渡に係る対価として受領さ
れるものであり、資産の譲渡等の対価に該当することになるのであるから留意する。
ここで留意したいのは、通達の注書きの意味である。
具体例としては、銀座で飲食店(クラブ)を営む法人が、オーナーの了解のもとに、

「建物賃借権」として第三者に譲渡するケースは、資産の譲渡であることから、課税
対象取引として取り扱われることになる。

【総 評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやす
い論点を再確認していただきたい意図からです。
共通して「用途区分を変更」した場合における質問・回答が目に付きました。消費税申告に
おける個別対応方式を採用した場合の 3 種類の課税仕入れの用途 区分も表にしてみました。
これは課税売上割合が 95%未満の場合、採用される もので、他に一括比例配分方式があり
ます。
また、余談ですが、平成 27 年 4 月 1 日以後に開始する課税期間から消費税の簡易課税制
度におけるみなし仕入率がそれまでの 90~50%の刻みだったのが、90~40%の刻みになり
ました。特に、第四種事業の金融業及び保険業が 60%から 50%に、第五種事業の不動産業
が 50%から 40%に変更になりましたので、御留意下さいませ。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
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令和1年 税理士会員向けの会員相談室に寄せられた相談事例

(税理士会員相談室)
<<資産税>>
● 交換の特例の「交換のために取得したものでないこと」の要件
質 問
A は、長期保有の P 宅地を B が 2 年前に取得した Q 宅地と交換する。両宅地は等価
であり、A は、交換後の Q 宅地を宅地の用に供する。A は、固定資産の交換の場合の譲渡
所得の特例(以下「交換の特例」という。)の適用を 受ける考えである。
交換の特例には、対象資産の要件として、相手方が「交換のために取得したと認められる
ものを除く」との要件があるが、A は、B が 2 年前に Q 宅地を 取得したことは、取引の
際の資料等により確認しているものの、B がそれを 交換のために取得したかどうかについ
ては判定することができない。 A の交換は、Q 宅地を B が交換のために取得したと認定
されて、A の交換の 特例の適用が否認されることにはならないだろうか。
回 答
2 年前に B が Q 宅地を取得した目的がその後に行う交換のためであったことが客観的に
明らかでない場合には、「交換のために取得したと認められる ものを除く」という特例適用
除外事由をクリアーしたものとして、交換の特 例を適用することができる。
検 討
交換の特例の適用要件には、①各当事者が 1 年以上所有していた固定資産 であること、
②交換取得資産につき相手方が交換のために取得したと認められるものでないことが含ま
れている。上記要件のうち、①の要件は譲渡資産及び取得資産の両方に適用される。取得資
産についての「1 年以上所有」の 要件は、昭和 40 年度の税制改正により追加されたもの
であり、その改正前 は譲渡資産のみの要件であった。他方、取得資産に係る②の要件は、
①の改 正前から存在している。
昭和 40 年度改正当時の大蔵省主税局の担当官の説明によれば、相手方所有であった取
得資産についても「1 年以上の所有要件」を追加し、これを外形基準として上記②の要件の
判定を容易にしたのがその改正の趣旨であったことが認められる(昭和 40 年版「改正税法
のすべて」大蔵財務協会 35 頁)。

● 譲渡資産が自己の事業用の試算でない場合の買換え等の特例の適用
質 問
甲は、10 年ほど前に、営んでいた大都市郊外での農業経営は、農業経営移譲年金を受給
するために甲と同居し生計を一にしている長男乙に移譲した。
甲は、この度、公共事業のために自己が所有し乙が営む農業の用に供して きた農地 1,800
㎡を買い取られ、対価補償金 7000 万円を受け取った。補償金収入で代替資産としての土
地の買換えを行う意向はなく、自己が所有する土地上に 7000 万円の建築費用を投じて貸家
建物数棟を新築したいと思っている。
甲が行う予定の貸家の新築について、租税特別措置法 33 条 1 項に規定する 収用等に
より資産を買い取られた場合の代替資産の取得の特例(以下「代替資 産取得の特例」とい
う。)の適用を受けることができるか。
回 答
甲は、新築して貸家の用に供する建物を代替資産として、代替資産取得の特例を適用する
ことができる。
検 討
代替資産取得の特例の代替資産となるのは、
①個別法としての譲渡資産の種類区分ごとの「同種の資産」(措令 22④)、
②一組法としての譲渡資産の用途区分に応ずる「一組の資産」(措令 22⑤)、
③事業継続法としての譲渡資産がその譲渡人の事業用であった場合に、その者が事業用に
供するために取得する上記①②に該当する資産以外の資産で ある(措令 22⑥)。
甲が新築する貸家建物は、上記③の事業継続法の「事業用資産」に該当する。
なお、この場合における甲の譲渡資産は、甲の事業用に供されていたもので はなく、長男
乙の事業用に供されていたものであって、甲の取得資産は、甲 自身の事業用に供するもの
である。
しかし、事業用資産の所有者と事業経営者が異なることになった場合においても、双方が
生計を一にしているときは、その譲渡資産及び買換資産のいずれもがその譲渡・買換えをし
た者の事業用資産であるとみて、この特例を 適用する取扱いが定められている(措通 33
43)。
この取扱いは、特定の事業用資産の買換えの特例(措法 37①)にも、準用される(措通 37
22)。

● 低額譲受益課税を受けないで配偶者控除の適用をする贈与税対策
質 問
丁は、このほど丙との婚姻期間が 20 年以上となったので、丙から通常の売買価額が
4600 万円と認められる自宅の土地家屋(以下「自宅不動産」という。)
全部の贈与をしてもらい、贈与税の配偶者控除 2000 万円(以下「本件控除」という。)の適用
を受けたいと考えた。
丁は、税務署の担当部門に出向いて相談したところ、自宅不動産の相続税 評価額が 3,500
万円であり、丁が自宅不動産の贈与を受けて本件控除の適用をしても贈与税が 450 万円余
もかかることが判明したことから、その計画は断念した。
その後に丁の父が死亡し、丁が遺産中の預金を相続して、相続税納付後の 預金額 3000
万円が残存している。丁は、その残存預金額を原資に丙から自 宅不動産を買い受けること
で、当初本件控除の適用対象財産として受贈予定 であった自宅不動産を改めて取得するつ
もりである。
この場合には、丁に対する贈与税の課税関係は、どのようになるのか。
回 答
丁が丙から自宅不動産を買い受ける場合は、丁に対して、自宅不動産の相 続税評価額と
その買受価額との差額でなく、通常の取引価額 4600 万円と買 受価額 3000 万円との差額
に相当する低額譲受益 1600 万円を対象に贈与税が課税される(平成元年 3 月 29 日付け個別
通達)。
しかし、丁がこの受贈益 1600 万円につき、丙から自宅不動産に係る居住用不動産に係る
居住用不動産の一部の贈与を受けたとして贈与税の申告をすればこれが認められる。
検 討
丁の本件控除の適用関係について検討してみると、相続税法 21 条の 6 第 1 項に規定する
「居住用不動産」でも「居住用不動産を取得するための金銭」でもなく、自宅不動産を低額で
譲り受けたことによる「経済的利益の享受」であるから、これが本件控除の対象財産とはな
らないと考えられる。
しかしながら、この売買では、居住用不動産に該当する自宅不動産のうち 一部が売買され
残余が贈与されたと見ることができ、本件控除では居住用不 動産の一部の贈与も適用する
ことが可能であるから、この自宅不動産に係る 低額譲受益額 1600 万円につき居住用不動
産の一部贈与があったとして贈与 税の申告書を提出すれば、本件控除を適用することがで
きることになる。

● 短期前払費用通達の運用上の留意点
質 問
同族会社である A 社は、代表取締役 B 氏の所有する不動産を借用して、事 業を営んで
いる(3 月決算法人)。A 社は資金的な余裕があり、かつ、B 氏からの要望もあったため、家
賃等の支払方法を 1 年分のまとめ支払いに変更する ことを考えている。
法人税の短期前払費用の取扱いは、実務上浸透しているようであるが、運用上注意しなけ
ればならない点をご教示いただきたい。
回 答
短期前払費用の取扱いは、①契約に基づくものであること、②継続的に役 務の提供を受
けるものであること、③1 年以内に提供を受ける役務に係るも のを支払ったこと、④継続
して支払った日の属する事業年度の損金の額に算入していること、⑤収益と対応させるべ
き費用でないこと、という要件が付 されている(法基通 2-2-14)。
そのため、通達の運用上は、これらの要件を逸脱しないよう配慮する必要が ある。
検 討 (1) 通達運用上の留意点 ② 「継続的に役務の提供を受けるもの」については、等質等量のサービス が契約期間中
に継続的に提供される必要がある。本件は、不動産の提供に 基づく家賃等であるため、
その解釈の範疇にある。なお、税理士の顧問契約等については、役務の提供度合いが等
質等量とは言えないケースが多い ため、通達の適用にあたって否定的な考えが支配的
である。
③ 「1 年以内に提供を受ける役務に係るものを支払っていること」は、当年 4 月から翌
年 3 月分の家賃等であるならば、当年 3 月末に支払ったもの であれば許容範囲である
と思うが、当年 2 月に支払ったものについては、短期前払費用の取扱いは適用されな
い。つまり、役務の受入れの開始前に対価の支払が行われ、その支払時から 1 年を超え
る期間を支払対象期間とするようなものは、通達の適用から除外されていることを読
み取らなければならない。
なお、家賃等が未払の場合には、本通達の対象とならない。
④ 本件のような同族関係者間取引であれば、一旦変更された契約内容については、むや
みに変えるべきではない。 (2) 想定しておかなければいけない留意事項 短期前払費用の取扱いの適用により、支払 者側は損金の一時計上を行う ことになるが、反射的に受取側は収益として認識され
るため、変更年度の 課税所得の増幅効果が生じる。
そこで、月額から年額への変更は、単に 12 倍した金額の家賃等の取り 決めでは
なく金利調整分のディスカウントを配慮する、又は事実上の値上げの意味合いを整備
する等の必要性について、併せて検討するべきである。
最後に、所有権移転外ファイナンスリース等の要件を満たすような賃貸 借契約で
あった場合(定期借家契約等)には、短期前払費用の取扱いが適用 できなくなる。


【総 評】
今回は会員相談室に寄せられた相談事例について取り上げたのは、意外に見落としやす
い論点を再確認していただきたい意図からです。
特に婚姻関係 20 年以上の夫婦間における「低額譲受益課税を受けないで配偶者控除の
適用をする贈与税」に関しては、夫婦間で行う売買価額が自宅不動産の通常の売買価額
4600 万円なのか相続税評価額 3500 万円なのかを注意して行い、居住用不動産の一部贈与
があったとして贈与税の申告書を提出しなければなりません。
しばらくは会計税務コラム等の事務所通信をご提供していく予定ですのでご期待ください。
posted by 7に縁がある税理士 at 15:48| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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